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ライラは中途半端な時間に眠りについたものだから、当然の事ながら中途半端な時間に目が覚めた。
時計を見ると午後11時
これっていつもなら夢の中を漂う時間だ。
もぞもぞと起き上がる。
ベッドのシーツの上に寝ていたから、寒いし服は皺くちゃだし。オマケに起き上がった途端にグゥとお腹が鳴った。
「はぁ~失恋してもお腹は空くんだ」
そう思った途端昼間の屈辱を思い出した。
「あっ!」
ライラは父に伯爵の事を聞くのだったと、時計を見ながら父はまだ起きてるかなと皺くちゃな服のまま部屋を出た。
そこで吃驚!
ジルが部屋を出た扉の横で座り込んだままうつらうつらと首を前に揺らしながら眠っていた。
「ジル!」
咄嗟に肩を揺らしてライラはジルを起こした。
「はわっ⋯あっ!お嬢様。申し訳ありません、ついうっかり」
「ずっとここにいたの?」
ジルなら有り得ると思ってライラが聞くとジルは誤魔化すように「いえいえ」と手を振りながら否定した。でも絶対にジルはここでライラから声がかかるのを忠実に待ってくれていたのだとライラは確信している。
ジルは子供の時からそういう子だった。
自分こそそんな事を知っていたのについうっかり忘れてしまっていた。
実に恐ろしきは失恋なりだ。
「ごめんねジル、もう部屋に戻って休んで。お腹も空いたでしょう?」
「それはお嬢様もですよね。何か用意して来ます」
「ありがとう、でもちょっとお父様に話があるの、だから先に食べてて。時間が掛かると思うから。付いてこなくていいからね」
ライラはそう言ってジルの手を握ってそのまま立たせた。
父の執務室に行くと中から話し声が微かに聞こえた。ノックをすると「誰だ」と父の声がする。
「お父様、ライラです。急ぎのお話があるの」
「ライラ?」
ガタッと中から音がして少し間が空いて扉が開いた。父自ら扉を開けてくれたようだ。
「どうしたんだ?今日は夕食にも下りてこなかったと聞いたぞ。具合でも悪いのかと思ったがメアリーとジルが大丈夫というから」
父は心配そうにライラの顔を覗き込みながら肩に手を置いて言った、メアリーはライラの母の名だ。
「入ってもいい?」
「あぁどうぞ、何だ急ぎの話って。明日では駄目なのか?」
「そう⋯だめなの」
中に入ると家令のドットとメイド長のミリーが居た。
「二人もいたのね」
中に入るとライラはそのままソファに座った。
気を利かせてミリーがお茶を淹れてくれる。空腹のライラには有難かった、お茶の温かさが身体に染みる。
父が机の上の書類などを纒めたのか、何かをドットに渡してからライラの向かいに腰掛けた。
「どうしたんだ」
ライラは二人の使用人が気にはなったが、おそらく知っているだろうと思いきって父に訊ねた。
「お父様、私にルクルト伯爵家から縁談があるって本当ですか?」
「お前っ何故それを!熱っ!」
父はライラの言葉に動揺してカップを自分のひざに落としてしまった。暫くバタバタとミリーやドットが慌てて片付けたりしていたが、落ち着いた頃を見計らってもう一度訊ねると、父は縁談がある事を認めた。
「そうですか」
「今何とか断ろうとしているんだ、心配せずとも私に任せておけばいい」
「お断りするのですか?」
「当たり前だろ!私よりも年上の男に如何してお前を嫁がせなきゃならないんだ!常識的に考えて有り得ない!」
「でも伯爵様ですよね」
「ウッ!⋯⋯いや、でも、何とかするから」
父はライラに只管何とかすると繰り返していたが、ライラは厳しいのだろうと思った。
普通に考えてもこの身分社会で、貴族からの縁談を年の差だけで断るなんて出来るはずがない。
よっぽど大きな商会なら大きな伝もあり断れるかもしれないが、父の営むハッセル商会は中の中。小さくはないがかと言って大きいわけでもない。
儲かってはいるが大金持ちではない、そんなところだった。
「お父様、私にも伝があります。だから私の為に無理しないで」
「⋯⋯ライラ」
ライラは父がライラの為に貴族に反感を買って大切にしてきた商会を手放す方が辛かった。
兎に角、レオの言った言葉が本当だと分かったのだ。
ライラは取り敢えずお嬢様に会ってみようと思った。
時計を見ると午後11時
これっていつもなら夢の中を漂う時間だ。
もぞもぞと起き上がる。
ベッドのシーツの上に寝ていたから、寒いし服は皺くちゃだし。オマケに起き上がった途端にグゥとお腹が鳴った。
「はぁ~失恋してもお腹は空くんだ」
そう思った途端昼間の屈辱を思い出した。
「あっ!」
ライラは父に伯爵の事を聞くのだったと、時計を見ながら父はまだ起きてるかなと皺くちゃな服のまま部屋を出た。
そこで吃驚!
ジルが部屋を出た扉の横で座り込んだままうつらうつらと首を前に揺らしながら眠っていた。
「ジル!」
咄嗟に肩を揺らしてライラはジルを起こした。
「はわっ⋯あっ!お嬢様。申し訳ありません、ついうっかり」
「ずっとここにいたの?」
ジルなら有り得ると思ってライラが聞くとジルは誤魔化すように「いえいえ」と手を振りながら否定した。でも絶対にジルはここでライラから声がかかるのを忠実に待ってくれていたのだとライラは確信している。
ジルは子供の時からそういう子だった。
自分こそそんな事を知っていたのについうっかり忘れてしまっていた。
実に恐ろしきは失恋なりだ。
「ごめんねジル、もう部屋に戻って休んで。お腹も空いたでしょう?」
「それはお嬢様もですよね。何か用意して来ます」
「ありがとう、でもちょっとお父様に話があるの、だから先に食べてて。時間が掛かると思うから。付いてこなくていいからね」
ライラはそう言ってジルの手を握ってそのまま立たせた。
父の執務室に行くと中から話し声が微かに聞こえた。ノックをすると「誰だ」と父の声がする。
「お父様、ライラです。急ぎのお話があるの」
「ライラ?」
ガタッと中から音がして少し間が空いて扉が開いた。父自ら扉を開けてくれたようだ。
「どうしたんだ?今日は夕食にも下りてこなかったと聞いたぞ。具合でも悪いのかと思ったがメアリーとジルが大丈夫というから」
父は心配そうにライラの顔を覗き込みながら肩に手を置いて言った、メアリーはライラの母の名だ。
「入ってもいい?」
「あぁどうぞ、何だ急ぎの話って。明日では駄目なのか?」
「そう⋯だめなの」
中に入ると家令のドットとメイド長のミリーが居た。
「二人もいたのね」
中に入るとライラはそのままソファに座った。
気を利かせてミリーがお茶を淹れてくれる。空腹のライラには有難かった、お茶の温かさが身体に染みる。
父が机の上の書類などを纒めたのか、何かをドットに渡してからライラの向かいに腰掛けた。
「どうしたんだ」
ライラは二人の使用人が気にはなったが、おそらく知っているだろうと思いきって父に訊ねた。
「お父様、私にルクルト伯爵家から縁談があるって本当ですか?」
「お前っ何故それを!熱っ!」
父はライラの言葉に動揺してカップを自分のひざに落としてしまった。暫くバタバタとミリーやドットが慌てて片付けたりしていたが、落ち着いた頃を見計らってもう一度訊ねると、父は縁談がある事を認めた。
「そうですか」
「今何とか断ろうとしているんだ、心配せずとも私に任せておけばいい」
「お断りするのですか?」
「当たり前だろ!私よりも年上の男に如何してお前を嫁がせなきゃならないんだ!常識的に考えて有り得ない!」
「でも伯爵様ですよね」
「ウッ!⋯⋯いや、でも、何とかするから」
父はライラに只管何とかすると繰り返していたが、ライラは厳しいのだろうと思った。
普通に考えてもこの身分社会で、貴族からの縁談を年の差だけで断るなんて出来るはずがない。
よっぽど大きな商会なら大きな伝もあり断れるかもしれないが、父の営むハッセル商会は中の中。小さくはないがかと言って大きいわけでもない。
儲かってはいるが大金持ちではない、そんなところだった。
「お父様、私にも伝があります。だから私の為に無理しないで」
「⋯⋯ライラ」
ライラは父がライラの為に貴族に反感を買って大切にしてきた商会を手放す方が辛かった。
兎に角、レオの言った言葉が本当だと分かったのだ。
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