偽装婚約〜それでも私は幸せになる

maruko

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 部屋に戻るとテーブルに軽めの夜食が用意されていた。ジルが急いで拵えてくれたのだろう。
 ライラはレオの事を話そうと思いジルも一緒に食べようと誘った。
 昔からライラが偶に誘って食事を部屋で共にする事はよくあったから、ジルは遠慮しながらも従ってくれた。

 そしてライラは昼間のレオとの話をジルに聞かせたのだが⋯⋯。

 そろそろ夜中に差し掛かる時間だというのに、ジルは怒り狂ってしまい、レオの家に突撃しそうな勢いで今にも部屋を出ようとする。そんなジルをライラは必死に止めるのに一苦労だった。

「待って待って待ってよジル!」

「待てません!何ですかあの男は!お嬢様を馬鹿にするにも程がある!」

「しーっしーっ静かにしてよ!お父様にバレたら大変なんだから!」

「バレても構いません!なんなら旦那様に成敗していただきましょう!」

「いやいや返り討ちに合うって、レオは騎士だよ」

「あんな奴!騎士道精神も持ち合わせていない奴の剣の腕などたかが知れております!」

「知れてないってば!強かったじゃない!もうジル!お願いだから冷静になってよ」

 どうどうどうと馬に声を掛けるようにジルを宥めるのに必死のライラだったが、漸く鎮まったジルをもう一度引っ張って椅子に腰掛けさせた。

「お願いだからちゃんと話を聞いてよ」

 まだ興奮しているジルだったが、大人しく話の続きを聞く気になったようでライラはホッと胸を撫で下ろした。
 ただでさえライラの縁談の事で父は大変な思いをしているのだ、これ以上は負担をかけたくないとライラは思った。

 ジルにルクルト伯爵家からの縁談の話を断る手段として、スコット侯爵令嬢のエリーゼに会ってみようと思うと話すと、ジルは眉がピクリと吊り上がった。

「お嬢様、まさか偽装婚約の話に乗るつもりですか?」

「本当はね、レオと偽装婚約する位ならルクルト伯爵と結婚してもいいかなって思ったんだけど、必死にこの縁談を私の為に無しにしようとしているお父様を見たら結婚してもいいなんて言えなくなっちゃって」

「⋯⋯旦那様」

 ジルは主人の娘思いに感動してハンカチを目に当てる。

「だから偽装婚約は兎も角、助けてくれるっていう侯爵令嬢に会ってみようと思うの。レオは偽装婚約したらって条件付きだったけれど、直接話してみたら条件なしでも助けてくれるかもしれないでしょう?だって貴族と平民とはいえ同級生でもあったのだし」

「お嬢様と侯爵令嬢様は同級生でしたか」

「まぁクラスは隣だったけれど、顔は覚えているわ。あちらはどうか分からないけれど。でも面識がなくても助けてくれるっていうなら、話してみてからでも⋯」

「そうですね、遅くはないですね!後はレオの野郎をけちょんけちょんにやっつけなければ!」

「だから無理だって!」

 学園の剣術大会でレオはいつもいい成績を修めていた。かなりの遣い手なのだ。
 ライラやジルにどうこう出来る相手ではない。
 そんな相手をどうやってけちょんけちょんにしようと云うのか。それでもそう言ってライラの屈辱に怒りを覚えてくれるジルの気持ちがライラはとても嬉しく思った。
 ジルは絶対にライラの味方なのだと、両親の他にも自分にはこんなに思ってくれる人がいる。自分の恋よりもライラを優先してくれるジルに、ライラは改めて感謝の気持ちが増すのだった。




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