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公爵家では、びっくりするほどの冷遇であった。
母の目的がわかり、呆れ果てたマリエンヌにこの見合いの意義を見つけるのは難しい、そう思っていたら明らかに帰ると言わせたいが為の行為に、何故私がこんな理不尽を受けなければならないのかと怒りがヒシヒシと湧いてくるのは、おそらくここにいる使用人の気持ちも同じだろうと思う。
母の目的、それはテーラー公爵であった。
その醜態は玄関前で既に起きてしまった。
馬車を降りた途端出迎えの中に公爵を認めた母はあろう事かそのお方の腕に自身の腕を絡め
「シールドさまぁお久しぶりでぇすぅ」
己の母は宇宙人か平民か、得体のしれない者を見たマリエンヌは恐らく母に脳内花畑メガトンパンチをくらってしまった。
母の目的を前もって知っていれば、なんとか自分が防げたのではないかという後悔の気持ちと「貴方候爵夫人ですよね」という自身の母の身分の疑い。
それらが相まって、無茶苦茶な気分のまま今降りた馬車に再び乗りたい衝動との戦い。
そう、自身の脳内で天使のマリちゃんが「まぁまぁまぁ」と宥め悪魔のマリちゃんが「こんな女放っといて帰ろうぜ」と煽る。
マリエンヌが脳内の攻防に悩まされていた間にサッサと公爵邸の中へお馬鹿な母は案内されていた。
(あぁもう手遅れなのね)
今日ほど己の非力さを思い知った日は無かった。
マリエンヌ・サバディ一生の不覚。
気づいたら玄関前にはピシッと糊で固めたようなオールバックの執事のみが立っていて、胡散臭そうな目をマリエンヌに向けている。
まぁあの母を見た後なら、その目もご納得。
「でもね!一緒にしないで天使のマリちゃんからのお願い」なんて冗談も口に出来そうにない雰囲気の中、案内されたのは、半端のない陽射しが照りつける庭園のど真ん中。
東屋でも無くガゼボでもない。
正真正銘、お天道様が全身で暑さを投げつけている場所、いや最早“暑さ”ではなく“熱さ”だと思う。
その真ん中にある二人がけ用のテーブルの周りには給仕をするべく侍女と従者が一名ずつ。
今すぐスッポンポンになりたいであろうカッチリとした服装は流石公爵家の使用人の制服と言いたいが、今この場には最も相応しくない服装とも言える。
マリエンヌの服装もどちらかというと晩夏に差し掛かる頃に着るワンピースであったから(母への嫌味のみで着てきた)彼、彼女らとはお互い様であるかもしれない。
案内を終えたオールバック執事はサッサと邸の中に避難するべく帰って行く、炎天下の中いつから置かれていたかわからない、白い椅子を従者が引いてくれたので渋々座ったマリエンヌ。
(熱っっっっ)
なんとか淑女の面目を保って声には出さなかったが、一気に体内温度が上がってマリちゃんのお顔は真っ赤な「お猿さん科」しているのは間違いない。
早く「ヒト科」に戻りたい~、お家に帰りたい~、
心の叫びを何度も繰り返し、待ち人が来たのは熱い紅茶を2杯お代りした頃だった。
彼ラウル・テーラーは白シャツにグレーのスラックス。なんなら白シャツの上ボタン2つを外して、この場の誰よりも涼しそうな格好で現れたくせに、椅子に座った途端
「熱っっっっ!」
と宣った。
バツが悪かったのか、はたまた当初の予定通りなのか、ラウルはその後は一言も発しない。
マリエンヌこそこんな理不尽な目に合わされて話しかけてなるものかと憤っていたから、シーンという某有名漫画の神様が初めて紙上でした擬音の表現がピッタリな空間になっていた。
どれ位の時間が経ったのか先に音を上げたのはラウルの方だった。
「君、名前も名乗らないの?」
お見合い相手の名も知らぬこの礼儀知らずの若者だが、先に言葉を発した事でマリエンヌは「勝った」と密かにガッツポーズを決める。
「お互い様では?」
「はぁ?これがお見合いってわかってきたんだろう。知ってるはずだけど俺の事」
「自惚れですか?」
「失礼だな」
「そのままお返しします」
「⋯⋯」
よし勝った!マリエンヌは2連勝だと心の中の悪魔のマリちゃんと握手を交わす。
天使のマリちゃんが出てくる前にこの場をトンズラしようと考えたマリエンヌは徐ろに立ち上がった。顔だけではなくお尻まで「お猿さん科」になってしまった。
お尻を気遣いながら一歩下がり
「それではお顔も拝見しましたのでこれで失礼いたします。母には先に帰ったとお伝えくださいませ。後ほど迎えの馬車を送ります」
そう言って、猛ダッシュのつもりの競歩で乗ってきた馬車に乗り込み、速攻「ヒト科」に戻るべく公爵邸を後にした。
後に残されたラウルは突然立ち上がりサッサと帰ってしまったマリエンヌを追うのも忘れて呆然と炎天下に佇んでいた。
✎ ------------------------
✱学術上、本来は「猿」も同じ「ヒト科」に分類されますが、この作品では、あくまでもマリエンヌの頭の中は「猿」≠「人」の図式が在るというのをご理解頂ければと思います。
(猿は人ではないとマリエンヌは考えております)
母の目的がわかり、呆れ果てたマリエンヌにこの見合いの意義を見つけるのは難しい、そう思っていたら明らかに帰ると言わせたいが為の行為に、何故私がこんな理不尽を受けなければならないのかと怒りがヒシヒシと湧いてくるのは、おそらくここにいる使用人の気持ちも同じだろうと思う。
母の目的、それはテーラー公爵であった。
その醜態は玄関前で既に起きてしまった。
馬車を降りた途端出迎えの中に公爵を認めた母はあろう事かそのお方の腕に自身の腕を絡め
「シールドさまぁお久しぶりでぇすぅ」
己の母は宇宙人か平民か、得体のしれない者を見たマリエンヌは恐らく母に脳内花畑メガトンパンチをくらってしまった。
母の目的を前もって知っていれば、なんとか自分が防げたのではないかという後悔の気持ちと「貴方候爵夫人ですよね」という自身の母の身分の疑い。
それらが相まって、無茶苦茶な気分のまま今降りた馬車に再び乗りたい衝動との戦い。
そう、自身の脳内で天使のマリちゃんが「まぁまぁまぁ」と宥め悪魔のマリちゃんが「こんな女放っといて帰ろうぜ」と煽る。
マリエンヌが脳内の攻防に悩まされていた間にサッサと公爵邸の中へお馬鹿な母は案内されていた。
(あぁもう手遅れなのね)
今日ほど己の非力さを思い知った日は無かった。
マリエンヌ・サバディ一生の不覚。
気づいたら玄関前にはピシッと糊で固めたようなオールバックの執事のみが立っていて、胡散臭そうな目をマリエンヌに向けている。
まぁあの母を見た後なら、その目もご納得。
「でもね!一緒にしないで天使のマリちゃんからのお願い」なんて冗談も口に出来そうにない雰囲気の中、案内されたのは、半端のない陽射しが照りつける庭園のど真ん中。
東屋でも無くガゼボでもない。
正真正銘、お天道様が全身で暑さを投げつけている場所、いや最早“暑さ”ではなく“熱さ”だと思う。
その真ん中にある二人がけ用のテーブルの周りには給仕をするべく侍女と従者が一名ずつ。
今すぐスッポンポンになりたいであろうカッチリとした服装は流石公爵家の使用人の制服と言いたいが、今この場には最も相応しくない服装とも言える。
マリエンヌの服装もどちらかというと晩夏に差し掛かる頃に着るワンピースであったから(母への嫌味のみで着てきた)彼、彼女らとはお互い様であるかもしれない。
案内を終えたオールバック執事はサッサと邸の中に避難するべく帰って行く、炎天下の中いつから置かれていたかわからない、白い椅子を従者が引いてくれたので渋々座ったマリエンヌ。
(熱っっっっ)
なんとか淑女の面目を保って声には出さなかったが、一気に体内温度が上がってマリちゃんのお顔は真っ赤な「お猿さん科」しているのは間違いない。
早く「ヒト科」に戻りたい~、お家に帰りたい~、
心の叫びを何度も繰り返し、待ち人が来たのは熱い紅茶を2杯お代りした頃だった。
彼ラウル・テーラーは白シャツにグレーのスラックス。なんなら白シャツの上ボタン2つを外して、この場の誰よりも涼しそうな格好で現れたくせに、椅子に座った途端
「熱っっっっ!」
と宣った。
バツが悪かったのか、はたまた当初の予定通りなのか、ラウルはその後は一言も発しない。
マリエンヌこそこんな理不尽な目に合わされて話しかけてなるものかと憤っていたから、シーンという某有名漫画の神様が初めて紙上でした擬音の表現がピッタリな空間になっていた。
どれ位の時間が経ったのか先に音を上げたのはラウルの方だった。
「君、名前も名乗らないの?」
お見合い相手の名も知らぬこの礼儀知らずの若者だが、先に言葉を発した事でマリエンヌは「勝った」と密かにガッツポーズを決める。
「お互い様では?」
「はぁ?これがお見合いってわかってきたんだろう。知ってるはずだけど俺の事」
「自惚れですか?」
「失礼だな」
「そのままお返しします」
「⋯⋯」
よし勝った!マリエンヌは2連勝だと心の中の悪魔のマリちゃんと握手を交わす。
天使のマリちゃんが出てくる前にこの場をトンズラしようと考えたマリエンヌは徐ろに立ち上がった。顔だけではなくお尻まで「お猿さん科」になってしまった。
お尻を気遣いながら一歩下がり
「それではお顔も拝見しましたのでこれで失礼いたします。母には先に帰ったとお伝えくださいませ。後ほど迎えの馬車を送ります」
そう言って、猛ダッシュのつもりの競歩で乗ってきた馬車に乗り込み、速攻「ヒト科」に戻るべく公爵邸を後にした。
後に残されたラウルは突然立ち上がりサッサと帰ってしまったマリエンヌを追うのも忘れて呆然と炎天下に佇んでいた。
✎ ------------------------
✱学術上、本来は「猿」も同じ「ヒト科」に分類されますが、この作品では、あくまでもマリエンヌの頭の中は「猿」≠「人」の図式が在るというのをご理解頂ければと思います。
(猿は人ではないとマリエンヌは考えております)
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