【完結】私はバスター 小悪魔令嬢を撃退します!

maruko

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ベッドの上でうつむき加減で考え事に耽っていたら扉をノックする者がいる。

「お姉様起きてますか?」

妹のシャルロッテだった。
諾と言うとそっと扉を開けササササッと足音を忍ばせてマリエンヌが佇むベッドまで近づいてきた。
今度その足捌きを姉にも教授願いたいとマリエンヌは密かに思うのであったが、そういえばシャルロッテはお怒りだったようなと嫌な事を思い出し、あぁ早めに寝てしまえば良かったと先刻“諾”と言ってしまった自分を呪う。

「お姉様、今日はラウル様の所に行ったんですって?」

「えぇ」

「何故?」

「貴方も聞いていたでしょう?昨夜お母様が言っていたじゃない」

「ラウル様だとは思わなかったのよ」

妹の返答にマリエンヌは訝しむ。
昨夜、お見合いに行きたくなかったマリエンヌは母親を説得するべく、夕食後のサロンで必死にラウルの恋人の話しをしていたではないか。
なのに何故ラウル・テーラーだと思わなかったなどと、言うのだろうか。

「でもシルヴィア様と懇意にしてるって私お母様に言ってたでしょう?」

「シルヴィア様と懇意なのはマーティ様よ」

「はぁ?」

「だからお姉様のお見合い相手はマーティ様だと私は思っていたのだもの。まさかお姉様そんな事も知らないの?」

「そんな事もって」

マリエンヌはシャルロッテの言葉に困惑してしまっていた。
現在マリエンヌは17歳、シャルロッテは15歳同じ学園にいるのだから、目撃談も噂も同じでなければおかしいのに、何故二人の認識がまるっきり違うのか。

「お姉様、来年は最終学年なのでしょう、そろそろ社交にしっかりと力を入れて噂には敏感にならなければ侮られますわ」

いつも母親と同じで脳内花畑だと侮っていた妹にそんな苦言を挺されたことが更なるショックをマリエンヌに与えた。この一撃は強烈だった。

「シャル擦り合わせをさせて」

己の認識を変えねばならないとすぐ様反省したマリエンヌは妹に恥を偲んで教えを乞うた。

「そもそも何故お姉様はラウル様とシルヴィア様が懇意にしていると思われたのですか?」

「私が入学した頃、よくお二人で昼食を召し上がっていらしたのを見たの、それに休みの日に街で一緒に買い物を楽しんでらしたわ」

「二人で昼食ですか?街で買い物⋯それはお姉様でなくてもそう思いますわね、うーん」

マリエンヌの告白に今度はシャルロッテが悩み始める。

「シャル達の間ではマーティ様とシルヴィア様なのよね」

「えぇ、昼食などは私達にはわかりませんのでなんとも言えませんけど毎朝シルヴィア様が登園された時のエスコートはマーティ様がしていらっしゃいますから、それに⋯私達見てしまって」

急に話の途中で妹が顔を赤くしてモジモジし始めたその様子がマリエンヌが学園で観察していた職員室で飼っているハムスターが立ち上がり餌を強請ってくる時の様子と被り思わず自然に笑みが溢れた。

もしかして巷で云う小動物のようなやら庇護翼やらはこの事かと漸く腑に落ちて、安堵するマリエンヌ。
自分の知らない事を友人が話しているのに教えを乞うのを良しとせずモヤモヤとしていた疑問をまさか妹が解いてくれるとは、やはり家族はいざという時に頼りになるのだと、全く本題と関係ない思考に飛んでしまったマリエンヌ。

そんな姉の様子にもモジモジちゃんのシャルロッテは気づいていなかった。

姉妹二人で「ウンウン」「モジモジ」は傍から見たら気持ちの良いものではない。

早く気づけ!サバディ姉妹。

やっとのことで決心がつき姉に打ち明けようとシャルロッテは口を開く。

「口づけですわ」

「口⋯⋯口づけ!」

「えぇ、ティーも私と一緒に見てます。間違いないですわ」

ティーと言うのはシャルロッテの親友で同じ家格でアロイース侯爵家の次女クリスティーヌの事である。
二人も目撃者がいるなら間違いないのであろう。
ただ、婚姻前の男女しかも婚約などしていない二人が口づけなどしている所を他者に見られるなど、本来ならあってはならない由々しき問題である。

「シャル二人の他にも見ている人はいるの?」

「さぁわからないわ。でも私達の学年ではマーティ様とシルヴィア様の仲は周知の事実よ」

「そうだったのね」

マリエンヌは考えた。もしかして、という考えが頭に浮かんで、消しても消しても浮かび上がる。
ラウル様は自棄を起こしているのでは?
シルヴィア様に振られて、如何でも良くなってお見合いを承諾したけど、やはりシルヴィア様を忘れられなくて、その八つ当たりをお見合い相手であるマリエンヌに施したのではないかと。考えれば考えるほど、間違ってないと確信したマリエンヌは妹に注意を促そうと思った。

「シャル、あまりマーティ様とシルヴィア様の噂を上学年に広まらないようにしてあげて、やはり失恋て辛いのは男女の差はないのではないかしら?」

「えっ?ラウル様って失恋したの?あぁでもそうなるわよね、そうかそうか。その後釜をお姉様狙っているの?」

「そんな事⋯今日も嫌がらせのように炎天下に座らされたわ。まさかお見合いに行って嫌がらせされるなんて思わなかったもの。そもそも行きたくなかったし」

「お姉様!そんな事をされたの!酷いわ。あらっ?でもお母様は?そういえば何故一緒にお帰りにならなかったの?」

「お母様はいつの間にか居なくなってたわ、邸内にいたんじゃないかしら、あまりの暑さに我慢できなくて淑女失格だけれど命を優先したの」

「そうよね、今日のように暑い日に外でお見合いなんて⋯お姉様ごめんなさい。私勘違いで目くじらなんか立てちゃって。お姉様がそんな目にあったのもきっとお母様のせいよ。お父様が大変ご立腹だったわ」

「まぁ、それではシェル。今日のこの話しはお父様には内緒にしていて、益々お怒りを買ってしまうわ」

「わかったわ言わない。私も離婚とか嫌だもの」

離婚!何故お見合いに出向いてそこまでの話になったのか青ざめるマリエンヌだが、今日の母親の態度を見てしまっては、それも致し方ないと、母の失態を止められなかった自分を、またもや反省するマリエンヌだった。

しかし3日後の夕刻、マリエンヌに悲劇が起こり、反省が足りなかったと後悔する事になるのであった。

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