ある日、引き籠もり少年がフロンティア・トラベラーになった件について

神永 遙麦

文字の大きさ
17 / 19
馴染みを失った故郷

思考をまとめるためにメモを書き散らす

しおりを挟む
 美桜はドサリとソファに倒れ込んだ。

 過去問を解いていた時、気になることがあった。だから美桜にしては珍しく過去問を放り出し、調べ物に没頭していた。
 インターネットと聖書を駆使しての調べ物だった。聖書は幼稚園時代に景品で貰ったものだったが、長らく呼んでいなかった。7年ぶりに読むと、ふりがなの多さが目についた。

 バビロン捕囚で預言された期間は70年。ビルの言っていた予言の期間も70年。単なる偶然の一致か、必然か。
「荒廃した理由をビルは教えてくれなかった」
 美桜はブツブツ呟き始め、目をつむった。
「話してくれていた時のビルは普通に私の顔を見ていた。虫歯で苦しんでいるような表情だった。でも急に黙った時は私に背を向けた」
 美桜は瞑っていた目を開いた。
「後ろめたい何かがあるとか? 人に背を向ける時の心理は脈アリか居心地の悪さ、避けたい相手だと思っている」

 美桜は浮かぶ思考を次々と付箋に写し、机に貼り始めた。
「居心地が悪いと感じる時のパターン」
「考え方や価値観が合わない」「疲れる」「落ち着かない」
「落ち着かない時の心理は?」
「思い込みが激しい」「不安を感じている」
「ビルは口元を手で隠していた」
「嘘を隠したい」「恥ずかしい」
「嘘を隠したい心理は?」
「隠し事がある」「プライドが高い」「保身」
「プライドの高さ故に隠したいことがある?」「保身の理由はきっと浅緑と私の保護者だったから、その立場を守るため」「荒廃の理由が知られれば、ビルの立場が危うくなる何かがあった」
「荒廃した当初、ビルは11歳」「原因はビルの親、もしくは親戚?」「世間に大きな影響がある=良家の出身?」
「『ビル』は『ウィリアム(熱烈な守護者)』の愛称、もしくは略称」「名前が祖先から継いだ者である可能性」「ウィリアムという名前には王室のイメージがある」

 これ以上付箋を机に貼ることが出来なくなった時、美桜は我に帰った。冷静になってから読み直すと、荒唐無稽だ。ほとんどが憶測。こう考えると情報収集に長けている探偵ってすごい。

 明後日の方向に向かっていたような思考を現実世界に戻しながら美桜は、夜ご飯を作り始めた。太る上に健康にはあまり良くないが、ラーメンでいいかな。少し疲れた。
 お湯を沸かしている間に、冷蔵庫から玉子と刻みネギを取り出す。今夜はゆで卵じゃなくて、徳島風に生卵でいいかな。

 テケテンとスマホが鳴った。電話に出るとお父さんだった、珍しい。
「何?」
「ユーチョーブの依頼がある。浅緑 夕魅とのコラボだ」
 出演に関して私に選択肢が与えられたことはない。顔出ししないことに関しては譲らずにいるけど。
「分かった。いつ?」
「12月31日。大晦日の生放送」
「了解」と私は電話を切った。
 お湯が沸騰している。麺を鍋に入れた後、私は手帳に予定を書き込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

処理中です...