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本日のおやつは、さつま芋パイです。
ラテの約束 1
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旧16号と言うからには、この道が混み合うから新しい道が作られたはずだ。と言うことはもともと交通量が多いところに人気のある店が出店した為、渋滞が引き起こされたと考えられるのではないだろうか。
「あの店は車の出入りのために人を雇わないといけないだろうな」
「そうですよね。で、これからどうするんですか?」
「どうもしない。もう一度同じルートで戻るだけだ」
「……げええええっ! かなり歩いてるんですけど!」
「ん? ついてくると決めたのは君だぞ? 僕は車で待っていていいと言ったはずだ」
なあ英司、と話しかける紗川に木崎はあっさりと頷いている。
(きったねぇっ!!)
三枝が記録をすることまで見越していたのは間違いないくせに、責任逃れをするのだ。
確信犯と言わずに何と言おう。
「そんな顔するな。帰りにラテを買ってやる」
「ラテありがとうございますっ! あと途中で肉まんほしいですっ! コンビニ寄るの付き合ってください。制服でこの時間に一人で行ったら通報されちゃうんで」
「構わないが、肉まんはおごらないぞ?」
「おごってもらおうなんて思ってませんから!」
「そうかそうか、それはいい心がけだ――さて、と」
紗川は俊夫に笑顔を向けた。
しかし、それは三枝に向けていたものとはまるで視線が異なる。
どう食らいつこうかと、獲物の喉元を狙う肉食獣のそれだ。
「岸さん。あなたはこの道が混んでいることを知っていたはずです。そして抜け道も」
「……」
「大した距離ではありませんが、渋滞につかまっている後続車両が到着するまでの間に、『一仕事』終えるには十分な時間があったと――」
紗川が言葉をつづけようとしたとき、それまで沈黙していた俊夫が唐突に奇声を上げた。
「ばかにするなあああああああっ」
驚く三枝の目の前で、俊夫はめちゃくちゃに傘を振り回し、紗川に向かって殴りかかった。
ぐわん、と傘が大きく空気を揺るがす。
だが、紗川はゆるやかに軸をずらすだけであっさりと避けてしまった。
細身の俊夫の体がそれに振り回されるように奇妙に揺らぐ。
俊夫の傘は、なおも紗川に向かうが、風にあおられ思いもよらぬ方向に動いてしまうのか、動きが大きすぎる。
「わっ!」
飛び散る水しぶきが目に入り、三枝は思わず目を閉じた。
開いたままのビニール傘は、動きは緩慢でも大きい分、当たりやすい。
目を開けた瞬間、傘の切っ先が自分を目がけるようにつっこんでくる。目を閉じてしまったせいで反応が遅れた。
(ヤバイ――!)
あたる、と思った瞬間、黄色い紐がひらりと宙を舞った。
ケーキ屋の箱を結んでいる、細くて光沢のある安っぽい紐だ。
衝撃を受けて後ろによろめく。かばわれたのだと分かったのは全てが終わった後になってからだ。
一度の瞬き、たったそれだけのわずかな時間が、永遠の時のように進んでいく。
(だから、そんな紐じゃほどけるって……)
頭の片隅でそんなことを思う。
開いたままの傘が、ぶわりと音をたてながら水滴を弾き飛ばす。
(だめだ、避けきれないっ!)
============
2018.9.28改稿
「あの店は車の出入りのために人を雇わないといけないだろうな」
「そうですよね。で、これからどうするんですか?」
「どうもしない。もう一度同じルートで戻るだけだ」
「……げええええっ! かなり歩いてるんですけど!」
「ん? ついてくると決めたのは君だぞ? 僕は車で待っていていいと言ったはずだ」
なあ英司、と話しかける紗川に木崎はあっさりと頷いている。
(きったねぇっ!!)
三枝が記録をすることまで見越していたのは間違いないくせに、責任逃れをするのだ。
確信犯と言わずに何と言おう。
「そんな顔するな。帰りにラテを買ってやる」
「ラテありがとうございますっ! あと途中で肉まんほしいですっ! コンビニ寄るの付き合ってください。制服でこの時間に一人で行ったら通報されちゃうんで」
「構わないが、肉まんはおごらないぞ?」
「おごってもらおうなんて思ってませんから!」
「そうかそうか、それはいい心がけだ――さて、と」
紗川は俊夫に笑顔を向けた。
しかし、それは三枝に向けていたものとはまるで視線が異なる。
どう食らいつこうかと、獲物の喉元を狙う肉食獣のそれだ。
「岸さん。あなたはこの道が混んでいることを知っていたはずです。そして抜け道も」
「……」
「大した距離ではありませんが、渋滞につかまっている後続車両が到着するまでの間に、『一仕事』終えるには十分な時間があったと――」
紗川が言葉をつづけようとしたとき、それまで沈黙していた俊夫が唐突に奇声を上げた。
「ばかにするなあああああああっ」
驚く三枝の目の前で、俊夫はめちゃくちゃに傘を振り回し、紗川に向かって殴りかかった。
ぐわん、と傘が大きく空気を揺るがす。
だが、紗川はゆるやかに軸をずらすだけであっさりと避けてしまった。
細身の俊夫の体がそれに振り回されるように奇妙に揺らぐ。
俊夫の傘は、なおも紗川に向かうが、風にあおられ思いもよらぬ方向に動いてしまうのか、動きが大きすぎる。
「わっ!」
飛び散る水しぶきが目に入り、三枝は思わず目を閉じた。
開いたままのビニール傘は、動きは緩慢でも大きい分、当たりやすい。
目を開けた瞬間、傘の切っ先が自分を目がけるようにつっこんでくる。目を閉じてしまったせいで反応が遅れた。
(ヤバイ――!)
あたる、と思った瞬間、黄色い紐がひらりと宙を舞った。
ケーキ屋の箱を結んでいる、細くて光沢のある安っぽい紐だ。
衝撃を受けて後ろによろめく。かばわれたのだと分かったのは全てが終わった後になってからだ。
一度の瞬き、たったそれだけのわずかな時間が、永遠の時のように進んでいく。
(だから、そんな紐じゃほどけるって……)
頭の片隅でそんなことを思う。
開いたままの傘が、ぶわりと音をたてながら水滴を弾き飛ばす。
(だめだ、避けきれないっ!)
============
2018.9.28改稿
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