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本日のおやつは、さつま芋パイです。
ドリンクホルダーにマンデリン 1
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三枝が事務所の戸を開くとすぐに、顔に冷たいものが当たった。
アスファルトに点々と黒い水玉模様がついていく。
「あー……降り出しちゃいましたね」
雨が降りそうだからと、俊夫には先に駐車場に向かってもらっていた。この判断は正しかったらしい。ほんの数分の違いとは言え、客を雨にさらさずに済んだ。
観光客が雨に濡れないよう、急ぎ足で前を通り過ぎる。
(俺たちもあとちょっと早かったら濡れずに済んだのになあ……)
支度をするといって俊夫を先に送り出してから、紗川は電話を掛けた。
時間にして五分もかからなかったはずだが、空の水がめをせき止めていた栓が緩むには充分すぎたらしい。
「大した距離ではない。走るぞ」
「え、待ってくださいよ」
傘を抱えて紗川の後について車に向かう。余分な手荷物は紗川がタンブラーを一つに対して、三枝は傘が二本だ。短距離走では不利ではなかろうか。
運転席に座るとすぐに、紗川は眼鏡についた雨粒を拭いた。
車を発進させると、向かいの路肩におもちゃのような小型車が停車しているのがみえた。
「あ、岸さん」
窓越しに手を振ってきている。
三枝の声で分かったのだろう。紗川も軽く手を挙げて返事をした。
「岸さんの車、おしゃれですね」
「あれはミニクーパーだ。ミニクーパー40周年を記念した車で、世界で1000台しか販売されていない。販売は平成11年だが未だに人気が高い」
「へえ……そんな古い車なんですね。っていうか、先生、車のことは本当によく覚えてますよね」
「ミニは人気車だからな」
知っているのが当たり前のように言われてしまうと返答に困ってしまう。
そうこうしている間に、ミニクーパーは発進してしまった。
「あ、岸さん行っちゃいましたね」
このまますぐに発車するかと思われたが、紗川はサイドブレーキを下げたにもかかわらず、次の動作に移る気配がない。
「どうかしましたか?」
ハンドルを握る紗川を見やる。どうやら路面に注目しているようだ。つられて路面を見るが、雨に濡れた路面には何も落ちていない。路面の汚れが水たまりにヌラヌラと光っているだけだ。
「先生、岸さん、行っちゃいましたけど……」
「なんでもない」
行こう、と短く答えた紗川は、ようやくギアをチェンジさせた。
川越からさいたま市は国道16号を使うのが一般的だ。
途中で見失う事もあったが、同じ道を走っているためにほどなく合流できた。
しばらくは道なりという事で三枝も安心してしまったが、問題はその先にある。
「先生、国道は良いとして、その後、どうなるんですか。岸さんのうち、国道沿いとかじゃないですよね」
「そうだな。国道をそれることになる」
「え、それって大丈夫なんですか? 住宅地とか、ヤバくないです?」
三枝の心配をよそに、紗川のシルビアとミニクーパーの間に、五台目の車が入ってきた。
ミニクーパーはすっかり見えなくなっている。
「もう、先生がのんびりしてるから、はぐれちゃったじゃないですか」
「大丈夫だ、道は聞いてある」
「そうは言っても、この車にはカーナビないんですよ?」
「不安か?」
「心配にはならないんですか?」
「道を聞いてあるのに何が不安になる」
「それでもはじめて行くところだし、間違えるかもしれないじゃないですか」
「迷うことはないさ。よく走っている道だからな」
「……見失わないようにしてくださいね!」
と言ったところで車が静かに止まった。
三枝は嫌な予感に前方を見る。
アスファルトに点々と黒い水玉模様がついていく。
「あー……降り出しちゃいましたね」
雨が降りそうだからと、俊夫には先に駐車場に向かってもらっていた。この判断は正しかったらしい。ほんの数分の違いとは言え、客を雨にさらさずに済んだ。
観光客が雨に濡れないよう、急ぎ足で前を通り過ぎる。
(俺たちもあとちょっと早かったら濡れずに済んだのになあ……)
支度をするといって俊夫を先に送り出してから、紗川は電話を掛けた。
時間にして五分もかからなかったはずだが、空の水がめをせき止めていた栓が緩むには充分すぎたらしい。
「大した距離ではない。走るぞ」
「え、待ってくださいよ」
傘を抱えて紗川の後について車に向かう。余分な手荷物は紗川がタンブラーを一つに対して、三枝は傘が二本だ。短距離走では不利ではなかろうか。
運転席に座るとすぐに、紗川は眼鏡についた雨粒を拭いた。
車を発進させると、向かいの路肩におもちゃのような小型車が停車しているのがみえた。
「あ、岸さん」
窓越しに手を振ってきている。
三枝の声で分かったのだろう。紗川も軽く手を挙げて返事をした。
「岸さんの車、おしゃれですね」
「あれはミニクーパーだ。ミニクーパー40周年を記念した車で、世界で1000台しか販売されていない。販売は平成11年だが未だに人気が高い」
「へえ……そんな古い車なんですね。っていうか、先生、車のことは本当によく覚えてますよね」
「ミニは人気車だからな」
知っているのが当たり前のように言われてしまうと返答に困ってしまう。
そうこうしている間に、ミニクーパーは発進してしまった。
「あ、岸さん行っちゃいましたね」
このまますぐに発車するかと思われたが、紗川はサイドブレーキを下げたにもかかわらず、次の動作に移る気配がない。
「どうかしましたか?」
ハンドルを握る紗川を見やる。どうやら路面に注目しているようだ。つられて路面を見るが、雨に濡れた路面には何も落ちていない。路面の汚れが水たまりにヌラヌラと光っているだけだ。
「先生、岸さん、行っちゃいましたけど……」
「なんでもない」
行こう、と短く答えた紗川は、ようやくギアをチェンジさせた。
川越からさいたま市は国道16号を使うのが一般的だ。
途中で見失う事もあったが、同じ道を走っているためにほどなく合流できた。
しばらくは道なりという事で三枝も安心してしまったが、問題はその先にある。
「先生、国道は良いとして、その後、どうなるんですか。岸さんのうち、国道沿いとかじゃないですよね」
「そうだな。国道をそれることになる」
「え、それって大丈夫なんですか? 住宅地とか、ヤバくないです?」
三枝の心配をよそに、紗川のシルビアとミニクーパーの間に、五台目の車が入ってきた。
ミニクーパーはすっかり見えなくなっている。
「もう、先生がのんびりしてるから、はぐれちゃったじゃないですか」
「大丈夫だ、道は聞いてある」
「そうは言っても、この車にはカーナビないんですよ?」
「不安か?」
「心配にはならないんですか?」
「道を聞いてあるのに何が不安になる」
「それでもはじめて行くところだし、間違えるかもしれないじゃないですか」
「迷うことはないさ。よく走っている道だからな」
「……見失わないようにしてくださいね!」
と言ったところで車が静かに止まった。
三枝は嫌な予感に前方を見る。
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