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本日のおやつは、さつま芋パイです。
ドリンクホルダーにマンデリン 2
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赤信号の向こう側にミニクーパーは行ってしまったようだった。もうすでにどこにいるのか分からない。
「うわ……言ってるそばから……」
「見失ったようだな。まあ、これだけ交通量のある国道を走っているのだからはぐれないほうが難しいか」
「えっ、ちょ。ちょっと待ってくださいよ!」
ハンドルを指先でなぞり、笑う紗川の呑気な様子に、三枝は苛立ちを隠せない。
「岸さんの家を知ってるわけじゃないですよね」
少なくとも、俊夫は事務所に初めて訪れた客だし、互いの家を行き交うほど親しそうには見えない。
「住所なら、君もすぐに確認できるだろう?」
そう言って、紗川は電源の入っていないタブレットを指差した。
まさかと思いながら、恐る恐る尋ねてみる。
「岸さんの奥さんのショップ?」
「そこに住所も地図もある」
確かに地図も住所も掲載されていたが、地図はデザイン重視の分かりにくいものだった。
「先生、俺、地図って見た目より実用性だと思うんですよね」
チラリとこちらに向けられた視線は、何を当然のことを言っているのだと言わんばかりだ。
運転中ではなかったら、この地図を目の前にたたきつけてやりたい。
絶望的な気持ちになりながら、三枝は頭を抱えた。
「もう……いい加減にカーナビ買ってくださいよ。お金ならあるんですし」
「フロントに物が乗るのがストレスになる。視界に余計な光を入れたくない」
「でも迷子になったらどうするんですか」
「この後は、16号から旧16号におりて更に住宅街に入って行くらしい」
「16号から旧16号?」
「県道2号のことだ」
「へえ」
仕方なくタブレットでルートを確認して、三枝は唖然とした。
通販サイトに書かれていた住所はさいたま市だった。
「先生、念のためお伺いしたいんですが」
「何だ?」
「お店と岸さんのうちって、住所一緒でしょうか」
「ずいぶん遅い確認だな」
「ちょっと待ってくださいよ、遠いんですけど」
「遠くはない。すいている時間に走れば一時間かからない距離だ」
「いやいやいやいや、遠いですってば。岸さんのケータイ番号、聞いてます? 早く合流しないと間違いなく迷うやつですよこれ」
「迷わないように努力しよう」
「そ、そう言う問題……?!」
絶句していると紗川がクッと笑い、ゆっくりと車が前進する。
「大丈夫だ、ちゃんとたどり着けるさ。岸さんとは、旧16号沿いのコンビニで一度落ち合うことになっている」
「そんなこと言ったって、コンビニはいくつもあるじゃないですか」
「心配ない」
「ほんとですか?」
「落ち合うのは、コンビニだ」
「コンビニなんていっぱいあるじゃないですか」
「近くに新しくできたシアトル系のカフェがある」
カフェと聞いてようやく信じる気になった。
コーヒーを飲みに出向いたのかもしれない。
「ならいいですけど。やばくなったら、言ってくださいね。最悪、お店の方に電話しますんで」
「全く……君はもう少し上司を信用したらどうだ?」
「信用はしてますよ。先生は運転うまいから事故らない」
「事故はこっちが注意をしても起きるときは起きるんだが……まあ、いい。岸さんの電話番号は手帳に書いてある。いざとなったら連絡を取れるから心配するな」
「最初からそう言ってくれればいいんですよ」
「うわ……言ってるそばから……」
「見失ったようだな。まあ、これだけ交通量のある国道を走っているのだからはぐれないほうが難しいか」
「えっ、ちょ。ちょっと待ってくださいよ!」
ハンドルを指先でなぞり、笑う紗川の呑気な様子に、三枝は苛立ちを隠せない。
「岸さんの家を知ってるわけじゃないですよね」
少なくとも、俊夫は事務所に初めて訪れた客だし、互いの家を行き交うほど親しそうには見えない。
「住所なら、君もすぐに確認できるだろう?」
そう言って、紗川は電源の入っていないタブレットを指差した。
まさかと思いながら、恐る恐る尋ねてみる。
「岸さんの奥さんのショップ?」
「そこに住所も地図もある」
確かに地図も住所も掲載されていたが、地図はデザイン重視の分かりにくいものだった。
「先生、俺、地図って見た目より実用性だと思うんですよね」
チラリとこちらに向けられた視線は、何を当然のことを言っているのだと言わんばかりだ。
運転中ではなかったら、この地図を目の前にたたきつけてやりたい。
絶望的な気持ちになりながら、三枝は頭を抱えた。
「もう……いい加減にカーナビ買ってくださいよ。お金ならあるんですし」
「フロントに物が乗るのがストレスになる。視界に余計な光を入れたくない」
「でも迷子になったらどうするんですか」
「この後は、16号から旧16号におりて更に住宅街に入って行くらしい」
「16号から旧16号?」
「県道2号のことだ」
「へえ」
仕方なくタブレットでルートを確認して、三枝は唖然とした。
通販サイトに書かれていた住所はさいたま市だった。
「先生、念のためお伺いしたいんですが」
「何だ?」
「お店と岸さんのうちって、住所一緒でしょうか」
「ずいぶん遅い確認だな」
「ちょっと待ってくださいよ、遠いんですけど」
「遠くはない。すいている時間に走れば一時間かからない距離だ」
「いやいやいやいや、遠いですってば。岸さんのケータイ番号、聞いてます? 早く合流しないと間違いなく迷うやつですよこれ」
「迷わないように努力しよう」
「そ、そう言う問題……?!」
絶句していると紗川がクッと笑い、ゆっくりと車が前進する。
「大丈夫だ、ちゃんとたどり着けるさ。岸さんとは、旧16号沿いのコンビニで一度落ち合うことになっている」
「そんなこと言ったって、コンビニはいくつもあるじゃないですか」
「心配ない」
「ほんとですか?」
「落ち合うのは、コンビニだ」
「コンビニなんていっぱいあるじゃないですか」
「近くに新しくできたシアトル系のカフェがある」
カフェと聞いてようやく信じる気になった。
コーヒーを飲みに出向いたのかもしれない。
「ならいいですけど。やばくなったら、言ってくださいね。最悪、お店の方に電話しますんで」
「全く……君はもう少し上司を信用したらどうだ?」
「信用はしてますよ。先生は運転うまいから事故らない」
「事故はこっちが注意をしても起きるときは起きるんだが……まあ、いい。岸さんの電話番号は手帳に書いてある。いざとなったら連絡を取れるから心配するな」
「最初からそう言ってくれればいいんですよ」
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