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ホイップたっぷり、さくら待ちラテはいかがでしょうか。
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店内に入ると、コーヒーの香りが鼻孔をくすぐった。
(いい匂いがする……)
店内は8割ほどの席が埋まっていた。
大型のショッピングモールや駅前にもあるシアトル系のカフェだが、三枝が知っている店と雰囲気が異なっている。
(なんか……年齢層高くないか?)
レジに並び、バリスタや会計に立っているスタッフを見ていると、どうにも年齢が高そうだ。三枝の知る、駅前の店は若いスタッフが多い。
ほとんどが20代ではないかと思う。
しかしここのスタッフは、高齢者ばかりだ。
(右見ても左見ても、じーさんばーさんのスタッフしか居ないんだけど)
驚きを隠せぬままレジ前に立った。
「こんにちは。本日は店内でお召し上がりでしょうか?」
穏やかに訪ねて来る女性は、60代くらいだろうか。
姿勢が良く、真っ赤な口紅を引いている。年齢を重ねていても、美人だ。
「はい、ここで。あと、これ……」
半ば気圧されながらドリンクチケットを出すと、ニッコリと微笑まれた。
「お待ちしておりました。オーナーのお客様ですね。どのドリンクでも注文が可能です。サイズはショートのみですので、もしサイズアップするようでしたら差額をいただきますが……」
どうしますか、と尋ねられ、三枝は思わず辺りを見渡してしまった。
困った。
普段、カフェを使うときは紗川と一緒の時だけだ。注文は紗川がしてくれる。
ショートサイズと言われてもわからない。
「ツムっ!」
迷っていると、肩を叩かれた。
「シンヤ?」
そこにいたのは同級生の爾志信也だった。
偶然ではない。待ち合わせ相手だ。
ひょっとして、先に店内で三枝が来るのを待っていたのだろうか。
問いかけようとすると、爾志の方から耳打ちしてきた。
「あのさ、これってどうやって注文すんの?」
どうやら爾志はシアトル系のカフェの利用は初めての様だ。
「えっと」
ここはいいところを見せねばと思った時だった。「あら……」と店員が声を上げた。
「ここにオーナーから指示がありますね。あ、ダブルトールラテですね。差額はオーナーが後で支払ってくださるそうなので、大丈夫ですよ」
「あ、そうなんですか?」
「はい。只今ご用意いたしますので、オレンジのランプの下でお受け取りくださいませ――アモーレ、フォーヒア、ツー・ダブルトールラテ」
店員がエスプレッソマシンの方に向かって声を上げると、「アモーレ、ツー・ダブルトールラテ」と復唱が上がる。
三枝はぎょっとしてバリスタを見た。
「せ、先生?」
「すぐ用意する、待っていろ」
スーツにエプロンをつけ、エスプレッソをセットしているのは、三枝の上司、紗川だ。
自分の店だというのだから、バリスタとして立っていてもおかしくはないのだが、それにしても違和感が大きい。
いや、その前に、接客業をしている探偵を見た衝撃から未だ立ち直れていない。
「お待たせいたしました。ダブルトールラテでございます」
提供台にマグカップが二つ並ぶ。
カップの中にはリーフのラテアートが出来上がっていた。
「わ、すごい」
茶色と白のコントラストがはっきりしているほど技術が高いあかしだ。
紗川の作ったラテは白と茶のコントラストがきれいだ。
「カウンター席を使うといい」
言われて、バリスタの動きがよくみえるカウンター席に爾志とともに並んで座った。
「なあ、ツム。待ち合わせの探偵の先生ってどこにいるんだよ。これからか?」
「え……」
「てっきり、ツムと一緒に来ると思ってたのに」
もっともな感想である。
三枝はちらりと紗川の姿を見た。
紗川はレジに立っていた女性に何か話している。
女性が頷き、紗川は軽く会釈をしてからこちらにやってきた。
「お待たせしました」
紗川が爾志と三枝の前にクッキーを置いた。
「あの、これ頼んでないんですけど」
慌てる爾志に、紗川は笑いかけてきた。
「クッキーはサービスだから大丈夫――探偵、紗川清明です、初めまして」
(いい匂いがする……)
店内は8割ほどの席が埋まっていた。
大型のショッピングモールや駅前にもあるシアトル系のカフェだが、三枝が知っている店と雰囲気が異なっている。
(なんか……年齢層高くないか?)
レジに並び、バリスタや会計に立っているスタッフを見ていると、どうにも年齢が高そうだ。三枝の知る、駅前の店は若いスタッフが多い。
ほとんどが20代ではないかと思う。
しかしここのスタッフは、高齢者ばかりだ。
(右見ても左見ても、じーさんばーさんのスタッフしか居ないんだけど)
驚きを隠せぬままレジ前に立った。
「こんにちは。本日は店内でお召し上がりでしょうか?」
穏やかに訪ねて来る女性は、60代くらいだろうか。
姿勢が良く、真っ赤な口紅を引いている。年齢を重ねていても、美人だ。
「はい、ここで。あと、これ……」
半ば気圧されながらドリンクチケットを出すと、ニッコリと微笑まれた。
「お待ちしておりました。オーナーのお客様ですね。どのドリンクでも注文が可能です。サイズはショートのみですので、もしサイズアップするようでしたら差額をいただきますが……」
どうしますか、と尋ねられ、三枝は思わず辺りを見渡してしまった。
困った。
普段、カフェを使うときは紗川と一緒の時だけだ。注文は紗川がしてくれる。
ショートサイズと言われてもわからない。
「ツムっ!」
迷っていると、肩を叩かれた。
「シンヤ?」
そこにいたのは同級生の爾志信也だった。
偶然ではない。待ち合わせ相手だ。
ひょっとして、先に店内で三枝が来るのを待っていたのだろうか。
問いかけようとすると、爾志の方から耳打ちしてきた。
「あのさ、これってどうやって注文すんの?」
どうやら爾志はシアトル系のカフェの利用は初めての様だ。
「えっと」
ここはいいところを見せねばと思った時だった。「あら……」と店員が声を上げた。
「ここにオーナーから指示がありますね。あ、ダブルトールラテですね。差額はオーナーが後で支払ってくださるそうなので、大丈夫ですよ」
「あ、そうなんですか?」
「はい。只今ご用意いたしますので、オレンジのランプの下でお受け取りくださいませ――アモーレ、フォーヒア、ツー・ダブルトールラテ」
店員がエスプレッソマシンの方に向かって声を上げると、「アモーレ、ツー・ダブルトールラテ」と復唱が上がる。
三枝はぎょっとしてバリスタを見た。
「せ、先生?」
「すぐ用意する、待っていろ」
スーツにエプロンをつけ、エスプレッソをセットしているのは、三枝の上司、紗川だ。
自分の店だというのだから、バリスタとして立っていてもおかしくはないのだが、それにしても違和感が大きい。
いや、その前に、接客業をしている探偵を見た衝撃から未だ立ち直れていない。
「お待たせいたしました。ダブルトールラテでございます」
提供台にマグカップが二つ並ぶ。
カップの中にはリーフのラテアートが出来上がっていた。
「わ、すごい」
茶色と白のコントラストがはっきりしているほど技術が高いあかしだ。
紗川の作ったラテは白と茶のコントラストがきれいだ。
「カウンター席を使うといい」
言われて、バリスタの動きがよくみえるカウンター席に爾志とともに並んで座った。
「なあ、ツム。待ち合わせの探偵の先生ってどこにいるんだよ。これからか?」
「え……」
「てっきり、ツムと一緒に来ると思ってたのに」
もっともな感想である。
三枝はちらりと紗川の姿を見た。
紗川はレジに立っていた女性に何か話している。
女性が頷き、紗川は軽く会釈をしてからこちらにやってきた。
「お待たせしました」
紗川が爾志と三枝の前にクッキーを置いた。
「あの、これ頼んでないんですけど」
慌てる爾志に、紗川は笑いかけてきた。
「クッキーはサービスだから大丈夫――探偵、紗川清明です、初めまして」
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