幽霊事務局長の穏やかな日常=大病院の平和は下っぱ事務員と霊が守ります=

藤島紫

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病院職員たちの昼時の日常4

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「ところで、お渡しを約束していたという事ですが……ここが受け渡し場所だったのですか?」

 いつまでも女の子にデレデレしていると、怪しい人だと思われてしまうので、そろそろキリッとしておかないとな。

「そうなんです。ここで会えた時に、と言うお約束で。いつもこのくらいのお時間に犬飼さんとお会いできていたし、長期入院と伺っていたのでここに来れば会えると思っていたのですけれど……」
「あー、そうなんですね」
「通院も、今日が最後なものですから、カフェの人にお願いしようかって言っていたところなんですが、職員さんがいたから――」

 つまり、ちょうどよかったと。
 難しい話じゃなくて本当に良かった。
 私はカエルの折り紙を受け取り、帰っていく母娘を見送った。
 お互いの回復を願いあう、患者同士の交流。心温まる話ではないか。
 私はてのひらの上のカエルを見た。
 丁寧に折ってある。女の子はまだ小さくて、上手く折れないのだろう。代わりにお母さんが作ったに違いない。透けて見える文字も、大人の文字だ。

「食事中に離席してしまい、申し訳ありませんでした」

 桐生さんが戻ってきた。

「桐生さん、遅いよ。もうちょっと早く戻ってきたら、ほっこりできたのになあ」
「ほっこりとは……どういう表現でしょうか。出来立ての肉じゃがですか?」
「それはホクホク。……うん、ボケたつもりじゃないのは分かってるから、謝らなくていいよ。それよりさ、見ろよこれ。カエル」

 私はカエルをカウンターテーブルに乗せ、先ほどの話をした。
 心温まる、ハートフルエピソードだ。
 しかし桐生さんは顔をしかめた。

「なんだ? まさか、このカエルがサスペンスものみたいに毒を仕掛けた何かだとか言いだす気じゃないだろうな」
「まさか。そこまで非現実的なことは言いません」
「あっそう」
「紫外線殺菌装置に入れれば問題はないと考えます」
「お、おう……そうか」
「しかし……その犬飼様とおっしゃる入院患者様は気になりますね」
「いい人だよなあ。職員としてはぜひ会っておかないと」
「いえ。そうではなく……」

 と、桐生さんが何かをカウンターテーブルに置いた。
 今しがた、私が受け取ったのと同じカエルと言ってもいい。
 なぜなら、文字が透けて見えたからだ。

「桐生さん……これ」

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