幽霊事務局長の穏やかな日常=大病院の平和は下っぱ事務員と霊が守ります=

藤島紫

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ヒラ事務員の切ない日常 2

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「偶然とは思っていません。ですが、あの揺れが直接的に建物に影響したとは考えにくいと思っています」
「だよな」

 カフェにいた時も、大したことがないと思ってしまったくらいだ。

「あの程度の揺れで壊れるような体育館、やべえだろ、絶対」
「……友利さん」

 桐生さんが声を落とした。

「最近のニュースですが……聞いたことはありませんか? 大手化学メーカーのセメントの強度実験の不正について」

 唐突に思ってもみないことを言われてしまうと、次にどうしていいのか分からなくなる。

「そういや、なんか……聞いたことがあるような……」

 つい最近、聞いた覚えがある。
 待合ホールに大きなテレビがあるから、それで見かけたのかもしれない。

「んで、その不正がどうしたって?」
「友利さんのおっしゃるとおり、あの程度の地震で体育館の内壁が崩れるとは思えません。こちらに来る前に調べたのですが、高校の体育館の工事を請け負った業者……化学メーカーの関連会社でした」
「……マジか」
「公立学校ですから」
「公立なら、請負業者は公開情報だもんな。それは良かったかもしれないけど……ってことは、学校保健じゃないってのは……」

 私は眉を寄せた。
 通称、学校保険。正式名は日本スポーツ振興センターの災害共済給付制度というものがある。
 学校での怪我の場合、病院側は請求を患者にするのか否かで学校側に問い合わせることがよくある。まあ、私がこんな事を知っているのは、学校からの電話が間違って庶務課にかかってくることがあるからだ。
 私は静かに辺りを見渡したが、これに関して反応している人はいないように見える。

「化学メーカーの不正と今回の事故の関連は現時点では不明です。ですが、一部では疑惑を持っている状態かもしれません」
「だから、あの言い方か」

ーー医療費は学校保険の扱いになるのか、そうではないかで、別途話し合いが設けられますが、みなさんにはご負担頂かないのでご安心下さい
 
 事務局長の言葉に納得がいった。
 あ。
 まてよ。

「なあ、桐生さん。今回、ここで説明会するのに放送できなかったのってマスコミ対策だって聞いてたけど。ひょっとしてマスコミは関連を疑ってるのか?」
「それはわかりません。もちろん、関連しているのではと疑っている人もいるでしょうが概ねは学校での事故だからではないでしょうか」
「そっか」
「患者様の個人情報に関して、病院には守秘義務がありますから」
「うちはこれに関しては厳しいからなぁ……」

 何しろ、警察からかかってきても電話では患者の情報は伝えられないと断るくらいだ。うちのガードは固い。情報を引き抜くために警察を騙っている可能性がある以上、電話では答えられないと、マニュアル化されている。
 因みに最初の電話対応や各受付にいるのは委託業者なので桐生さんの担当だ。かつて、なんとかして欲しいと警察から泣きつかれて、対応しようとしたら家庭内暴力の加害者だったこともあるので、この判断は正しい。

「ですが、わたし達が関与できない部分……学校側から漏れてしまった場合はどうしようもありません」
「学校側から?」
「高校で大量に負傷者が発生したという情報は、わたしたちが知るより早くーー非常に早い段階で被害者家族や関係者、マスコミにも伝わっていました。地震が起きてから、わたしたちが北階段で患者様の家族をお見かけするまでに、それほどの時間は要していません」

 確かに、桐生さんのいう通りだ。
 あまりにも情報が伝わるのが早すぎる。

「患者の家族に連絡が取れるまでに数日かかることだってあるくらいだしなあ……」
「それは同居されていない方に限ると思いますが」
「って事は……」
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