幽霊事務局長の穏やかな日常=大病院の平和は下っぱ事務員と霊が守ります=

藤島紫

文字の大きさ
56 / 72

ヒラ事務員の切ない日常3

しおりを挟む
「生徒がSNSに情報を流していたことがきっかけのようです」
「ああ、ツイッターとかインスタグタムとか」
「そうですね。東日本の震災以来、年齢が高い方の間にも広がっていますから」
「それで家族があんなにきてたのか」
「情報の混乱が起きたのもそれが原因のようです」
「家族が3階に行ってたっていう……俺たちが北階段で見かけたあれだな」
「はい。院内の人間であれば、入院する患者は3回になどという案内をするはずはありませんから」
「そういうことか」
「今は学校側から情報を流すことが禁止されているようですが、混乱は続いています。救急車よりも先にマスコミからの問い合わせがきたほどで、数が多いので医療機関同士の連絡が取りづらい状態です」
「はあ? なんだそりゃ。んなもん、即ギリすりゃいいだろ。こっちは命がかかってるんだぞ」
「そうもいきません。丁寧な対応をしなければ、対応クオリティーが低いということで当院が叩かれます」
「マジか」
「現在は、マスコミ対応マニュアルを各所に渡してありますので、問題はないかと思いますが……」
「お断りマニュアルだろ? 個人情報についてはお答えできませんって言う」
「丁寧に、しかし可能な限り早く終わらせるためのマニュアルです」
「早くったってさ。丁寧にやるって事は時間がかかるじゃねえか」

 ため息が漏れる。
 クロネコが甘えるように私の足元に絡みつく。
 少し、疲労感を覚えていたようだ。

「大手化学メーカーの不正の発覚が、どのように始まったか、ご存知ですか?」
「いや。あんまりニュースとか見てないんだよな」
「内部からの告発がきっかけだったそうです。今回も初めに情報が漏れたのは生徒のSNSですから……そこに相手が欲するものがあると、気づかれないようにすることが重要なのかもしれません」
「知られる前に、気づかれないことが重要か」
「ヒビの入ったカップに水をとどめておくことはできませんが、そのヒビを叩いて大きくする存在もありますから」

 小さな亀裂はやがて大きな崩壊につながる。
 内側からにせよ、外側からにせよ。
 クロネコが私をじっと見上げている。
 何かを訴えているようだった。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

熱い風の果てへ

朝陽ゆりね
ライト文芸
沙良は母が遺した絵を求めてエジプトにやってきた。 カルナック神殿で一服中に池に落ちてしまう。 必死で泳いで這い上がるが、なんだか周囲の様子がおかしい。 そこで出会った青年は自らの名をラムセスと名乗る。 まさか―― そのまさかは的中する。 ここは第18王朝末期の古代エジプトだった。 ※本作はすでに販売終了した作品を改稿したものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

処理中です...