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花言葉
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ほぼ、征一郎目線の話
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
夢中になって啜ってしまった。蜜口から溢れる蜜はとめどなく溢れ、伝い、菊口さえも濡らす。
蝶が蜜を求めるように、自分も誘われ、口を付け、啜る。
何度も、何度も絶頂と拒絶の言葉を繰り返し、最後は耐えられないほどの絶頂を迎え、気絶した。
気絶したが、その瞬間まで体は震えていた。短い、苦しそうな呼吸を繰り返し、体の中から整えている様子さえも愛おしい。
眉間にシワを寄せ、僅かに開いたり赤い唇から漏れ出る吐息さえも、自分を高揚とさせる。
征一郎は蜜粒を覆っていた口を離していく。朔耶の蜜と、自分の唾液が混ざった糸が蜜口と唇との橋掛をつくる。そして、銀の橋は切れてしまった。
そのまま、朔耶に覆いかぶさるように、けど、体重は掛けず、慎重に被さり、頭を優しく両手で撫でながら抱き締める。
羽佐間気船の社長の息子とは、ある程度の顔見知りの仲だ。そんな時、息子が教えてくれた。
「壬生雀院の当主が来る」と・・・・・・・
気を抜くと、闇に引き込まれる世界。結界の技術が高まり、精度が増したと言えどまだまだ、悪鬼跋扈が蔓延する世界。
その上、海の向こう側の世界を迎え入れた。色々なモノを輸入し生活様式や文化、食事など、我々の生活は更に彩り豊かになった。けど、その反面も然り。秀旭ノ皇國を脅かす存在が多く流入してきた。
その一つがこの「アフロディーテの雫」だ。
催淫剤の一つで男女関わらず、服用した者は性的に興奮する。時が経てば薬の効果は薄れていく。
体に残らないが、効果がなくなるまでは辛いらしい。
征一郎は呼吸が落ち着き、眉のシワがなくなってきた朔耶を見て安堵する。
最初は単純に興味があった。壬生雀院の当主のくせに、仕事はしない。しても、誰でもできる簡単な事だけ。時には誰かの手柄を我が物にする。自堕落的で横暴。気分屋で屋敷の者、血縁縁者に傲慢な態度で接する。
男をみれば誰それ構わず股を開き、淫乱で性に奔放。遊女顔負けであるとか・・・・・・
そんな、根も葉もない噂だけが一人歩きする。だが、実際、その現場を見たものは誰もいない。
けど、噂を信じ、疑うことをしない奴や、噂だけど、暇つぶしの娯楽としては楽しいと、高みの見物を決め込む者と、誰も手を差し伸べることも、調べる事もしないのがこの世界。
単純に興味があった。だから、参加する事にした。本来ならこんなパーティーには参加しないが、話を聞いたあの時は、何かがざわついた。何かを予兆するようなざわつきに、背中が粟立った事を今でも覚えている。
綺羅びやかなシャンデリアの下で踊る連中や、談笑を楽しむ者達・・・・・・絵物語のような光景が繰り広げられる。
その中に、異質なモノが一つ混ざり込む。
澄んだ水に一滴の墨を落とし、ゆっくりと広がる墨流しのように、人のざわつきや奇異の目が広がる。
その中心にいるのに我関せずを決め、けど、何かを求められたらスマートに対応する。
学も何も無いと言われる噂は嘘なのだとすぐに分かるほど、知識に富んでいた。
遠くで朔耶の人となりを見ていたが、「噂は噂か・・・・・」と納得した時、流した墨に小石を投げ入れるような出来事が起こる。
壬生雀院の本当の当主と言われる壬生雀院響士郎が現れたことだ。そして、ダンスを踊る。
強張った顔ながらも、僅かに楽しそうに見える顔や、華奢な体がクルクルと楽しそうに踊る様子、着ているドレスのせいもあるのか波が踊っている様にも見える。
一瞬で目を奪われた。そして、なぜ隣にいないのか無性に虚しさを覚えた。
同時に、今すぐにでも奪いたいと心が波立つ。
ダンスが終わり、また、壁の花になる彼女に声を掛けようか、それとも帰り際に挨拶をして、何かしらの会う約束を取り付けようか迷っている時に、一人の不審な男を見かける。
平然を装うっているが、目の動き、体の動かし方が他の違う。他の者は気付かぬだろうが、私は違う。武の筆頭名門貴族の名を名乗り、次期当主となるべく教育を受けた。不審な人物の見分けなどすぐに出来る。
だから、注意深く見た。すると、お盆に乗せた飲み物を朔耶に手渡しで渡す。受け取り、飲み込んだことに僅かだ唇を歪めた。私なら離れていてもすぐに分かる。
それから、気分が優れないのか、少しふらつきながら、ダンスホールを抜け出す。
後を付けていくと、案の定、たちの悪い男に襲われている所を救い出した。
震える体で私を見上げた眼差しが印象的だった。
気分が優れないのか、涙目でうるみ、それだけでも鼓動を一つ跳ね上げるほどの力を持つ。
苦しそうに僅かに開いた赤い唇が理性を乱し、奪いたい、塞ぎたい、滅茶苦茶にしたいと手が伸びる。
そして、毒の一種で苦しんでいるのかと思ったが、朔耶の様子は明らかに違う。
僅かに触られただけで、感じている声を僅かに出す。注意深く見ると催淫剤を盛られた時の反応に近い。
そして、催淫剤と言えば最近、耳にすることの多い「アフロディーテの雫」だ。
華族連中なら多少の金とコネで手に入る代物。
これは千載一遇のチャンスだと思ってしまった。欲しいと、奪われたくないと思った存在が目の前にいる。苦しそうにしている。それも、ただ、苦しいのではなく、性的快楽を求める苦しさを伴って・・・・・・
気がついたら抱き上げ、とある部屋に歩いていた。
この時ばかりは悪友に感謝した。
「気に入った令嬢がいたらど~ぞ」と鍵を渡された。「いい加減にしろ」と言ったものの、受け取ってしまった鍵は使う事があるのかと思ったが、まさか使う羽目になるとは・・・・・・
薬の事を伝えると「ありがとう」と言い、「耐える」と言い出す。その、健気さがゾクゾクとしてしまう。そして、「親切な人の名前は?」と聞かれ、名乗る。愛らしい声で呼ばれるとむず痒さともっと呼んで欲しと欲が生まれる。
そして、名前を呼びながら私に縋って欲しいと思い、無意識に言葉にしていた。「私なら助けられると・・・・」すると、信じてくれた朔耶は助けと言い出す。
後は欲望に忠実に、けど、傷付けないように丁寧に、朔耶が気持ちよくなるようにした。
ただでさえ赤い顔を更に赤くして、耳も首も同じ様に赤く染め、潤んだ黒い瞳は黒曜石のような艷やかな輝き・・・・・・
過敏になった体にそっと触れるだけで、体をビクつかせ、僅かに漏れ出た声は明らかに感じた声だ。
もっと近くでその声を聞いていたくて耳朶を舐める。肌が甘いと感じたのは生まれて初めてかもしれない。
自分を律する為に胸元を掴んでいた手は、いつの間にか私に縋るように掴んでくる。前開きのドレスがこれ程、好都合と思ったのは今でも笑ってしまう。逃げないように腰に手を回した手と反対の手で一つ一つ釦を外す。
華奢で細い体だと思っていた。抱き上げた時に驚いた。朔耶の年齢の女性より遥かに軽かった。
そして、見えるように広げると違う意味で驚いた。
体の至る所にあるのは生々しい傷のあと。中に入煙草か煙管を押し付けられた跡もある。
どれも以前、傷付けられたモノで今は完全に治っているが、余りにも見るに耐えない。
━━━━━壬生の当主は気に入らないことがあると、物を投げたり、杖や箒で跡が残るほど打ち据える。酷い当主だ・・・・・
聞いた話は、当主がしていた事になっているが、これでは逆じゃないか。当主が折檻にも、いや、これは憂さ晴らしの只の暴力だ。それを、分からないが、少なくとも数年前受けていた。
一瞬で頭に血がのぼった。これ程の暴力を振るった人間を、一人残らず捕まえたいと思った。
けど、朔耶の熱を帯びた声を聞いて「今は違う」と目が覚めた。今は朔耶の体に渦巻く熱を取り除くのが先だ。
コルセットから小ぶりな胸を取り出し、桜色の愛らしい尖りにむしゃぶりつく。それだけだは足りなくて、指を使い摘んだりしていく。
段々と物足りなくて、そして、ドレスの下に隠された部分も欲しくなってスカートや、膨らみを出していた部分を外し、ドロワーズだけにする。
足も同じ様な折檻の跡が点々とある。ドロワーズの下にも、同じ様なモノがあると思うと悔しくて、労るように撫でてしまう。
けど、早く、下着の奥にあるものが欲しくて手を差し込み触る。
しっかりと濡れてしまった部分を何度も何度も触る。
そして、気づいた・・・・・・
もしや、男を受け入れたことなどないのでは?と。
噂では、男を見ると股を開く、ふしだらな当主だと言われているが、目の前の当主は全く違う。
確かめたくて、下着を脱がし、舌で指で触り確認する。
やはり、噂は全くのデタラメ・・・・・・・
未通の生娘でそれどころか、下着を濡らすほど滴らせた蜜を「粗相した」と言い、挙句の果て、達して交わした言葉を、よく理解してなくて「何処に行くのか」と聞いてくる。
これが全て演技なら恐ろしいが、朔耶は素だ。
何もかも知らない、新雪の雪のような真っ更な彼女を、自分色に染めたいと思った。
だから、手始めに初めに快楽の境地に誘いたくて、「桃源郷」に導いた。
体験した事のない事に体がついて行かず、気絶してしまったが、今の彼女にはこれで良いのかもしれない。
眠っている顔はやっと穏やかな表情になり、一安心する。
征一郎は頭を優しく撫でながら、先程までとは違い、穏やかで、満足した顔付きになる。
先程の獣の様に射るような眼差しは見当たらない。
「・・・・・・・万次郎」
「はっ」
部屋の暗い隅から何かが動く。それは段々と人の形になり、声を発する。
「万次郎」と呼ばれた人物は、漆黒の闇に溶け込むように全身を黒い装束に身を包み、頭巾をし、見えるのは目だけと言った出で立ちで現れる。
「さっきほどの二人組と給仕人は捕まえているな?」
「ガッチガチに締め上げてますよ~」
「結構・・・・・・千歳を寄越してほしい。朔耶の着替えを手伝って欲しいからな・・・・・」
「脱がすのは慣れてるが、着せ替えるのは難しいってか?」
「言ってろ」
楽しそうな声と、明らかに不機嫌になった声が重なる。そして、「ガチャ」と扉の鍵が回り、「ギーッ」と扉が開き閉まる。
万次郎が揶揄するのは分かる。ここまで人に、それも異性に関心を抱き、挙句の果て未遂とは言え、女性の体を触り、更に、女の園を触り、口つけた。
異例中の異例、天地がひっくり返ると、思っているのかもしれない。それらな、それで構わないが・・・・・・
朔耶を押し倒すようにしていた体を起こし、千歳に対して、多少の繕いをする為に乱れた朔耶の衣装を整える。
ポケットチーフに入っているスリーピークを取り出して、愛らしい膨らみの桜色の粒を拭いていく。己の唾液で濡れてしまっていては嘸かし気持ち悪いだろう。
征一郎は優しく拭っていく。その度に薬の効果がいまだに残っているのか、朔耶は眠りながらも身を僅かに揺らす。
眠る吐息と混ざった声は、小さいながらも感じている声が征一郎の耳に届く。
意識してないと直ぐに自分の半身が熱を帯びる。先程は、自分の欲を押し殺していたから熱杭が固くなることはなかったが、気を抜いていた今、朔耶の乱れた姿や、声を聞いて固くなり、服が膨らんでくる。
今、自分の欲の赴くまま朔耶を抱いたら、どんな反応をするのか考えなくてもすぐに分かる。
それに、相手の同意なしにする気は毛頭ない。互いに気持ちを通わせ、朔耶の口から言われるまでは最後までする気はさらさらない。
胸をコルセットに戻し、釦を一つ一つ掛けていく。その際に、体の傷を見てしまい動きが止まる。
━━━━━これは、噂の真相を確かめないといけないな・・・・・・・・
噂はあれど、その噂の出来事を見た者はいない。そして、その噂の殆どは壬生雀院家から生まれている。
脱がしたドロワーズの濡れてしまった部分を丁寧に拭き取り、更に、朔耶の秘部全体を拭っていく。白いスリーピークは直ぐに透明の蜜で濡れてしまう。
濡れてしまった物を無造作にズボンのポケット突っ込むと、ドロワーズを履かせる。
後は千歳にしてもらわないと、上手く着せられないと自負している。
そして、タイミングのいいことに扉をノックする音が聞こえる。
そのノックも独特で、一般人がするようなノックではない。すると、一人の女性が入室してくる。
「あ~ぃ・・呼ばれて来ましたよ~~で、そちらのお嬢さんのドレスを整えればいいんですね~~・・・・あら、また、若も楽しくされて~~お元気で~~」
面倒くさそうな表情でこちらに近づいてきた女性は喪服姿をしていて、万次郎と同じく薄暗い部屋に溶け込んでいる。それでいて、唇だけは真っ赤で白い整った顔に合っていて、怪しげな雰囲気を醸し出す。
けど、朔耶の姿と征一郎の姿を見た途端、気だるい表情が一変して、ニヤニヤとしただらしない表情になり、声も何故か楽しそうだ。
万次郎もだが、この千歳も中々の曲者で、立場的には私が上の筈なのに、妙な所で立場が逆転する。年齢が二人とも上のこともあり、時々、いや、しょっちゅう揶揄われる。
「緊急的措置だ。他意はない。早く、ドレスを整えろ。あと、髪も綺麗にしてくれ」
面倒くさくなって、適当にあしらい指示をする。それを聞いた千歳は「はいはい」と笑いながらも素早く、けど、眠っている朔耶を起こさないようにしてドレスを着せていく。
泣いた顔を優しく丁寧に拭い、持ってきた道具で化粧を施す。ドレスを着せ、横向きにすると髪を整えていく。
征一郎はその様子を見ながら枕元を見ると、朔耶のしていた銀の簪が落ちていた。
あれだけ動いたのだ。簪が抜け落ちていても可笑しくない。何故か、手が伸びてその簪を拾い、まじまじと見つめる。
百合のようにも、彼岸花のようにも見える花はネリネの花だと分かった。中々な洒落物を用意するあたり、朔耶の身の回りには朔耶の事を大切に思う者がいるのだと伺える。
ネリネの花言葉は「箱入り娘」や「忍耐」そして、「また会う日を楽しみに」だ。
「若、簪下さい」
髪を整え終わった千歳が、最後の仕上げに簪を差そうと手を伸ばす。
たが、征一郎はそれを拒否した。
「あぁ、これは次の口実の為に預かっておくよ」
口の端を僅かに上げて、征一郎は燕尾服の内ポケットに簪をしまい込んだ。
「へぇ~~悪い顔だ・・・・はい、なら、これでおしまい。後はどうします?」
口笛の一つでも吹きそうな顔で千歳は征一郎の様子を見る。
けど、それ以上は関わらないと線引きをしている辺り、千歳も征一郎に従順な立場だと伺える。
「朔耶の家の者は来ているだろう?」
「はい、女性が二人います」
「分かった。連れて行って後はその二人に託そう」
了解した千歳は軽く頷くとベッドから降りていく。後は主の仕事だと理解したからだ。
最初に見た時の朔耶と変わらない姿に戻ったのを見て、僅かに寂しさを覚えたが、征一郎は気を取り直し、朔耶を横抱きに抱き上げる。
朔耶の軽さに眉をしかめながらも、平然とした態度と表情で歩き出す。
千歳も扉の開閉をする為に付いていき、補助をしていった。
「壬生雀院家の者ですか?」
鴇色の着物を着た女性と、ブラウスにロングスカートの洋装の女性が、不安な様子で立っていたが、征一郎とその腕に抱かれた朔耶を見て、悲鳴をあげそうな様子だった。
取り乱し、声を荒げそうな様子なのに、それを一切しないのは教育が行き届いている伺える。
「朔耶様!!」
顔面蒼白で近づき、今にも泣きそうな顔で朔耶を見る辺り、この女性達は朔耶の事を本気で案じていると分かる。
「一体、何が・・・・・貴方様は?」
「失礼・・・・・私は火澄征一郎と言います・・・・・・朔耶さんは薬を盛られました。気分が悪そうな所を私が介抱したのですが、そのまま眠ってしまわれました」
嘘は言ってない。詳しくは言わないだけで大まかなところだけを伝える。
すると、二人は顔を見合わせ、今にも倒れそうな様子だったが、洋装の女性が「東雲姉さん!!」と言うと、ハッとした様子の「東雲」と言われた女性が、気を取り直し此方を見つめる。
「火澄様ありがとうございます。主に代わりお礼申し上げます。あとは、こちらで対処致しますので朔耶様をお渡しください」
洋装の女性が背中を見せてくる。背中に乗せて連れて行くつもりだろう。
流石にいくら軽いと言っても、子供を背負うとは訳が違う。断ろうと思ったが、東雲が物凄い睨みつけ、「早く」と無言の威圧をかけてくる。
隣にいた千歳も肘で小突いて「言われた通りにしろ」とこちらも圧をかけてくる。
いくら火澄の人間でも、女性二人の圧は裸足で逃げ出すな・・・・・・と観念して朔耶を託す。
「ありがとうございます。この御礼は早急に返させていただきます・・・・・・本日のところはこれで失礼致します」
東雲が深々とお辞儀をする。洋装の女性も朔耶を背負いながら軽く頭を下げ、二人は廊下を歩き出し、征一郎達の前から深い闇に消えていった。
「若?あれでよかったんですか?」
「勿論。ちゃんと次の約束はしてるからね」
征一郎は内ポケット辺りに手を置く。そこには朔耶が差していた簪がある。
「頑張って次に繋げてくださいよ~」
ニヤニヤした顔の千歳は征一郎を見て、軽口を言うとそのまま先程来た道を引き返し、同じ様に闇に消えていく。
一人、廊下に残った征一郎は内ポケットに手を入れ簪を取り出し花の部分に口付ける。
その顔は暗くて見えないが、分かるのは間違いなく口の端が上がっていて笑っていたことだけだ。
「・・・・・・・・・・・・っ!!」
バチッと綴じていた瞼が開く。そして、最初に目についたのは暗い天井だ。
カバッと起き上がり、辺りを見回す。見慣れた部屋に馴染みのある布団。行灯の明かりはいつもと同じ様に淡く優しく照らしている。
そこは朔耶が普段使用している部屋。布団も寝間着も朔耶の物だ。
「・・・・・・・・・・・・」
訳が分からない。あれは夢だったのか?違う!なら、私はなぜ、ここにいる?あれからどうやって帰ってきた?これたのか?
朔耶の頭の中は疑問符だらけだった。
暫く、布団の中で悶々としていたが、心配して様子を見てきた煌が抱き着き、そのドタドタとした音に気付いて東雲達が来て、心配の言葉を言いながら、いつの間にか説教に変化し始めた頃、煌や他の式神達はそっと部屋を出ていき、触る神に祟りなしのスタンスを貫いた。
こってりと絞られ、項垂れ、気力の半分がなくなりだした頃、やっと東雲は征一郎と自分達のやり取りを話す。
「薬を盛られた」と話したと・・・・
けど、何故か本当の事が言えず「そうだ」としか言えず、もどかしくて悔しい。けど、あれは自分の見せたまやかしなのかと、心の何処かで疑う。
朔耶の様子に何かを悟った東雲は、これ以上何かを言う事も聞くこともなく、普段と同じ様な態度になる。
「朝餉の準備をしますね」
そう言って部屋を出ていく。朔耶もしばらくして動き出す。取り敢えず体を動かし、日課をこなし、普段と変わらない事をしたかった。そうすれば何かが打破出来そうな気がしたからだ。
━━━━━━そして、事態が動いたのは三日後の昼ごろだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひと目で貴方の事が好きになりました~
簡単に言えばこうですが、ヤンデレ枠の征一郎なので色々と感情がネジ曲がってます。
朔耶の事をあ~んなことや、こ~んなことして、持ち物を盗み?となんて図々しい奴め!です。けど、これぐらいないとつまらないわ~
さて、会う口実を作った征一郎は、どないな感じで会いに行くの楽しみです。そして、次のRの話はいつあるのか・・・・・・
ここまで読んで下さってありがとうございます
登録等して頂ければ幸いです。
評価がモチベーションアップです。宜しければ応援お願いします。応援で狂喜乱舞しております。
応援してくださる皆様方、本当にありがとうございます
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夢中になって啜ってしまった。蜜口から溢れる蜜はとめどなく溢れ、伝い、菊口さえも濡らす。
蝶が蜜を求めるように、自分も誘われ、口を付け、啜る。
何度も、何度も絶頂と拒絶の言葉を繰り返し、最後は耐えられないほどの絶頂を迎え、気絶した。
気絶したが、その瞬間まで体は震えていた。短い、苦しそうな呼吸を繰り返し、体の中から整えている様子さえも愛おしい。
眉間にシワを寄せ、僅かに開いたり赤い唇から漏れ出る吐息さえも、自分を高揚とさせる。
征一郎は蜜粒を覆っていた口を離していく。朔耶の蜜と、自分の唾液が混ざった糸が蜜口と唇との橋掛をつくる。そして、銀の橋は切れてしまった。
そのまま、朔耶に覆いかぶさるように、けど、体重は掛けず、慎重に被さり、頭を優しく両手で撫でながら抱き締める。
羽佐間気船の社長の息子とは、ある程度の顔見知りの仲だ。そんな時、息子が教えてくれた。
「壬生雀院の当主が来る」と・・・・・・・
気を抜くと、闇に引き込まれる世界。結界の技術が高まり、精度が増したと言えどまだまだ、悪鬼跋扈が蔓延する世界。
その上、海の向こう側の世界を迎え入れた。色々なモノを輸入し生活様式や文化、食事など、我々の生活は更に彩り豊かになった。けど、その反面も然り。秀旭ノ皇國を脅かす存在が多く流入してきた。
その一つがこの「アフロディーテの雫」だ。
催淫剤の一つで男女関わらず、服用した者は性的に興奮する。時が経てば薬の効果は薄れていく。
体に残らないが、効果がなくなるまでは辛いらしい。
征一郎は呼吸が落ち着き、眉のシワがなくなってきた朔耶を見て安堵する。
最初は単純に興味があった。壬生雀院の当主のくせに、仕事はしない。しても、誰でもできる簡単な事だけ。時には誰かの手柄を我が物にする。自堕落的で横暴。気分屋で屋敷の者、血縁縁者に傲慢な態度で接する。
男をみれば誰それ構わず股を開き、淫乱で性に奔放。遊女顔負けであるとか・・・・・・
そんな、根も葉もない噂だけが一人歩きする。だが、実際、その現場を見たものは誰もいない。
けど、噂を信じ、疑うことをしない奴や、噂だけど、暇つぶしの娯楽としては楽しいと、高みの見物を決め込む者と、誰も手を差し伸べることも、調べる事もしないのがこの世界。
単純に興味があった。だから、参加する事にした。本来ならこんなパーティーには参加しないが、話を聞いたあの時は、何かがざわついた。何かを予兆するようなざわつきに、背中が粟立った事を今でも覚えている。
綺羅びやかなシャンデリアの下で踊る連中や、談笑を楽しむ者達・・・・・・絵物語のような光景が繰り広げられる。
その中に、異質なモノが一つ混ざり込む。
澄んだ水に一滴の墨を落とし、ゆっくりと広がる墨流しのように、人のざわつきや奇異の目が広がる。
その中心にいるのに我関せずを決め、けど、何かを求められたらスマートに対応する。
学も何も無いと言われる噂は嘘なのだとすぐに分かるほど、知識に富んでいた。
遠くで朔耶の人となりを見ていたが、「噂は噂か・・・・・」と納得した時、流した墨に小石を投げ入れるような出来事が起こる。
壬生雀院の本当の当主と言われる壬生雀院響士郎が現れたことだ。そして、ダンスを踊る。
強張った顔ながらも、僅かに楽しそうに見える顔や、華奢な体がクルクルと楽しそうに踊る様子、着ているドレスのせいもあるのか波が踊っている様にも見える。
一瞬で目を奪われた。そして、なぜ隣にいないのか無性に虚しさを覚えた。
同時に、今すぐにでも奪いたいと心が波立つ。
ダンスが終わり、また、壁の花になる彼女に声を掛けようか、それとも帰り際に挨拶をして、何かしらの会う約束を取り付けようか迷っている時に、一人の不審な男を見かける。
平然を装うっているが、目の動き、体の動かし方が他の違う。他の者は気付かぬだろうが、私は違う。武の筆頭名門貴族の名を名乗り、次期当主となるべく教育を受けた。不審な人物の見分けなどすぐに出来る。
だから、注意深く見た。すると、お盆に乗せた飲み物を朔耶に手渡しで渡す。受け取り、飲み込んだことに僅かだ唇を歪めた。私なら離れていてもすぐに分かる。
それから、気分が優れないのか、少しふらつきながら、ダンスホールを抜け出す。
後を付けていくと、案の定、たちの悪い男に襲われている所を救い出した。
震える体で私を見上げた眼差しが印象的だった。
気分が優れないのか、涙目でうるみ、それだけでも鼓動を一つ跳ね上げるほどの力を持つ。
苦しそうに僅かに開いた赤い唇が理性を乱し、奪いたい、塞ぎたい、滅茶苦茶にしたいと手が伸びる。
そして、毒の一種で苦しんでいるのかと思ったが、朔耶の様子は明らかに違う。
僅かに触られただけで、感じている声を僅かに出す。注意深く見ると催淫剤を盛られた時の反応に近い。
そして、催淫剤と言えば最近、耳にすることの多い「アフロディーテの雫」だ。
華族連中なら多少の金とコネで手に入る代物。
これは千載一遇のチャンスだと思ってしまった。欲しいと、奪われたくないと思った存在が目の前にいる。苦しそうにしている。それも、ただ、苦しいのではなく、性的快楽を求める苦しさを伴って・・・・・・
気がついたら抱き上げ、とある部屋に歩いていた。
この時ばかりは悪友に感謝した。
「気に入った令嬢がいたらど~ぞ」と鍵を渡された。「いい加減にしろ」と言ったものの、受け取ってしまった鍵は使う事があるのかと思ったが、まさか使う羽目になるとは・・・・・・
薬の事を伝えると「ありがとう」と言い、「耐える」と言い出す。その、健気さがゾクゾクとしてしまう。そして、「親切な人の名前は?」と聞かれ、名乗る。愛らしい声で呼ばれるとむず痒さともっと呼んで欲しと欲が生まれる。
そして、名前を呼びながら私に縋って欲しいと思い、無意識に言葉にしていた。「私なら助けられると・・・・」すると、信じてくれた朔耶は助けと言い出す。
後は欲望に忠実に、けど、傷付けないように丁寧に、朔耶が気持ちよくなるようにした。
ただでさえ赤い顔を更に赤くして、耳も首も同じ様に赤く染め、潤んだ黒い瞳は黒曜石のような艷やかな輝き・・・・・・
過敏になった体にそっと触れるだけで、体をビクつかせ、僅かに漏れ出た声は明らかに感じた声だ。
もっと近くでその声を聞いていたくて耳朶を舐める。肌が甘いと感じたのは生まれて初めてかもしれない。
自分を律する為に胸元を掴んでいた手は、いつの間にか私に縋るように掴んでくる。前開きのドレスがこれ程、好都合と思ったのは今でも笑ってしまう。逃げないように腰に手を回した手と反対の手で一つ一つ釦を外す。
華奢で細い体だと思っていた。抱き上げた時に驚いた。朔耶の年齢の女性より遥かに軽かった。
そして、見えるように広げると違う意味で驚いた。
体の至る所にあるのは生々しい傷のあと。中に入煙草か煙管を押し付けられた跡もある。
どれも以前、傷付けられたモノで今は完全に治っているが、余りにも見るに耐えない。
━━━━━壬生の当主は気に入らないことがあると、物を投げたり、杖や箒で跡が残るほど打ち据える。酷い当主だ・・・・・
聞いた話は、当主がしていた事になっているが、これでは逆じゃないか。当主が折檻にも、いや、これは憂さ晴らしの只の暴力だ。それを、分からないが、少なくとも数年前受けていた。
一瞬で頭に血がのぼった。これ程の暴力を振るった人間を、一人残らず捕まえたいと思った。
けど、朔耶の熱を帯びた声を聞いて「今は違う」と目が覚めた。今は朔耶の体に渦巻く熱を取り除くのが先だ。
コルセットから小ぶりな胸を取り出し、桜色の愛らしい尖りにむしゃぶりつく。それだけだは足りなくて、指を使い摘んだりしていく。
段々と物足りなくて、そして、ドレスの下に隠された部分も欲しくなってスカートや、膨らみを出していた部分を外し、ドロワーズだけにする。
足も同じ様な折檻の跡が点々とある。ドロワーズの下にも、同じ様なモノがあると思うと悔しくて、労るように撫でてしまう。
けど、早く、下着の奥にあるものが欲しくて手を差し込み触る。
しっかりと濡れてしまった部分を何度も何度も触る。
そして、気づいた・・・・・・
もしや、男を受け入れたことなどないのでは?と。
噂では、男を見ると股を開く、ふしだらな当主だと言われているが、目の前の当主は全く違う。
確かめたくて、下着を脱がし、舌で指で触り確認する。
やはり、噂は全くのデタラメ・・・・・・・
未通の生娘でそれどころか、下着を濡らすほど滴らせた蜜を「粗相した」と言い、挙句の果て、達して交わした言葉を、よく理解してなくて「何処に行くのか」と聞いてくる。
これが全て演技なら恐ろしいが、朔耶は素だ。
何もかも知らない、新雪の雪のような真っ更な彼女を、自分色に染めたいと思った。
だから、手始めに初めに快楽の境地に誘いたくて、「桃源郷」に導いた。
体験した事のない事に体がついて行かず、気絶してしまったが、今の彼女にはこれで良いのかもしれない。
眠っている顔はやっと穏やかな表情になり、一安心する。
征一郎は頭を優しく撫でながら、先程までとは違い、穏やかで、満足した顔付きになる。
先程の獣の様に射るような眼差しは見当たらない。
「・・・・・・・万次郎」
「はっ」
部屋の暗い隅から何かが動く。それは段々と人の形になり、声を発する。
「万次郎」と呼ばれた人物は、漆黒の闇に溶け込むように全身を黒い装束に身を包み、頭巾をし、見えるのは目だけと言った出で立ちで現れる。
「さっきほどの二人組と給仕人は捕まえているな?」
「ガッチガチに締め上げてますよ~」
「結構・・・・・・千歳を寄越してほしい。朔耶の着替えを手伝って欲しいからな・・・・・」
「脱がすのは慣れてるが、着せ替えるのは難しいってか?」
「言ってろ」
楽しそうな声と、明らかに不機嫌になった声が重なる。そして、「ガチャ」と扉の鍵が回り、「ギーッ」と扉が開き閉まる。
万次郎が揶揄するのは分かる。ここまで人に、それも異性に関心を抱き、挙句の果て未遂とは言え、女性の体を触り、更に、女の園を触り、口つけた。
異例中の異例、天地がひっくり返ると、思っているのかもしれない。それらな、それで構わないが・・・・・・
朔耶を押し倒すようにしていた体を起こし、千歳に対して、多少の繕いをする為に乱れた朔耶の衣装を整える。
ポケットチーフに入っているスリーピークを取り出して、愛らしい膨らみの桜色の粒を拭いていく。己の唾液で濡れてしまっていては嘸かし気持ち悪いだろう。
征一郎は優しく拭っていく。その度に薬の効果がいまだに残っているのか、朔耶は眠りながらも身を僅かに揺らす。
眠る吐息と混ざった声は、小さいながらも感じている声が征一郎の耳に届く。
意識してないと直ぐに自分の半身が熱を帯びる。先程は、自分の欲を押し殺していたから熱杭が固くなることはなかったが、気を抜いていた今、朔耶の乱れた姿や、声を聞いて固くなり、服が膨らんでくる。
今、自分の欲の赴くまま朔耶を抱いたら、どんな反応をするのか考えなくてもすぐに分かる。
それに、相手の同意なしにする気は毛頭ない。互いに気持ちを通わせ、朔耶の口から言われるまでは最後までする気はさらさらない。
胸をコルセットに戻し、釦を一つ一つ掛けていく。その際に、体の傷を見てしまい動きが止まる。
━━━━━これは、噂の真相を確かめないといけないな・・・・・・・・
噂はあれど、その噂の出来事を見た者はいない。そして、その噂の殆どは壬生雀院家から生まれている。
脱がしたドロワーズの濡れてしまった部分を丁寧に拭き取り、更に、朔耶の秘部全体を拭っていく。白いスリーピークは直ぐに透明の蜜で濡れてしまう。
濡れてしまった物を無造作にズボンのポケット突っ込むと、ドロワーズを履かせる。
後は千歳にしてもらわないと、上手く着せられないと自負している。
そして、タイミングのいいことに扉をノックする音が聞こえる。
そのノックも独特で、一般人がするようなノックではない。すると、一人の女性が入室してくる。
「あ~ぃ・・呼ばれて来ましたよ~~で、そちらのお嬢さんのドレスを整えればいいんですね~~・・・・あら、また、若も楽しくされて~~お元気で~~」
面倒くさそうな表情でこちらに近づいてきた女性は喪服姿をしていて、万次郎と同じく薄暗い部屋に溶け込んでいる。それでいて、唇だけは真っ赤で白い整った顔に合っていて、怪しげな雰囲気を醸し出す。
けど、朔耶の姿と征一郎の姿を見た途端、気だるい表情が一変して、ニヤニヤとしただらしない表情になり、声も何故か楽しそうだ。
万次郎もだが、この千歳も中々の曲者で、立場的には私が上の筈なのに、妙な所で立場が逆転する。年齢が二人とも上のこともあり、時々、いや、しょっちゅう揶揄われる。
「緊急的措置だ。他意はない。早く、ドレスを整えろ。あと、髪も綺麗にしてくれ」
面倒くさくなって、適当にあしらい指示をする。それを聞いた千歳は「はいはい」と笑いながらも素早く、けど、眠っている朔耶を起こさないようにしてドレスを着せていく。
泣いた顔を優しく丁寧に拭い、持ってきた道具で化粧を施す。ドレスを着せ、横向きにすると髪を整えていく。
征一郎はその様子を見ながら枕元を見ると、朔耶のしていた銀の簪が落ちていた。
あれだけ動いたのだ。簪が抜け落ちていても可笑しくない。何故か、手が伸びてその簪を拾い、まじまじと見つめる。
百合のようにも、彼岸花のようにも見える花はネリネの花だと分かった。中々な洒落物を用意するあたり、朔耶の身の回りには朔耶の事を大切に思う者がいるのだと伺える。
ネリネの花言葉は「箱入り娘」や「忍耐」そして、「また会う日を楽しみに」だ。
「若、簪下さい」
髪を整え終わった千歳が、最後の仕上げに簪を差そうと手を伸ばす。
たが、征一郎はそれを拒否した。
「あぁ、これは次の口実の為に預かっておくよ」
口の端を僅かに上げて、征一郎は燕尾服の内ポケットに簪をしまい込んだ。
「へぇ~~悪い顔だ・・・・はい、なら、これでおしまい。後はどうします?」
口笛の一つでも吹きそうな顔で千歳は征一郎の様子を見る。
けど、それ以上は関わらないと線引きをしている辺り、千歳も征一郎に従順な立場だと伺える。
「朔耶の家の者は来ているだろう?」
「はい、女性が二人います」
「分かった。連れて行って後はその二人に託そう」
了解した千歳は軽く頷くとベッドから降りていく。後は主の仕事だと理解したからだ。
最初に見た時の朔耶と変わらない姿に戻ったのを見て、僅かに寂しさを覚えたが、征一郎は気を取り直し、朔耶を横抱きに抱き上げる。
朔耶の軽さに眉をしかめながらも、平然とした態度と表情で歩き出す。
千歳も扉の開閉をする為に付いていき、補助をしていった。
「壬生雀院家の者ですか?」
鴇色の着物を着た女性と、ブラウスにロングスカートの洋装の女性が、不安な様子で立っていたが、征一郎とその腕に抱かれた朔耶を見て、悲鳴をあげそうな様子だった。
取り乱し、声を荒げそうな様子なのに、それを一切しないのは教育が行き届いている伺える。
「朔耶様!!」
顔面蒼白で近づき、今にも泣きそうな顔で朔耶を見る辺り、この女性達は朔耶の事を本気で案じていると分かる。
「一体、何が・・・・・貴方様は?」
「失礼・・・・・私は火澄征一郎と言います・・・・・・朔耶さんは薬を盛られました。気分が悪そうな所を私が介抱したのですが、そのまま眠ってしまわれました」
嘘は言ってない。詳しくは言わないだけで大まかなところだけを伝える。
すると、二人は顔を見合わせ、今にも倒れそうな様子だったが、洋装の女性が「東雲姉さん!!」と言うと、ハッとした様子の「東雲」と言われた女性が、気を取り直し此方を見つめる。
「火澄様ありがとうございます。主に代わりお礼申し上げます。あとは、こちらで対処致しますので朔耶様をお渡しください」
洋装の女性が背中を見せてくる。背中に乗せて連れて行くつもりだろう。
流石にいくら軽いと言っても、子供を背負うとは訳が違う。断ろうと思ったが、東雲が物凄い睨みつけ、「早く」と無言の威圧をかけてくる。
隣にいた千歳も肘で小突いて「言われた通りにしろ」とこちらも圧をかけてくる。
いくら火澄の人間でも、女性二人の圧は裸足で逃げ出すな・・・・・・と観念して朔耶を託す。
「ありがとうございます。この御礼は早急に返させていただきます・・・・・・本日のところはこれで失礼致します」
東雲が深々とお辞儀をする。洋装の女性も朔耶を背負いながら軽く頭を下げ、二人は廊下を歩き出し、征一郎達の前から深い闇に消えていった。
「若?あれでよかったんですか?」
「勿論。ちゃんと次の約束はしてるからね」
征一郎は内ポケット辺りに手を置く。そこには朔耶が差していた簪がある。
「頑張って次に繋げてくださいよ~」
ニヤニヤした顔の千歳は征一郎を見て、軽口を言うとそのまま先程来た道を引き返し、同じ様に闇に消えていく。
一人、廊下に残った征一郎は内ポケットに手を入れ簪を取り出し花の部分に口付ける。
その顔は暗くて見えないが、分かるのは間違いなく口の端が上がっていて笑っていたことだけだ。
「・・・・・・・・・・・・っ!!」
バチッと綴じていた瞼が開く。そして、最初に目についたのは暗い天井だ。
カバッと起き上がり、辺りを見回す。見慣れた部屋に馴染みのある布団。行灯の明かりはいつもと同じ様に淡く優しく照らしている。
そこは朔耶が普段使用している部屋。布団も寝間着も朔耶の物だ。
「・・・・・・・・・・・・」
訳が分からない。あれは夢だったのか?違う!なら、私はなぜ、ここにいる?あれからどうやって帰ってきた?これたのか?
朔耶の頭の中は疑問符だらけだった。
暫く、布団の中で悶々としていたが、心配して様子を見てきた煌が抱き着き、そのドタドタとした音に気付いて東雲達が来て、心配の言葉を言いながら、いつの間にか説教に変化し始めた頃、煌や他の式神達はそっと部屋を出ていき、触る神に祟りなしのスタンスを貫いた。
こってりと絞られ、項垂れ、気力の半分がなくなりだした頃、やっと東雲は征一郎と自分達のやり取りを話す。
「薬を盛られた」と話したと・・・・
けど、何故か本当の事が言えず「そうだ」としか言えず、もどかしくて悔しい。けど、あれは自分の見せたまやかしなのかと、心の何処かで疑う。
朔耶の様子に何かを悟った東雲は、これ以上何かを言う事も聞くこともなく、普段と同じ様な態度になる。
「朝餉の準備をしますね」
そう言って部屋を出ていく。朔耶もしばらくして動き出す。取り敢えず体を動かし、日課をこなし、普段と変わらない事をしたかった。そうすれば何かが打破出来そうな気がしたからだ。
━━━━━━そして、事態が動いたのは三日後の昼ごろだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ひと目で貴方の事が好きになりました~
簡単に言えばこうですが、ヤンデレ枠の征一郎なので色々と感情がネジ曲がってます。
朔耶の事をあ~んなことや、こ~んなことして、持ち物を盗み?となんて図々しい奴め!です。けど、これぐらいないとつまらないわ~
さて、会う口実を作った征一郎は、どないな感じで会いに行くの楽しみです。そして、次のRの話はいつあるのか・・・・・・
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