ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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閑話 イタリア共同演習6

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演習三日目、軍の人間は今日はとてつもなく荒れる一日だと思っていた。
三日目はサバイバルゲーム。持ち点があり、攻撃を受けると持ち点が下がっていく。気絶などしたらその場で終了だ。

そして、日本軍の七海少佐の「勝者は相手国の人を誘って観光」の案件もある。
事前通告でこの案の適用を許可して欲しいと、相手国からあったので、色々と考えた結果この案件を日本軍は飲み込んだ。

そして、間違いなく一人の軍人に集中砲火するだろうと、会議で話していった結果、夜神を囮にして確実に一人ずつ対処する方向で決まった。
もちろん夜神が目立つように動くが、遠距離護衛班が付き、相澤少佐達などがなるべく護衛しつつ、派手に暴れる事になったと言うわけだ。

雲一つない晴天にため息をして夜神は青空を見上げる。
演習日和なのかな?と、思うことにした。雨の中とかは嫌なのでいいのかも知れない。
腰に下げているのは愛刀ではなく、サバイバルゲーム用の刀だ。殺傷能力ゼロの刀は少し重みがないため、少し不安になる。
だか、ここで本物を持ち出したら色々とややこしい事になるので、とりあえず今回の相棒の柄を握る。

昨日は散々虎次郎からストップをかけられていたが、今日は思いっ切り暴れてやる!と、決めている。
元々その指示もあるが、やはり昨日の件で意気込みが更に増してしまった。恨むならベルナルディ中佐を恨んで下さい、イタリア軍の皆さん。

頭の隅でそんな事を思いながら、集合場所に行く。今回は日本軍とイタリア軍とのサバイバルゲームなので、それぞれ分かれている。簡易的に司令部もありテントに無線機などの機材が置かれ、その場所が今回の作戦本部になる。

今回の作戦・立案の虎次郎は夜神には「目立って動け」としか言わなかったが、それ以外の人達はそれぞれ役割分担がしっかりとある。
本隊・援護射撃班・別働隊の三部隊に分かれ行動する。夜神は別働隊(囮部隊)になるため、その部隊の人間と最終チェックをしていく。
その中には学生の庵君もいる。夜神は庵を見つけるといつもの微笑みで庵の側による。
「昨日は眠れた?今日は思いっ切り暴れましょうね」
「おはよございます、夜神中佐。眠れましたが何だか緊張しますね。昨日まで一緒に学んでいたのに、今日だけは敵・味方に分かれるのは複雑です。仲良くなったイタリア軍の学生とかもいるので」
「大丈夫よ、今日一日限定だから。本来は何かあったら共同して吸血鬼を討伐する仲だから。ケンカ別れとかないから。サバイバルゲームが終われば、また元の仲良くなった学生同士に戻るからね」
「ですよね。それにしても別働隊・・・・七海少佐が囮部隊と言ってましたが、それは本当ですか?」
庵は声を小さくして周りに聞こえないように、夜神に話しかける。夜神は苦笑いで「そうだよ」と答えるだけだ。

その時、自分達の後ろから知っている声が聞こえる。
「夜神中佐に庵学生、今日は宜しくお願いする。七海も言っていたが目立って動いて欲しい。勿論、護衛射撃をするから安心して大丈夫だからね。庵学生」
「相澤少佐、おはよございます。こちらこそ宜しくお願いします」
眼鏡をかけて、いつもの神経質そうな顔だが、少しだけ憐れみを感じる。夜神に対してでなく庵に対してだろう。
いつものライフル銃でなくてサバイバル用の銃を肩に下げているが、慣れないのか銃のベルトを持って動かしている。
「七海の立案なら間違いないだろう。夜神中佐も色々と大変だ。相澤達と一緒に援護射撃していくから背中は任せて暴れて、立派な囮になってくれよ。庵学生!」
弓矢を持っているのは第三室所属の藤堂 義武とうどう よしたけ少佐だ。腕章は金ラインで、夜神と同じように「教育係」の文字がある。
「藤堂少佐、おはよございます。援護射撃宜しくお願いします。きっと自分は目の前のことで一杯になると思うので援護があるだけでも有り難いです」
「援護射撃班は精鋭揃いだから安心して大丈夫だよ。庵君も目立って動いてね。私も頑張るから」
夜神はニッコリして、庵に話しかける。庵は昨日のやり取りを七海少佐から聞いていて「夜神は物凄く暴れるから巻き込まれるな」と言われている。

きっと昨日の憂さ晴らしも込めて、暴れるに違いない。今なら七海少佐の「巻き込まれ」の意味が分かる気がする。
庵は「はははっ」と軽く笑って色々と誤魔化すことにした。笑いは誤魔化すのに一役買ってくれると信じて。
「庵学生も大変だね。おや、そろそろ集合時間だ。さてと我々もいきますか」
藤堂は時計を見て、笑顔で話しかける。藤堂の話を聞いて皆でうなずいて、集合場所に移動した。
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