ブラッドゲート〜月は鎖と荊に絡め取られる〜 《軍最強の女軍人は皇帝の偏愛と部下の愛に絡め縛られる》

和刀 蓮葵

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閑話 イタリア共同演習7

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インカムから本部の指示がくる。
「中佐、十二時と六時の方向から来ます。そのまま待機して下さい。同時に現れたら気絶させて下さい」
「了解!」
木の幹に体を預けて指示通り待機する。空を見ると雲一つない青空だ。
気持ちのいい風も吹いている。こんな切迫した状態でも自然を体感している自分に、少しだけ笑いがこみ上げる。

スタートと同時にイタリア軍の二部隊が夜神に奇襲を仕掛けてきた。だが相手も分かっていたのだろう。この攻撃は当たらない、かわされると。
案の定、夜神は持ち前の俊敏な動きで奇襲をかわし、愛刀代わりのサバイバル用の刀で打ちのめして、とどめに気絶させると急いでその場所から移動する。
自分の持ち場はここではないからだ。そして移動して、今この場所で待機している。

今回の演習は今まで以上に気をつけなくてはいけない。相手の本気度が桁違いだ。
演習の責任者がベルナルディ中佐だからかもしれないが、それ以上の気迫に何とも言えない気持ちになる。

風を感じていると、本部の連絡通り二つの方向から、部隊を連れて相手が現れる。
夜神は相手が持っている武器を確かめると十二時の方向から来た相手を先に片付ける。
武器は槍だ。相手が槍を突き出すと同時に体を宙に浮かせて、槍の柄を台にして片手で側転して、相手の体に自分の体をぶつけて気絶させる。
そこから指揮系統が乱れたのを確認して、サバイバル用の刀を使い残りの五人を一気に片付ける。

残りの六時の方向からの部隊は体術がメインと見て、刀を納めると、跳躍して距離を縮め、相手の懐に入ると地面に手を付いて逆立ちのようなポーズをして相手の顎に蹴りを入れる。
怯んだ所で下から拳をみぞおちに入れて気絶させると、残りの隊員達に次々と攻撃を仕掛けていく。勿論一撃で気絶させていく。

何とか指示通りに気絶させることに成功した夜神は、インカムに次の指示を聞く。すぐ近くでは銃声が聞こえる。相澤少佐達の援護射撃だ。
庵君は大丈夫だろうか?合図直後の奇襲で別れてしまったが作戦通りに行けばそのうち会えるだろう。
相手国の学生と仲良くなったことを、嬉しそうに話していたことを思い出す。とても良い事だと思う。仲良なるのは仲間が増えることで、そして切磋琢磨して己を磨く。いい刺激にもなる。いい事ずくめだ。

インカムからの指示で次の場所に移動する。
七海の作戦名は「鮭の母川回帰ぼせんかいき」だそうだ。
鮭の産卵のテレビを見て思いついた作戦だとか。最初聞いたときは皆して「?」だったが話を聞いて、何とか納得したのだ。
川で孵化して、海で過ごし、また川に帰って産卵する。鮭の一生を自分達の動きに当てはめるのは、中々考えつかないものだ。

夜神達に別働隊は鮭のように最初の位置から少しずつ移動している。そして一定の場所に集合して相手を揺動し、叩き潰してまた元の場所に戻っていく。その時に目立つ動きをして相手を引き付けた所で、バラバラになっていた本隊が攻撃していくそうだ。
上手くいくのかは別働隊次第だと、七海は作戦会議の時に言っていた。

別働隊の動きは相手に筒抜けになるようにしてある。なかなか大変なものだが、本隊が確実に相手の数を減らしているようなので一安心だ。
それに援護射撃班もしっかりと援護しているようなので更に安心だ。

今回の演習は誰が勝者かは分からないが、トータルの勝ち点だけでも頂きたいものだ。

夜神は周囲を警戒しながらも、次の場所に移動していく。一番厄介な相手に出会わなければ良いのだが、人生甘くないのは百も承知している。だか、叶うならば会いたくない。
そう、夜神を色んな意味でイライラさせるカルロ・ベルナルディ中佐だけは本隊で処理・・・・・ではなく気絶してくれないかな?
少しだけ希望を込めて、澄んだ青空を見上げながらポニーテールの毛先を揺らして走っていった。
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