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「ありがとうございました!!」
道場に挨拶が響き渡る。昼から夜神と庵と久慈学生の三人で、稽古をしていた。
庵の不安は的中し、七海中佐よりは酷くないが、何度床と「友達」と言うなの飛ばされて、打ち付けられたことか。
それを間近で見ていた久慈学生は「えぇ~?!」と驚いていた。
「庵伍長、自分は少しだけ打ち合いをしたいと思うのですがいいでしょうか?」
「えっ、自分と?大丈夫だと思いますが・・・・夜神大佐、宜しいですか?」
突然の指名に驚いてしまう。けど、何となくだがわかる気がする。
夜神の力は自分たちでは及ばない、ある意味異次元の力、技なのだ。加減されてるとは言えやはり何かが違う。
その点、庵なら打ち合いには適している。力の差はあるが、それは常識の範囲で、夜神の異次元に比べたらだ。
「庵君と?いいよ。時間の許す範囲ですればいいよ。それじゃ私は先に行ってるね」
微笑んで久慈学生を見る。そして竹刀を元に戻し、ポニーテールを揺らしながら道場を後にする。
黒い軍服の後ろ姿が消えた所で、久慈が口を開く。
「すみません。庵伍長の時間をもらってしまって」
「大丈夫だよ。自分も学生の時は、色んな人に指導してもらったし、稽古に付き合ってもらったりしたから」
「ありがとうございます。早速お願いしてもいいですか?」
「もちろん!こちらこそ宜しくお願いします」
道場に威勢のいい声と、竹刀の「パ━━ン!」と打ち付ける音が響く。
「何で、自分に打ち合いを頼んだんですか?」
「夜神大佐に打ち合いをしてもらうのは凄く嬉しいです。けどやっぱり差がありすぎるせいか、自分の実力がどれほどあるか分からないので・・・・・すみません。庵先輩」
「いいよ。その気分になるのは凄く分かるよ。自分もそうだったし」
すると動きが止まり、久慈学生は庵に近づく
「庵先輩、夜神大佐は帝國に行って帰ってきたんですよね?」
「久慈学生!事実だけど、けして夜神大佐の前では話してはいけない。今でもそのせいで苦しんでいるんだ」
気絶するまで抱いてしまうのは、反省してしまう点だか、眠っているときに時々うなされている。
皇帝・・・・・
食べるから・・・・・
爪・・・・・
うなされながら時々呟く言葉には理解出来ないが、どれも帝国で受けた何かしらの事だと分かる。
特に、皇帝から受けた仕打ちの事を考えると、沸々と怒りがこみ上げる。
助け出した時に見た、おびただしい数の噛み傷、赤い鬱血の跡。陵辱されたのはあきらかに分かる跡。
病室で見せた、泣いて謝る姿は今でも鮮明に覚えている。二度とそんな姿をさせないために、庵は力をつけて夜神に思いを伝えたのだ。
「約束して欲しい。絶対に言わないこと。第一室の皆はその事を十分に理解しているから何一つ言わない。もちろん久慈学生も今は第一室の一員だから」
「分かってます。言いませんよ。庵先輩・・・・所でもう一つとんでもない噂があるんですが・・・・・」
ニッコリ満面の笑みで聞いてくる久慈学生に、庵は何かを感じた。見えないが悪魔の羽と尻尾が見えてくる。
「なんだよ・・・・その満面の笑顔は」
「夜神大佐と仲良く、ラーメン屋でご飯食べていたと多数の目撃証言があります。そしてその後も・・・・言い逃れは出来ません!!付き合っているんですよね?庵先輩!!」
だからなのか!!最近、嫉妬と嫉妬と嫉妬との目線や、「呪ってやる!」と通りすがる時にボソッと言われる言葉、付き合っているのがバレたと思っていたが、更に上を行く。ホテルに入っていったのまでバレている。
時間の問題だとは思っていたが、まさかのこれか・・・・・
嘘を言っても仕方がないし、いつかは知られる事だと思っていた。
「・・・・・・どうせ知られるのも時間の問題だとは思っていたけど早かった。そうだよ、付き合っているよ。何か文句あるか?」
「全然文句ありません。お似合いだと思います。他の人達は知りませんが」
更に清々しい笑顔で久慈は続ける。
「周りに負けないで下さい!応援してますよ!!ちなみにどっちから告ったんですか?」
「お前、遠慮と言う言葉を知らんのか?それ以上は答えない!想像で補え!」
これ以上、久慈の顔を見ていると墓穴を掘りそうだと危惧した庵は「着替える」と一言残して道場を出ようする。
「ちょ、先輩?減るもんじゃないし、いいじゃないですか~なら夜神大佐に確認すればいいですか?」
ピタッと足が止まる。
今、なんと言った?「夜神大佐に確認?」死ぬぞ久慈!!
「絶対、やめろ!!死ぬぞ!いやマジで。冗談抜きで!七海中佐の二の舞いになるぞ」
「その時は彼氏なんですから止めてくださいよ。七海中佐の二の舞いとは?」
「俺が今受けている、仕打ちの倍の事を七海中佐は受けている。別名「壁と床と親友」と言う名の「飛ばして、壁や床に叩きつける」行為だ」
見ているだけで寒気がする。あんな仕打ち俺は絶対嫌だ。
七海中佐はすでに何度も経験しているが、懲りずに繰り返す。マゾか?マゾなのか?
庵の真剣な声に久慈は「本当に大変な事なんだ」と理解する。
「わかりましたよ。その代わりネタ提供宜しくです。庵伍長?」
してやったりの顔で久慈は庵を見る。庵も「しまった!」となったが後の祭りだと悟り、盛大なため息をする。
「答えられる範囲であれば・・・・・」
「ヤッター!ありがとうございます。では早速ですが・・・・・」
久慈は答えられるギリギリのラインで質問する。
そして、庵はそれに半泣きで、答えるしかなかった。
質問一つ一つが本当にギリギリで答えられものばかりなのだ。
庵は悟った。ある意味、出来の良い後輩は持つものではないと。
道場に挨拶が響き渡る。昼から夜神と庵と久慈学生の三人で、稽古をしていた。
庵の不安は的中し、七海中佐よりは酷くないが、何度床と「友達」と言うなの飛ばされて、打ち付けられたことか。
それを間近で見ていた久慈学生は「えぇ~?!」と驚いていた。
「庵伍長、自分は少しだけ打ち合いをしたいと思うのですがいいでしょうか?」
「えっ、自分と?大丈夫だと思いますが・・・・夜神大佐、宜しいですか?」
突然の指名に驚いてしまう。けど、何となくだがわかる気がする。
夜神の力は自分たちでは及ばない、ある意味異次元の力、技なのだ。加減されてるとは言えやはり何かが違う。
その点、庵なら打ち合いには適している。力の差はあるが、それは常識の範囲で、夜神の異次元に比べたらだ。
「庵君と?いいよ。時間の許す範囲ですればいいよ。それじゃ私は先に行ってるね」
微笑んで久慈学生を見る。そして竹刀を元に戻し、ポニーテールを揺らしながら道場を後にする。
黒い軍服の後ろ姿が消えた所で、久慈が口を開く。
「すみません。庵伍長の時間をもらってしまって」
「大丈夫だよ。自分も学生の時は、色んな人に指導してもらったし、稽古に付き合ってもらったりしたから」
「ありがとうございます。早速お願いしてもいいですか?」
「もちろん!こちらこそ宜しくお願いします」
道場に威勢のいい声と、竹刀の「パ━━ン!」と打ち付ける音が響く。
「何で、自分に打ち合いを頼んだんですか?」
「夜神大佐に打ち合いをしてもらうのは凄く嬉しいです。けどやっぱり差がありすぎるせいか、自分の実力がどれほどあるか分からないので・・・・・すみません。庵先輩」
「いいよ。その気分になるのは凄く分かるよ。自分もそうだったし」
すると動きが止まり、久慈学生は庵に近づく
「庵先輩、夜神大佐は帝國に行って帰ってきたんですよね?」
「久慈学生!事実だけど、けして夜神大佐の前では話してはいけない。今でもそのせいで苦しんでいるんだ」
気絶するまで抱いてしまうのは、反省してしまう点だか、眠っているときに時々うなされている。
皇帝・・・・・
食べるから・・・・・
爪・・・・・
うなされながら時々呟く言葉には理解出来ないが、どれも帝国で受けた何かしらの事だと分かる。
特に、皇帝から受けた仕打ちの事を考えると、沸々と怒りがこみ上げる。
助け出した時に見た、おびただしい数の噛み傷、赤い鬱血の跡。陵辱されたのはあきらかに分かる跡。
病室で見せた、泣いて謝る姿は今でも鮮明に覚えている。二度とそんな姿をさせないために、庵は力をつけて夜神に思いを伝えたのだ。
「約束して欲しい。絶対に言わないこと。第一室の皆はその事を十分に理解しているから何一つ言わない。もちろん久慈学生も今は第一室の一員だから」
「分かってます。言いませんよ。庵先輩・・・・所でもう一つとんでもない噂があるんですが・・・・・」
ニッコリ満面の笑みで聞いてくる久慈学生に、庵は何かを感じた。見えないが悪魔の羽と尻尾が見えてくる。
「なんだよ・・・・その満面の笑顔は」
「夜神大佐と仲良く、ラーメン屋でご飯食べていたと多数の目撃証言があります。そしてその後も・・・・言い逃れは出来ません!!付き合っているんですよね?庵先輩!!」
だからなのか!!最近、嫉妬と嫉妬と嫉妬との目線や、「呪ってやる!」と通りすがる時にボソッと言われる言葉、付き合っているのがバレたと思っていたが、更に上を行く。ホテルに入っていったのまでバレている。
時間の問題だとは思っていたが、まさかのこれか・・・・・
嘘を言っても仕方がないし、いつかは知られる事だと思っていた。
「・・・・・・どうせ知られるのも時間の問題だとは思っていたけど早かった。そうだよ、付き合っているよ。何か文句あるか?」
「全然文句ありません。お似合いだと思います。他の人達は知りませんが」
更に清々しい笑顔で久慈は続ける。
「周りに負けないで下さい!応援してますよ!!ちなみにどっちから告ったんですか?」
「お前、遠慮と言う言葉を知らんのか?それ以上は答えない!想像で補え!」
これ以上、久慈の顔を見ていると墓穴を掘りそうだと危惧した庵は「着替える」と一言残して道場を出ようする。
「ちょ、先輩?減るもんじゃないし、いいじゃないですか~なら夜神大佐に確認すればいいですか?」
ピタッと足が止まる。
今、なんと言った?「夜神大佐に確認?」死ぬぞ久慈!!
「絶対、やめろ!!死ぬぞ!いやマジで。冗談抜きで!七海中佐の二の舞いになるぞ」
「その時は彼氏なんですから止めてくださいよ。七海中佐の二の舞いとは?」
「俺が今受けている、仕打ちの倍の事を七海中佐は受けている。別名「壁と床と親友」と言う名の「飛ばして、壁や床に叩きつける」行為だ」
見ているだけで寒気がする。あんな仕打ち俺は絶対嫌だ。
七海中佐はすでに何度も経験しているが、懲りずに繰り返す。マゾか?マゾなのか?
庵の真剣な声に久慈は「本当に大変な事なんだ」と理解する。
「わかりましたよ。その代わりネタ提供宜しくです。庵伍長?」
してやったりの顔で久慈は庵を見る。庵も「しまった!」となったが後の祭りだと悟り、盛大なため息をする。
「答えられる範囲であれば・・・・・」
「ヤッター!ありがとうございます。では早速ですが・・・・・」
久慈は答えられるギリギリのラインで質問する。
そして、庵はそれに半泣きで、答えるしかなかった。
質問一つ一つが本当にギリギリで答えられものばかりなのだ。
庵は悟った。ある意味、出来の良い後輩は持つものではないと。
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