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視線 前編
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あの夜から、一日が経った。
けれど、私の時間はあの瞬間で止まっているようだった。
厨房で鍋の火を見ていても、庭で洗濯物を干していても、ご主人様の顔が離れなかった。
録画を提出したときの無表情な横顔。
赤いランプの向こうで、自分の淫らな姿を再生されるのを見ていたときの、あの視線。
ご主人様は、それについて何も言わなかった。
いつものように紅茶を飲み、書類に目を通し、わたしを軽く頷きで下がらせた。
だからこそ、余計に苦しかった。
何も言われないまま、あんなものを渡してしまった。
あの姿を、声を、恥ずかしい喘ぎも、すべて、すべて――
「……っ」
下腹の奥が、きゅっと疼く。
恥ずかしい。思い出すだけで、死んでしまいたくなるほどに。
けれど、それと同じくらい――また、見てほしいと思ってしまう自分がいた。
私は、ご主人様に「見られたこと」に、興奮していた。
あの夜、達した瞬間の快感は、自分ひとりでは到底得られない深さがあった。
あの赤い光に見守られながら、自分を晒す行為に――私は、悦びを感じていた。
それが、いけないことだと知りながらも。
そして、今夜。
ふたたび、呼び出された。
夕暮れどき。長い廊下の奥にある、ご主人様の私室。
無言で扉を開けたあの人の顔を見た瞬間、私はまた、あの夜と同じ鼓動を思い出していた。
「入れ」
短く、低い声。
私は一礼し、足音を立てぬよう部屋に入る。
以前にも増して、室内の空気は濃く、湿っていた。
薄暗い照明の中、中央には見慣れない椅子が置かれていた。
黒革張りで、座面は広く、脚を開くような形で足置きが両脇に張り出している。
それが何のためのものか、一目で理解してしまった。
「昨日の録画――悪くなかった」
ご主人様は、椅子の背後に立ったまま、静かに言った。
私は息を飲んだ。
初めて評価らしいものを口にされたのに、それが褒め言葉か、冷たい嘲笑なのか、判別がつかない。
「だが、録画では不十分だ。次は――私の目の前で、やってみせろ」
世界が、一瞬止まった。
「……っ、ご主人様……それは……」
震える声しか出なかった。
録画はまだ距離があった。赤いランプを見つめることで、見られているという錯覚の中に逃げ場があった。
けれど今度は、逃げられない。
この場で、目の前で、ご主人様に、わたしのすべてを見せる――
「拒むのか?」
その言葉に、ひくっと喉が鳴った。
「……いえ。……承知いたしました」
わたしは、首を垂れた。
心臓が、早鐘のように鳴っていた。
怖い。恥ずかしい。けれど――感じてしまっている。
ご主人様の命令に従い、目の前で、自慰をする。
この身を晒し、喘ぎ、濡れ、達する姿を――見ていただく。
それは、恐怖でも、屈辱でもなかった。
選ばれたという、悦びだった。
* * *
脚が、震えていた。
この椅子に座ることが、ただの命令ではないことは、見ればすぐにわかった。
脚を自然と開かせるように設計された座面。
両脇には、足を乗せるための台が左右に伸びている。
まるで、女性の身体をもっとも無防備な形に晒すためだけに作られた、淫靡な器具。
「座れ」
その一言に、思考が止まる。
私は命じられるまま、スカートを整えながら慎重に腰を下ろした。
革張りの座面はひんやりとしていて、汗ばむ太腿にぴたりと吸いついた。
背もたれに凭れると、自然と両脚が開き、台の上に乗せることを強要される形になる。
「見せろ。昨日より、ずっと近い距離でな」
ご主人様の声は静かだった。
けれど、その響きには、有無を言わせぬ支配が込められていた。
「上着は着たまま。下だけを脱げ。……その姿のまま、淫らになってみせろ」
なまじ服をすべて脱ぐよりも、制服のまま下半身だけを曝け出すほうが、よほど羞恥心を煽られる。
それをご主人様は、知っていて命じているのだ。
私は震える手でスカートをたくし上げ、下着に指をかける。
その指が、すでにかすかに濡れていたことに気づいて、息を詰めた。
――もう、感じている。視線を浴びているだけで。
腰を浮かせ、下着を太腿、膝、足元へとゆっくりとずらしていく。
恥ずかしさに耐えきれず目を逸らした瞬間、ご主人様が低く言った。
「前を見ろ。……私の目を避けるな」
ひくりと喉が震えた。
私の脚のあいだを、あの方が見つめている。
いや、それだけではない。
私の羞恥の色、濡れ具合、指の動き、喘ぎのひとつひとつを――すべて、この眼差しが捉えている。
「始めろ」
私は、脚を開いたまま指先を秘部にそっと当てた。
昨夜、一人で触れたときよりも、ずっと敏感になっていた。
「……ふっ……ぁ、ん……」
小さく吐息が漏れる。
誰にも見られたことのない場所を、ご主人様に見せつけながら、自分の指で慰める。
それが、こんなにも――熱くて、甘くて、たまらないなんて。
「昨日より濡れているな。……すでに、見られる悦びを知ったか」
その冷たい声に、下腹がびくりと跳ねた。
わたしの秘裂は、ご主人様の言う通り、蜜で濡れそぼっていた。
視線が絡みつくたび、神経がそこだけ熱を帯びていく。
「もっと奥を、撫でろ。……自分が、どれほど淫らかを理解させてやる」
命じられるままに、私は中指を差し入れる。
ぬるりとした熱が絡みつき、快感が背骨を這い上がってくる。
革張りの椅子に、くちゅ、くちゅといやらしい音が響きはじめる。
「ご主人様……やだ……見ないで……っ、でも……っ、見て……!」
矛盾する言葉が、喘ぎの合間にこぼれた。
羞恥と悦楽が入り混じり、頭の中が真っ白になる。
ご主人様は、椅子の横までゆっくりと歩み寄ってきた。
私の脚のあいだ、蜜に濡れた秘裂を、至近距離で覗き込む。
「よく見せろ。……達する瞬間、私の目だけを見ていろ」
命じられた瞬間、私の身体は――限界を超えそうだった。
けれど、私の時間はあの瞬間で止まっているようだった。
厨房で鍋の火を見ていても、庭で洗濯物を干していても、ご主人様の顔が離れなかった。
録画を提出したときの無表情な横顔。
赤いランプの向こうで、自分の淫らな姿を再生されるのを見ていたときの、あの視線。
ご主人様は、それについて何も言わなかった。
いつものように紅茶を飲み、書類に目を通し、わたしを軽く頷きで下がらせた。
だからこそ、余計に苦しかった。
何も言われないまま、あんなものを渡してしまった。
あの姿を、声を、恥ずかしい喘ぎも、すべて、すべて――
「……っ」
下腹の奥が、きゅっと疼く。
恥ずかしい。思い出すだけで、死んでしまいたくなるほどに。
けれど、それと同じくらい――また、見てほしいと思ってしまう自分がいた。
私は、ご主人様に「見られたこと」に、興奮していた。
あの夜、達した瞬間の快感は、自分ひとりでは到底得られない深さがあった。
あの赤い光に見守られながら、自分を晒す行為に――私は、悦びを感じていた。
それが、いけないことだと知りながらも。
そして、今夜。
ふたたび、呼び出された。
夕暮れどき。長い廊下の奥にある、ご主人様の私室。
無言で扉を開けたあの人の顔を見た瞬間、私はまた、あの夜と同じ鼓動を思い出していた。
「入れ」
短く、低い声。
私は一礼し、足音を立てぬよう部屋に入る。
以前にも増して、室内の空気は濃く、湿っていた。
薄暗い照明の中、中央には見慣れない椅子が置かれていた。
黒革張りで、座面は広く、脚を開くような形で足置きが両脇に張り出している。
それが何のためのものか、一目で理解してしまった。
「昨日の録画――悪くなかった」
ご主人様は、椅子の背後に立ったまま、静かに言った。
私は息を飲んだ。
初めて評価らしいものを口にされたのに、それが褒め言葉か、冷たい嘲笑なのか、判別がつかない。
「だが、録画では不十分だ。次は――私の目の前で、やってみせろ」
世界が、一瞬止まった。
「……っ、ご主人様……それは……」
震える声しか出なかった。
録画はまだ距離があった。赤いランプを見つめることで、見られているという錯覚の中に逃げ場があった。
けれど今度は、逃げられない。
この場で、目の前で、ご主人様に、わたしのすべてを見せる――
「拒むのか?」
その言葉に、ひくっと喉が鳴った。
「……いえ。……承知いたしました」
わたしは、首を垂れた。
心臓が、早鐘のように鳴っていた。
怖い。恥ずかしい。けれど――感じてしまっている。
ご主人様の命令に従い、目の前で、自慰をする。
この身を晒し、喘ぎ、濡れ、達する姿を――見ていただく。
それは、恐怖でも、屈辱でもなかった。
選ばれたという、悦びだった。
* * *
脚が、震えていた。
この椅子に座ることが、ただの命令ではないことは、見ればすぐにわかった。
脚を自然と開かせるように設計された座面。
両脇には、足を乗せるための台が左右に伸びている。
まるで、女性の身体をもっとも無防備な形に晒すためだけに作られた、淫靡な器具。
「座れ」
その一言に、思考が止まる。
私は命じられるまま、スカートを整えながら慎重に腰を下ろした。
革張りの座面はひんやりとしていて、汗ばむ太腿にぴたりと吸いついた。
背もたれに凭れると、自然と両脚が開き、台の上に乗せることを強要される形になる。
「見せろ。昨日より、ずっと近い距離でな」
ご主人様の声は静かだった。
けれど、その響きには、有無を言わせぬ支配が込められていた。
「上着は着たまま。下だけを脱げ。……その姿のまま、淫らになってみせろ」
なまじ服をすべて脱ぐよりも、制服のまま下半身だけを曝け出すほうが、よほど羞恥心を煽られる。
それをご主人様は、知っていて命じているのだ。
私は震える手でスカートをたくし上げ、下着に指をかける。
その指が、すでにかすかに濡れていたことに気づいて、息を詰めた。
――もう、感じている。視線を浴びているだけで。
腰を浮かせ、下着を太腿、膝、足元へとゆっくりとずらしていく。
恥ずかしさに耐えきれず目を逸らした瞬間、ご主人様が低く言った。
「前を見ろ。……私の目を避けるな」
ひくりと喉が震えた。
私の脚のあいだを、あの方が見つめている。
いや、それだけではない。
私の羞恥の色、濡れ具合、指の動き、喘ぎのひとつひとつを――すべて、この眼差しが捉えている。
「始めろ」
私は、脚を開いたまま指先を秘部にそっと当てた。
昨夜、一人で触れたときよりも、ずっと敏感になっていた。
「……ふっ……ぁ、ん……」
小さく吐息が漏れる。
誰にも見られたことのない場所を、ご主人様に見せつけながら、自分の指で慰める。
それが、こんなにも――熱くて、甘くて、たまらないなんて。
「昨日より濡れているな。……すでに、見られる悦びを知ったか」
その冷たい声に、下腹がびくりと跳ねた。
わたしの秘裂は、ご主人様の言う通り、蜜で濡れそぼっていた。
視線が絡みつくたび、神経がそこだけ熱を帯びていく。
「もっと奥を、撫でろ。……自分が、どれほど淫らかを理解させてやる」
命じられるままに、私は中指を差し入れる。
ぬるりとした熱が絡みつき、快感が背骨を這い上がってくる。
革張りの椅子に、くちゅ、くちゅといやらしい音が響きはじめる。
「ご主人様……やだ……見ないで……っ、でも……っ、見て……!」
矛盾する言葉が、喘ぎの合間にこぼれた。
羞恥と悦楽が入り混じり、頭の中が真っ白になる。
ご主人様は、椅子の横までゆっくりと歩み寄ってきた。
私の脚のあいだ、蜜に濡れた秘裂を、至近距離で覗き込む。
「よく見せろ。……達する瞬間、私の目だけを見ていろ」
命じられた瞬間、私の身体は――限界を超えそうだった。
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