【R18】婚約破棄された令嬢は、隣国の王に奪われて夜ごと甘く抱かれています

いろは杏⛄️

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夜の王宮、甘い支配 後編

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 王の指先が、そっと伸びてくる。

 ミレイユが何も言えないまま、レオンハルトの手が彼女の左手を取った。
 大きな掌に包まれた自分の手が、まるで熱に溶けていくようにじんわりと痺れていく。

 視線が重なった。
 金の双眸に映るのは、きっと自分だけ――それが怖くて、けれどどうしようもなく嬉しい。

 

「また……魔力が、反応している」

 

 彼が囁くと同時に、彼女の指先からほのかに金の燐光が瞬いた。
 痛くも痒くもない、けれど確かに体の奥が震えるような感覚。
 まるで、そこに新しい命が芽吹くような、未体験の快楽の予兆。

 

「お前の魔力は、心と体が同調したときにこそ、真価を発揮する」

 彼の声は低く、意図的に喉の奥を響かせるように甘い。
 語る言葉が魔法のように脳へと滑り込んでくる。

 

「それは、ただの能力じゃない。感情と快楽、そして欲望に呼応する力だ」

 

 指先が、そっと手の甲から手首へと滑っていく。
 細い手首をなぞる指の動きに合わせて、ミレイユの呼吸がわずかに早まる。

 彼の指は皮膚の上をなぞるだけ。
 けれど、それだけで全身が熱を帯び、奥底に小さな疼きが灯る。

 

「……わたくしは、ただ拾われただけの女で……」

「違う。俺が見抜いた。お前が誰にも知られなかったまま眠っていた力を持っていたから、欲しくなった」

 

 声が、耳元で響く。
 瞬間、レオンの手が彼女のうなじに触れた。
 髪をすくい、首筋をさらすように払うと、そこに唇がふれる。

 

「――っ」

 

 くすぐったさと、熱と、なにより鋭い快感。
 思わず身体がびくりと震えた。

 首筋から耳裏、耳の軟骨の縁まで、彼の唇と息が這うように追いかけてくる。
 その間にも指先は背筋へと流れ、薄布の上から腰をなぞる。

 まるで、彼女という楽器の鍵盤を、確かめながら押さえていくように。
 ミレイユは、知らぬうちに声を喉に飲み込み、目を強く閉じていた。

 

「嫌か?」

「……わからない」

 

 正直だった。拒絶ではない。けれど、全てを受け入れる覚悟もまだなかった。
 なのに、体はこうして熱を帯びて、反応している。

 

「それでいい。俺はお前に、無理やりをする気はない。
 ただ……お前が本当に求めたとき、そのときこそ、全てをくれてやる」

 

 ふっと、耳朶に唇が触れた。
 それだけで、足元がほどけるような錯覚に襲われる。

 

「……次は、お前の方から、俺を欲しがれ。な?」

 

 囁きは、まるで呪文のようだった。
 甘く、柔らかく、けれど命令に似た強さで心に食い込んでくる。

 

 そして、彼の体温がふっと離れる。

 

 レオンハルトは椅子から立ち上がり、卓に残された蜂蜜酒の杯を一つ、手に取る。
 再びミレイユの方を見て、小さく微笑む。

 

「今夜は、ここまでだ」

 

 そうして、彼は扉へと向かった。
 まるで、自ら火を点けておきながら、あっさりと部屋を後にするように。

 

 残されたミレイユは、ただ息を吐き、肩を抱くようにして胸を押さえた。

 

 ――おかしい。
 何もされていない。指でなぞられただけ。
 なのに、なぜ、これほどまでに――

 

 肌の内側が火照っている。
 脈打つ感覚は、なぜか下腹部の奥にまで広がっていて、衣擦れさえ敏感に感じる。
 触れた場所にまだ彼の熱が残っている気がして、思わず手で覆ってしまう。

 

「……はぁ……」

 

 息を吐くと、喉が震えた。
 まるで、誰にも見せたことのない自分の一部が、あの人にだけ晒されたような――そんな羞恥と快感。

 

 どこか濡れたような感覚が、脚の内側に広がっていく。
 それを確認することは、あまりに恥ずかしくてできなかった。
 ただ、今夜という夜が、彼女の中の何かを大きく変えてしまったことだけは確かだった。

 

   ◇ ◇ ◇

 

 夜が更けても、眠りは浅かった。

 ひとり、寝台に横たわるミレイユは、目を閉じても、彼の声と指先の感触が脳裏をよぎる。

 

 レオンハルトの金の目。
 あの瞳に見つめられた瞬間、自分は誰かに必要とされていると初めて感じた。

 

 体が反応したのは、魔力のせいだけではない。
 あの人に抱きしめられたいと――そう思ってしまった自分の本音。

 

 けれど、それはあまりにも恐ろしくて、認めてしまえば壊れてしまいそうで。

 

 唇を噛む。

 もう、戻れない。

 

「次は、私の方から……?」

 

 それが意味するものは、痛いほどわかっている。
 けれど――

 

「……こわい。でも……」

 

 ベッドの上で、薄く開いた手のひらを見つめる。
 そこに、彼の熱がまだある気がした。

 

 指先を、静かに胸元へと滑らせる。
 レース越しの柔らかな膨らみをなぞると、そこにわずかな疼きが宿る。

 

 ――あの人に触れられたら、どんなに心地いいだろう。
 ――私の中を、どう震わせてくれるのだろう。

 

 知らぬはずの情景を、想像するだけで息が詰まる。
 けれど、抗えない。

 

 官能と羞恥の狭間で震える自分を抱きしめながら、ミレイユはそっと目を閉じた。

 

 そして、決意する。

 

 ――次に、彼の手が触れたとき。
 私は、もう拒まない。
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