うちの母と心友♀がいつのまにかデキてる

黒巻雷鳴

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第11話 世界でイチバン神ってる

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「ただいまぁー」
「お帰りなさい、アイちゃん♪」

 玄関ドア横にあるキッチンでは、溶き卵ともやしがフライパンのなかでジュージューとナンプラーの味付けで炒められていた。

 遊香ゆかがうちで療養していたのは一日だけで、その翌日には素っ気なく帰ってしまった。
 お母さんは、なにか不快な思いをさせたんじゃないかってショックを受けていたけれど、「家でやることがあるから帰るだけ」って、そう言い残してから学校にもずっと来ていない。
 来ていないといえば、例の三年生も姿を見せてはいなくって、どうやら不登校を理由に中退するらしいと、噂が下級生にまで広まっていた。

 シャワーを済ませてから、スエット上下の部屋着に着替える。タオルドライもほどほどに、濡れ髪のまま夕食が並ぶ座卓の前にあぐらをかいてすわれば、先に食べ始めていたお母さんが急に声を上げた。

「アイちゃん、見て! ゆかりんがテレビに映ってる!」
「えっ、マジで!? なにして捕まったのよ!?」

 それは、報道番組内の特集だった。
 アメリカで開催されているeスポーツの世界大会で、日本人プレイヤーの、しかも、高校生の少女がソロ部門で優勝したという内容だ。
 もう説明は要らないだろう。
 その女子高校生こそ、遊香だった。

「ねえアイちゃん、これって……テレビゲームよね?」
「え? あー、うん。わたしも詳しくは知らないけど、スポーツみたいに競い合うゲーム大会のことだったかな……つか、遊香って、そんなにゲームが上手だったんだ……」

 どこかの競技場の巨大なスクリーンに、見たこともないゲーム画面が映しだされていた。
 そして、小さい枠の画面には、ヘッドセットをつけた遊香が仏頂面で操作を続けている様子が映されてもいる。
 このゲームは多人数同時プレイらしく、大草原にある廃墟のようなフィールドでは、各プレイヤーたちが放つ銃弾がまさに乱れ撃ちされていて、凄まじい爆発もあちらこちらで起きていた。
 なにがどうスゴいのか、それすらも理解が難しいくらいの毎秒巻き起こる情報量の多さに、最新テクノロジーに疎いわたしたち母娘おやこは、画面酔いしてしまいそうになっていた。

「ねえアイちゃん、これって銃撃戦じゃないの? どうして家を建てているのかしら?」
「うーん……もしかすると、防御用に建ててるんじゃないかな? 見えない相手の攻撃から、自分の身を守るために……とか?」
「ふーん……随分と忙しいのね」

 なんかよくわからないけど、ヘッドセットを外しながら遊香が無表情のまま立ち上り、外国人たちに囲まれて次々とハイタッチやハグを交わしていた。その直後、大きな破裂音が会場全体に響きわたり、金色の紙吹雪と大歓声にも包まれる。
 なんかよくわからないけど、いつのまにか遊香が優勝したみたいだ。わが家のテレビ画面では、外国人解説者の日本語字幕が表示されていた。

『なんてこったい! この無名のニンジャ・ガールは、世界最強の称号と賞金五百万ドルをカミカゼ戦法でモノにしやがったぜ! きっと今夜は、日本中が寿司パーティーだな!』

 たしかに、これはもやし料理を食べてる場合じゃない。わたしの気持ち的には出前を頼みたいところなんだけど、せっかくお母さんが作ってくれた料理を前にして、お寿司を連呼できないしなぁ…………ん? なんか賞金の額、おかしくね?

「ねえアイちゃん、五百万ドルって書いてあったけど、ゆかりんが五百万ドルなの? それとも、五百万ドルがゆかりんなのかしらね?」
「お母さま落ち着いて。賞金が五百万ドルでも、ゆかりんはゆかりんで、五百万ドルがゆかりんなんだから!」

 画面は切り替わって、遊香が日本人女性の番組リポーターに答える。

『ゆかりん選手、優勝おめでとうございます! 日本人初の大偉業ですね!』
『ありがとうございます。まだ実感がわきませんが、この栄光と賞金を日本に残してきた愛する妻と娘に捧げたいです』
『えっ?(もしかして、ペットの名前かな?)』
「ゆかりん……ポッ♡」
「アイツ、まだ結婚してないのに……まあ、五百万ドルだから別にいいけどさ……あはは」

 思わず笑い声が漏れると、今度は画面ごしに、遊香がこちらへ微笑ほほえみをみせてくれていた。

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