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第2幕
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ミニリュックを探そうにも、見当がまるでつかない。
そもそも、残りっていくつあるんだろう。人数分あったとしても、横取りされては意味がない。
陽は高いから、犯人もまだ姿を現さないはず。気長にじっくり探そうと別の建物へ入ろうとした時、そこがさっきまで監禁されていた場所だとすぐに気づいた。
地面に広がる白い壁や天井から吊るされたプロジェクタースクリーンはそのままなのに、ヤスカちゃんの死体だけがきれいに消えていた。きっと、榊さんの死体も今は降ろされてどこかへ運ばれているはずだ。
(犯人の目的は、やっぱりわたしたちの身体なのかな……?)
監視カメラがどこにあるのか見渡してみたけれど、ここのだけは全然わからなかった。
危害を直接加えてこなくても、常に見られているのは間違いない。
生存者の、わたしたちの行動を記録している。そして、その動画を繰り返し鑑賞して楽しんでもいる。根拠はなくても悪趣味な犯人のことだから、きっとそうしているはずだ。
この場所には用がないけれど、もしかしたらと思い、念のためミニリュックを探してみる。
ゲームのスタート地点にアイテムが落ちているのは珍しくないし、少しでも可能性があるなら──ほかになにか見つかるかもしれないから、調べてみる価値はあるだろう。
穴のあいたトタンの屋根から差し込む光が、廃墟と化した静寂世界を厳かに照らす。
錆だらけの鉄骨構造に響くのは、わたしの足音だけ。
壁際に転がっている鉄屑はどれもガラクタばかりで、武器として持ち運ぶには大きすぎるし、なにかの役に立ちそうにもなかった。
土埃と水のすえた嫌なにおいに慣れかけた頃、わたしのお腹がクウンと仔犬のように鳴いた。
こんな非常事態でも空腹を感じられるのは健康的で良いことなんだろうけど、我ながらなんとも言えない情けなさを感じてしまう。
──生きて帰らなきゃ。
今夜の夕飯の献立を強引に考え、孤独と死への恐怖心をなんとか拭い去ろうと努める。
こんな最悪な日の終わりに食べるなら、ひーちゃんの大好きなオムライスを作って満面の笑顔を見て癒されたい。あっ、その前に先ず、一緒にお風呂に入って汗と汚れを落とさなきゃ。シャンプーの詰め替えも忘れずにしとかないと。
結局、スタート地点では特になにも見つからなかった。
落胆すらできないほど疲れてもいたわたしに、あの女の幽霊が話しかけてくる。
「ウフフ、探し物は見つかったかしら? あっちは見つけたみたいよ」
建物の出入口に、ピンク色のミニリュックを右肩にかけた唯織さんが立っていた。
そもそも、残りっていくつあるんだろう。人数分あったとしても、横取りされては意味がない。
陽は高いから、犯人もまだ姿を現さないはず。気長にじっくり探そうと別の建物へ入ろうとした時、そこがさっきまで監禁されていた場所だとすぐに気づいた。
地面に広がる白い壁や天井から吊るされたプロジェクタースクリーンはそのままなのに、ヤスカちゃんの死体だけがきれいに消えていた。きっと、榊さんの死体も今は降ろされてどこかへ運ばれているはずだ。
(犯人の目的は、やっぱりわたしたちの身体なのかな……?)
監視カメラがどこにあるのか見渡してみたけれど、ここのだけは全然わからなかった。
危害を直接加えてこなくても、常に見られているのは間違いない。
生存者の、わたしたちの行動を記録している。そして、その動画を繰り返し鑑賞して楽しんでもいる。根拠はなくても悪趣味な犯人のことだから、きっとそうしているはずだ。
この場所には用がないけれど、もしかしたらと思い、念のためミニリュックを探してみる。
ゲームのスタート地点にアイテムが落ちているのは珍しくないし、少しでも可能性があるなら──ほかになにか見つかるかもしれないから、調べてみる価値はあるだろう。
穴のあいたトタンの屋根から差し込む光が、廃墟と化した静寂世界を厳かに照らす。
錆だらけの鉄骨構造に響くのは、わたしの足音だけ。
壁際に転がっている鉄屑はどれもガラクタばかりで、武器として持ち運ぶには大きすぎるし、なにかの役に立ちそうにもなかった。
土埃と水のすえた嫌なにおいに慣れかけた頃、わたしのお腹がクウンと仔犬のように鳴いた。
こんな非常事態でも空腹を感じられるのは健康的で良いことなんだろうけど、我ながらなんとも言えない情けなさを感じてしまう。
──生きて帰らなきゃ。
今夜の夕飯の献立を強引に考え、孤独と死への恐怖心をなんとか拭い去ろうと努める。
こんな最悪な日の終わりに食べるなら、ひーちゃんの大好きなオムライスを作って満面の笑顔を見て癒されたい。あっ、その前に先ず、一緒にお風呂に入って汗と汚れを落とさなきゃ。シャンプーの詰め替えも忘れずにしとかないと。
結局、スタート地点では特になにも見つからなかった。
落胆すらできないほど疲れてもいたわたしに、あの女の幽霊が話しかけてくる。
「ウフフ、探し物は見つかったかしら? あっちは見つけたみたいよ」
建物の出入口に、ピンク色のミニリュックを右肩にかけた唯織さんが立っていた。
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