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「その場合は僕の不戦勝として、貴女を美味しく頂きますよ。あぁ、あと……僕の温情を蹴って逃げようとなさる場合、ペナルティも用意してありますから、相応の覚悟もしておいてくださいね」

 最後に付け加えられたのは明確な脅しである。青褪めながらコクコクと頷けば、彼は満足そうに眼を細める。
 後ろ手に拘束されている現状で、逃げ切るのは困難だろう。つまり彼に問答無用で抱かれたくなければ『ゲーム』に参加しなければならない。

「……ゲームの詳しいルールは?」
「この小瓶の中身を貴女が飲み切り、そして昼過ぎまでにフィオナが僕が欲しいと求めなければ貴女の勝ちとしましょうか。もちろんゲームの間、僕からフィオナに触れるような無粋な真似は致しません。貴女はただ小瓶の中身を飲み切り、昼過ぎまでに僕を求めない。至ってシンプルなルールだと思いませんか?」


 
 胸ポケットから彼が出したのはガラス瓶だ。わたしの掌に収まるほどの大きさの瓶はほとんど細工も凝らされておらず、至ってシンプルなデザインである。しかし、中身の液体は毒々しいピンク色で、禍々しさすら感じられた。



「中身はなんです?」
「何って……ただの媚薬ですよ」


 さらりと発言されたとんでもないことに嫌だとかぶりを振る。

「飲みたくありません」
「では僕の不戦勝ということでよろしいですね?」


 瓶の蓋を開けられ、鼻先の近くまで持って来られると人工的な甘い匂いが鼻を擽る。
 たじろぐわたしに彼は額同士をくっつけ、そしてそのまま流れるような動作で衣服を脱がそうとした。エドモンドの胸を押して拒みたいのに、後ろ手に拘束されているせいで、わたしの思惑とは反対に胸を押し付けて、彼が脱がせやすい体勢になる。
 随分と協力的だ、と意地悪く耳元で囁かれると自分の愚かさに涙が滲む。あっという間に上のボタンを二つ外されたところで、わたしはとうとう白旗を上げてしまう。
 


「エドモンド。止めてっ!」
「先程僕はゲームに参加しなければ貴女を美味しく頂くと言ったじゃないですか。貴女は媚薬を飲むことを拒み、ゲームに参加しないのでしょう? ならば、僕の不戦勝だ」
「わかり、ました。ちゃんと飲みますから、だから……止めてください」


 降伏を宣言したわたしに彼は柔らかく微笑む。けれどその笑みはどこか翳りを帯びているように見えたのはわたしの気のせいなのだろうか。
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