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 想いを知られているとはいえ、自分の好きな気持ちを直接声に乗せて伝えるのは恥ずかしい。けれど、たとえ迷惑だと言われても一度くらいは自分の想いに素直になりたかった。


「……エドモンド?」


 すっかり固まってしまったエドモンドを呼び掛ける。彼は勢い良くわたしを剥がし、今にも射殺さんばかりにわたしを睨み付けた。

「どうしてそんなに残酷な嘘を吐くのです?」
「嘘なんて吐いていません……」
「だ、だって貴女が想いを寄せているのは、シリウス殿下なのでしょう!」
「どうしてそこに殿下が出てくるんです?」
「だって殿下と話す時の貴女はよく頬を染めて、恋する乙女の顔になっていたじゃないですか」
「それは多分……エドモンドばかり見ていてはすぐにわたしが誰に恋をしているか分かってしまうよ、と殿下が仰るものですらなんだか恥ずかしくて……」


 正直に自分の気持ちを吐露するのは、ひどく緊張する。いつもの習慣で俯きそうになるのをなんとか堪え、唇を噛んでエドモンドを見据える。彼の反応を見るのが怖い。しかし彼はわたしの予想とは反対にぶわりと顔を紅潮させる。

「エドモンド? 耳まで赤いけれど」
「言わないで! だって、その、不意打ちじゃないか」
「えっと。不意打ちとは、なんのことですか?」


 わたしの想いなんてとっくに知っていたはずだ。それなのに今更何を驚くことがあるというのか。


「……僕はずっとフィオナが殿下のことを好いていると思っていたんです」
「……えっ」
「だって僕と話す時はあからさまに俯いて、避けようともしていたでしょう? そんなにも僕のことが嫌いだと思っていたんです」
「それは、その。わたしはどうにも分かりやすいみたいだから、恥ずかしくて……」
「……分かりやすくなんてなかったです」
「それなら良かった」


 自分の努力は確かに実っていたのだ。心から安堵すると、彼は恨みがましい視線を送る。

「ちっとも良くないです! 僕はずっと好きな人に避けられていたのですよ」
「……え?」
「僕はフィオナが好きだったんです」


 抗議するように勢いよく捲し立てられるも、だんだんと彼の声は小さくなり、顔も伏せられる。
 しかし彼の想いは確かにわたしの耳に届いた。


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