光と瘴気の境界で

天気

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レクナ村

レクナ村

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昼過ぎの陽光が山影を抜け、
小さなレクナ村の畑と木造の家々を温かく照らしていた。

騎士団が村の入り口に姿を見せると、
村の人々がぽつぽつと家から出てきて、
珍しい訪問客に視線を集めた。

アルバートの馬が止まると、
彼はゆっくりとはるを抱え下ろす。
はるは深くフードで顔を隠し、
外套に包まれたまま大きな腕に支えられていた。

「これはこれは……遠いところをようこそ、団長殿。
村長のタッドですぞ」

白い髭をふわりと揺らしながら、
六十を過ぎた小柄な村長・タッドが頭を下げる。
そのすぐ後ろに村人の男二人が並び、案内役として歩み出た。

「誰だろう、怪我人か?」

「騎士様に抱えられてるなんて、よっぽどだね」

家々の間に並びはじめた村人たちのざわめきが、
はるの背後で小さく波のように揺れる。

その中で、幼い子どもが母親の袖を引いた。

「ねぇ、あの人……顔が見えないよ。
騎士様が抱っこしてるの、だれ?」

「こらっ、指をさすのはやめなさい」

母親は慌てて止めるが、
周りも興味深そうに目を向けていた。

アルバートは一瞥もくれず、
はるの身体を支えたまま村長宅へと足を進める。
ルートも自然な動きで人の目線を遮るように横を歩き、
騎士たちは粛々と後に続いた。


***


村長宅は質素だがよく手入れされた家で、
案内された客間には広めのベッドと、
明かりを取り入れるのに十分な窓があった。

「ここを使ってくだされ。
体の弱い者がおると聞いたのでな」

「助かる」

アルバートは短く礼を言い、
はるをベッドにそっと降ろした。

フードが外れ、
外の光が届かない薄暗い部屋に、
はるの黒髪がさらりと落ちる。

すぐにセナが近づき、
軽く肩や腕に触れ、体温と呼吸を確かめる。

「うん、悪くねぇな。
むしろよく持った方だ。馬は初めてだったろ?」

はるはこくりと頷いた。
足腰がじんわり重く、
立っていれば震えが来そうな疲労が溜まっている。

アルバートがベッドのそばに屈み、
穏やかな声で言う。

「少し休んでいろ。
村長から話を聞いてくる」

ルートも軽く手を振り、
少しだけ心配そうに目を細める。

「俺はまた薬草なんか整理して来るからよ。ゆっくり寝てな。」

二人が部屋から出て行くと、
客間は静けさに包まれた。

はるはゆっくりと体を横たえた。
腰から太ももにかけて芯のような疲労はあるが、
激しい痛みではない。

(……少し寝れば……大丈夫……)

まぶたを閉じた瞬間、
全身の力がふっと抜ける。

気がつけば、
周囲の音も、村長宅の気配も遠のいていき……

はるは深い眠りに落ちていた。
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