光と瘴気の境界で

天気

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レクナ村

レクナ村4

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湯の温もりをまだ皮膚の奥に感じたまま、
はるはアルバートに支えられて客間へ戻った。

湯冷めしないよう、厚手のブランケットがすでに敷かれている。
アルバートははるをそっと抱きかかえ、
ベッドの上へゆっくり横にさせた。

「無理に起き上がるな。
傷んだ体は、休めば休むほど早く治る」

低く静かな声。
その調子は命令というより、
安心を与えるためのものだった。

はるは小さく頷く。

「……ありがとうございます、アルバートさん」

アルバートの眉がわずかに動く。

「礼はいらん。
もう休め。何かあればすぐ呼べばいい」

そう言い残すと、
彼は部屋のランプを一段だけ落とし、
扉を静かに閉じて出て行った。



客間にひとり残されると、
はるは胸の奥がぽつんと空いたような気持ちになった。

(……寝れない)

昼間の移動のあいだ眠ってしまったせいか、
まぶたは少しも重くならない。

天井を見つめながら、思考がゆっくりと渦を巻きはじめる。

(どうして僕……ここに来たんだろう)

あのトラックの衝撃。
視界が白くはじけた瞬間。

気づけば、瘴気の森の奥で倒れていて――
知らない世界、知らない人たち。

(日本……じゃない。
魔物がいて、騎士団がいて……)

この世界が危険に満ちていることは、
ここ数日ではっきりわかった。

けれど、それ以上に――
自分が「どこにも属していない」という事実が、
胸を締めつけていた。

(……帰れないのかな。家に)

そんな不安が波のように押し寄せてくる。



そのとき――
カァァン カァァン カァァン……! と
夜を切り裂くような鐘の音が鳴り響いた。

はるはびくりと体を震わせる。

(な、なに……!?)

二度、三度と続く、高らかに響く音。
夜を切り裂くように、遠くまで伸びていく。

胸がざわざわと早鐘を打ち、
手のひらがじんと冷たくなる。

(何かあった?こんな夜中に鐘の音なんて…魔物……?)

レクナ村に着く前、
アルバートたちが魔物の討伐に向かうと言っていたことを思い出す。

鐘の音は明らかに、時報なんかではない。
何か「異常事態」を告げるためのものだと、本能が告げていた。

はるはベッドから立ちあがろうと体に力を入れる。
ベッドサイドのテーブルに手をつき立ち上がることに成功するがわずかにふらついた。
ドアまで移動しようと手を離したが、5歩、6歩、歩くのがやっとでなんとかドアまで辿り着く。

そこでドアの向こうが騒がしいことに気づいた。

ドアを少し開け部屋の外を見るとたくさんの村人が避難してきているようだった。

(ど、どうしよう……アルバートさん……?)


その瞬間、ひとつ廊下の足音が近づく――

「はるくん!っと、立ち上がって平気?
ごめんね魔物が村の中に出てきたみたいで、ちょっと出ないといけない。アルバートもセナも1番に向かってる。必ず帰って来るから待っててくれる?」

いつもより真剣な表情のルートに頷く。
頷くことしかできなかった。
後ろから他の騎士に話しかけられたルートは、

「ごめんね、行って来るからね。」

と部屋を後にして行く。

得体の知れない魔物への不安と恐怖でドアに背をつけて座り込んだ。

(どうか…みんな無事でありますように……)









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