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王都
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しおりを挟む夜明け前。
王城の回廊はまだ静まり返り、遠くで衛兵の足音だけが規則正しく響いていた。
客室の大きな天蓋付きのベッドで、はるは小さく身じろぎをする。
「……っ」
胸の奥が、じわりと熱を持つ。
息が浅くなり、夢と現の境が曖昧に溶けていく。
――黒い、闇とも違う“深さ”。
そこに、確かに“何か”がいた。
『怖がらなくていい』
低く、穏やかな声。
だが慈しみよりも、永い時を生きたもの特有の重みが滲んでいる。
『お前が望まぬ限り、私は表には出ない』
「……だれ……?」
か細い声で問うと、黒はわずかに揺れた。
『名はない。
人は私を“黒の君”と呼び、災いと救世の両方に数えた』
はるは胸を押さえる。
「……ぼく、そんなの……」
『知っている』
即答だった。
『お前は、救いたいなどと考えていない。
ただ――誰かが傷つくのが、嫌なだけだ』
図星を突かれ、はるは言葉を失う。
『だからこそ、お前は選ばれた』
黒が、静かに近づく。
『だが覚えておけ。
この城は、お前を守る場所であると同時に――
力を“引き出す”場所でもある』
「……っ」
その瞬間、夢が砕けるように途切れた。
「――る、はるっ」
誰かの声。
はるが跳ねるように目を開くと、薄明るい部屋の中にアルバートが立っていた。
外套も鎧も身につけていない、珍しい姿。
「……アル…?」
声は掠れていたが、意識ははっきりしていく。
アルバートはすぐにベッド脇に膝をつき、額に手を当てる。
「悪夢か?」
「……なの、かな…?でも……」
言いかけて、はるは口を閉ざす。
“黒の君”のことを、どう説明すればいいのかわからなかった。
少し困惑を滲ませるはるにアルバートは深く追及しなかった。
ただ、はるの手を包み込む。
(…アルバートさんの手…大きくて、硬くて…温かいな……)
はるよりも一回りも二回りも大きな逞しい手に
そんなことを考えるはる。
徐々にざわめきも落ち着いて、ぽつりぽつりと
先ほどの夢ともわからない不思議な出来事を話しだす。
「…真っ暗で…知らない、人の声が聞こえたんだ。
『覚えていろ』って、、『この城は、お前を守る場所であると同時に――
力を“引き出す”場所でもある』って……」
静かにはるの話に耳を傾けるアルバート。
「…力って、この間の光の事なのかな…?
どういう事か分からないし、ただの夢かも知れないけど、、なんだか、変な感じがして……」
そっとはるの手を握る手に力が入る。
(はるに、一体何が起こっている……ただの夢だと片付けるには少し胸騒ぎがする。)
「ーーそうか、、
はる。1人で悩まずこうやってまた話してくれるか?」
話しているうちに少しずつ落ち着きを取り戻し、
「うん。…ありがとう」
無意識に入っていた肩の力が、抜けたはるが頷く。
うっすらと窓の外には陽の光が入り始め、
遠くの雲が厚いのか柔らかな陽の光と反し、暗い部分が見えた。
まだまだ早い時間だが、もう一眠りは出来なさそうで
ゆっくりとアルバートに手伝ってもらいながら
繊細な装飾が施された服に着替えた。
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