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本編
491 若者を相手すると、自分も若くなったように錯覚するよな
「どうしましたー?」
場所の確認を行おうと、マップ機能を眼前に表示させると声が聞こえた。
「ん?」
振り返ると、金髪の制服女子がいた。
風に髪がなびく。
なぜか内側だけ明るい紫色で、不思議な髪質だと思った。
着崩された制服が、なんとなくギャルっぽい雰囲気。
当然、この異世界にギャルなんていない。
この女子生徒のセンスが、俺のいた世界のギャルと酷似している。
「いや、職員室どこだっけって思って」
「職員室はそのまま真っ直ぐじゃん?」
方向を指差しながら教えてくれる女子生徒。
ちょうどマップを確認したら、確かにまっすぐだった。
嘘は言われていないので、お礼を述べておく。
「ありがとう」
「あっ、その子ってもしかしてコボルト~!?」
唐突に、目を輝かせてポチに興味を持つ女子生徒。
「……抱っこする?」
「えっ! ヤバッ、良いの!?」
「……どうするポチ?」
「アォン」
仕方ないな、とポチは俺の腕から降りた。
てちてちと歩き、女子生徒の前で万歳。
久しぶりの抱っこどうぞ万歳だ! かわいい!
「きゃぁ~! かわいいかわいい! マジヤバたん!」
「ォ、ォン……」
ポチを抱き上げて頬ずりして振り回す女子学生。
マジヤバたん……俺の耳にはそう聞こえるが、本当などんな感じなんだろうな?
マイヤーの関西弁みたいなのもそうだし、自動翻訳は不思議すぎるってばよ。
ちなみに、文字に関してはなぜか意味がわかってしまう。
書類にサインする際も、手紙を出す際も。
頭の中にある日本語をこの世界の文字で書こうとしたら、スラスラ書けてしまう。
異世界不思議、マジヤバたん。
ってか、やっぱりポチのもふもふって老若男女みんな好きなんだな。
「ヤバたんっヤバたんっ」
ぼいんぼいん。
女子学生>イグニール>マイヤー>オスロー。
俺の中で、なんだかそんな図式が浮かんでしまった。
なんの図式かと聞かれれば、それは想像してください。
ポチに変身して、学校の公園に行くとどうだろうか?
こんな風に、若い女の子にもみくちゃにされたりするのだろうか?
いや、さすがにコボルト2体が野放しはマズイか?
だったら、ロイ様あたりが俺に変身する秘薬を飲んでおけば?
どうする?
やる?
どうなる?
捕まる?
うーん、うーん、うーん……。
バレたら後が怖いのでやめておこう。
イグニールとか既に秘薬の存在を知ってる。
故に、コボルトが2体いたら勘付く。
変身の秘薬は悪事にも利用できてしまうのだ。
これは他の洗脳系特殊能力と同じ。
日頃から乱用するのは、信用問題に関わってくる。
節度を保つ、これが禊の中でも重要な事柄。
カルマは増やさないようにしましょうね!
「ねえ、このコボルト名前なんていうの?」
「ポチ」
「かわいい名前! ヤバ感激っ!」
「アォン……」
ヤバくはないだろ、とポチが冷静に突っ込んでるのがわかった。
「ポチって何食べんの? 蟻とか? 草とか? これ食う?」
「いや、雑草は食べないよ……」
「ォン……」
「こんなかわいい魔物、マジ餌あげたいじゃん?」
「わかる」
「わかるっしょ?」
でも、毎日餌もらってるのは俺なんだよな……。
コボルトに衣食住の面倒を見てもらう30歳です。
「いちおう人も襲う魔物だけど、君は怖くないの?」
「従魔でしょ? だったらマジ平気~!」
ペット感覚で弱い魔物を従魔にするのはサルトでも流行っていた。
だから、そんな感覚なんだろうな。
「つーか、ポチって話に聞いたコボルトと違って、なんかふっくらもふもふしててすっごくかわいい!」
「わかる」
「わかるっしょ?」
自然界にいるコボルトと違って食べてるものが良いからな。
栄養状態はそのまま毛並みにつながってくる。
特にポチは料理に毛が入らないように常にグルーミングを欠かさない。
普段の努力の賜物なのだよ!
「自分で毎日キレイキレイしてるもんな? ポチ?」
「ふんす」
ポチはそこは一応自慢のようで、女子生徒の腕の中でえへんと胸を張る。
そこがもう愛らしかったようで、さらに揉みくちゃに抱かれていた。
「もうただのコボルトじゃないじゃん?」
「そうだよ、ポチはスーパー有能コボルトだよ」
「へー! 可愛くて有能とかポチヤバイじゃん!」
「ヤバイよ」
偏差値だだ下がりの会話だが、ノリで会話するのも悪くないな。
俺、学校とかあんまり興味なかったし溶け込めたことないけど。
今、溶け込めてる?
──キーンコーンカーンコーン。
そんな会話をしていると、校舎の方から鐘の音がなった。
「あっ、ヤバ遅刻~! もう行かなきゃだからバイバイ!」
「あっはい」
遅刻するって、もう昼前なんだけどこの子は今頃登校したのか。
なんか見た目そのまんまって感じだな、マジギャルヤバたん。
ポチを下ろして、手ぶらで校舎へ急ぐ女子生徒は振り返ると言った。
「ってか、あんたの名前なんていうの? あたしはエイミィじゃん」
「トウジだよ」
「トージねオッケ~! じゃ、またポチ抱かせてねよろぴ~!」
「よ、よろぴ~!」
俺も今時ギャルの挨拶を返しながら、だだだーっと駆けて行く彼女を見送った。
ヤバイ、俺既に学校楽しくなってきてる。
30歳、学校に通わなくなってから何度も通っておけばよかったと思った。
まさか異世界で学校と関わりを持つことになるとは、マジ感謝。
「エイミィか、覚えておこうっと」
歳は幾つだろう、制服的には日本の女子高生と同じくらいかな?
テンション上がってきたぞ、おい!
「アォン……」
そんな気持ちが顔に出ていたのだろうか、ポチが呆れながら俺のふくらはぎを蹴っ飛ばした。
「痛っ! やましい気持ちはまったくないよ! マジほんと!」
「ォン……」
「いやホントだって、マジで。あ、そうだポチに聞きたいことあるんだけど」
「アォン?」
「その視線だとパンツ見えたよな? 何色だった?」
「…………アォン……」
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