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本編
494 料理研究クラブ・ポチ編前
キーンコーンカーンコーン。
本日の授業が全て終了したことを告げる鐘がなった。
健全たる学生諸君は、これより放課後活動へと移行する。
「では、一応全てのクラブをご案内しますね?」
「よろしくお願いします」
あらかた学院の案内が済んだ後は、クラブ活動を見学させてもらうことに。
懐かしいな、クラブ活動。
高校の時は文字通り帰宅部だった。
ネットゲームに現を抜かしていた俺が、部活なんてしてるはずもないだろう?
ちなみに大学の時は、その辺を省みてサークルに入っていたりする。
高校の時はゲーム部なんてありゃしないが、大学は別だからな。
隠キャの寄せ集め、掃き溜めみたいなサークル選んで、入ってみた訳。
しかし、大体の予想はつくと思うが、サークルクラッシャーで崩壊した。
童貞を捨てることになったのもその頃である。
つまるところ、あまり良い思い出は持っていない。
だがそれ故に、失われた青春を今この場で謳歌する。
異世界で、だ。
立場は若干違えど、良いもんなんじゃないか?
「アォン」
廊下を歩いていると、ポチが俺のズボンの裾を引っ張った。
一つの教室が気になる様で、ジッと見据えて指を指している。
教室のプレートを見ると、調理実習室と書かれていた。
「ほお、ここが気になるか」
「ォン」
大方、調理実習室の設備を見てみたい、とそんなところだろう。
しかしながら、調理実習は文化部系女子の花園。
先生新作料理作りました~って満面の笑みで試食を促されたい。
美味しいものはポチの料理で間に合っている。
だが、女の子の手料理も良し。
男としての何かが満足するんだよ、お腹いっぱいに。
「ここは、料理研究クラブですね」
「ほうほう」
「確か今は卒業制作に向けて、魔物料理の研究をしているとか」
「他行きましょう」
「ォン!?」
ポチによって俺のふくらはぎに連続ダメージが及ぶ。
HP100ずつ削られて、地味に痛いんだよなこれ……。
「グルルル! ォン!」
「いや待て、料理って家でもやってるだろ?」
「クゥン……」
悲しそうな目をしても無理だぞ。
魔物料理の研究をしてるとか、絶対ヤバいクラブに決まってる。
最新の設備をしているかもしれないが、家だって最新だ。
「調理器具等には、割とお金に糸目をつけないでやってるんだから、ここは譲れよ!」
「アォン!」
「なんだと! 魔物調理は管理監督する必要があるから、見ておきたいって?」
顧問気取りか!
このコボルトめ、一丁前に先生面しやがって!
「まあまあ、お腹が空いてるみたいですから、ポチちゃんの可愛さだったらおやつ貰えるかもしれませんよ?」
「……いや、どっちかって言うとここの誰よりも料理が上手いコボルトというか、なんというか……」
ポチが料理できると知らないアシュレイは、少しだけずれた反応を示す。
どうやって説明しようか迷っているうちに、調理実習室のドアがバタンと開いた。
中から女子生徒が姿を表す。
「アシュレイ先生! それに新任のトウジ先生まで! どうしたんですか?」
「あっ、いや、ちょっと通りかかっただけで」
「あら部長さん、トウジさんの従魔がお腹すかせているみたいなんですよ。何かおやつありますか?」
「ちょ」
勝手に話進めないで貰えるかな。
ポチも俺もお腹空いてないんだけど。
「クゥン……」
これ見よがしにほっぺをすぼめて、お腹が空いたポーズを取るポチ。
お前マジでふざけんなよ。
俺が何も食べさせてない虐待野郎に見えるやんけ。
「これはお腹を空かせているみたいですね」
「大丈夫です、空かせてないです」
毎日三食、しっかり作ってもらってます。
食わせてもらってます、空かせてないです。
「くぅん……くぅん……」
「か、可愛い! こんな可愛い従魔に餌をあげないなんて、トウジ先生ダメですよ!」
「いや」
「しょうがないですね。良いですよ。新任祝いに私たち調理研究クラブより新たに考案したレシピをもとに作り出した特別おやつをご提供させていただきます! ぜひ召し上がっていってください!」
「部長さん、いいんですか?」
「どうぞどうぞ」
「良かったですね、ポチちゃん」
「アォン!」
調理実習室に入れると聞いて、露骨にテンションを戻すポチ。
ポチは抱きかかえられる様にして中へと案内され、俺とアシュレイもお邪魔することになった。
「きゃー! 集会の時の新任の先生と連れてたコボルトちゃんだー! 可愛いー!」
「きゃー! ねえ、私にも抱っこさせてよ! 部長ばっかりずるい!」
「次! 次私ね!」
部員の生徒たちにもみくちゃにされるポチ。
少しだけ嫌がっている様だが、それでも調理実習室の設備に目を輝かせていた。
そんな様子を眺めつつ、俺は用意された椅子にアシュレイ先生と座る。
「ポチちゃん大人気ですねえ」
「そ、そっすね」
「トウジさん、挙動不審ですけど……どうしました?」
「いやその……なんで調理実習室なのに魔物がいるんですか……?」
調理実習室を見渡すと、檻に入れられたコカトリスの子供。
ピーちゃんと名付けられたオークの子供。
さらには水槽には多種多様な魚の魔物が飼われていた。
「授業で使う分と、彼女たち部員が部費を用いて購入した食材ですね」
「食材……」
確かに調理実習室だから食材があるのは理解できるが……。
食用に加工される前段階で置いてあるのは予想できなかった。
しかも、なんで魔物なんだよ。
確かに、オークは普通の豚肉と変わらない扱いをされているけど。
「学生にその屠殺から何からさせるのは、おかしいのでは?」
「それは料理研究クラブの伝統で、最初から最後まで食材の面倒をみるとか、なんとか」
「アォォン!」
アシュレイの言葉に感銘を受けた様に吠えるポチ。
「ええ……嘘だろ……」
調理研究クラブ。
俺の想像した様なきゃっきゃうふふのお料理会ではなかった様だ。
もう帰りたい。
他行きたい。
こんな依頼なんて受けるんじゃなかったと、後悔してきた。
ここ、こんなに引っ張るところじゃないだろ。
さっさとポチがすごいところ見せて、退散しようぜ……。
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