文字の大きさ
大
中
小
194 / 650
本編
495 料理研究クラブ・ポチ編中
魔物料理、それは普段は食用にされない生物の料理である。
この世界ではオークは普通の豚肉扱い。
つまり、調理実習室にあってもなんら問題ないのだ。
久しぶりに異世界って感じを実感した。
まあ屠殺からやるものかね、とも思うのだけど。
食材は最初から最後まで面倒をみる伝統ならば仕方がない。
さらには、魔物料理を研究するというクラブの方針。
これが昔、学院に迷い込んだとある料理人によるものだとか、もはやどうでもよかった。
どうせおっさんだろ、あのおっさんだろ。
もうギリスで新店舗出して営業してるおっさんだろ。
伝説でもなんでもねえよ。
魔物料理の話に戻る。
今一度言うが、それは普段食用にされない生物の料理である。
普段食用にされないものは、つまりゲテモノ。
いや、食材の希少価値とか、そういったものに準えたら別だぞ。
しかしな?
希少価値の高い食材なんぞ、学生は手に入れることができない。
と、言うことで、自然と手に入る範囲での魔物料理となる。
近場で誰も食べない魔物、みたいな感覚で行くと。
それはすなわちゲテモノに成り下がるという方程式だったのだ。
「見てください! サクサク食感と魅惑の甘さが売りの一品!」
目の前に出されたおやつ。
名前は、
「各種幼虫のサクサク素揚げプリンです!」
「oh……」
多種多様な幼虫がカラッと素揚げにされて、それがプリンに刺さっている。
見た目はとにかくヤベェ、ヤベェ。
例えるならば、生かしてある釣り餌のゴカイをそのままかき揚げにした奴。
それをプリンの上に乗っけたり、一匹ずつプリンにぶっ刺したり。
子供の遊びの延長線上で作られたってプリンなのであった。
「飲み物はこちら! ミニマムレッドアントの卵入りドリンクです!」
「卒業制作の自信作ですよね、部長!」
「ええ、これは部の伝統レシピとして残して行きたい物ですねー!」
ミニマムレッドアント、その名の通りただの赤蟻である。
レッドアントと呼ばれるデカイ赤蟻のすごく小さい版。
「い、いや……甘い物苦手だから、アシュレイ先生どうぞ……」
「いやその……今日はいつにも増してとんでもないですね……」
どうやら、アシュレイ先生も若干引くほどの見た目だったようだ。
普段は、もう少し美味しそうな普通のものが出てくるのだけど。
たまたま卒業前に気合を入れて新たな味覚を探求していたらしい。
クソが!
蟻の卵入りドリンクをタピオカ感覚で飲めるかよ!
「お気に召しませんか? 栄養抜群のドリンクとしてせっかく考案したのに……」
「いや、そのお気に召さないと言うか、甘いものがちょっと苦手で……」
料理研究クラブの部長に詰め寄られて焦る。
「トウジ先生の反応を見て、学食のドリンクとして配置して見ようと思ったんですけども」
「えっ、あの自販機に入れておくんですか?」
「はい、学院に申請を出して、気軽に取れる栄養ドリンクとしてですよ?」
絶対学食の飲み物は飲まないことをここに誓った。
こいつらの魔の手が及んでいる可能性すらある。
学食もだ、信用できんぞ。
俺は今日から昼食は学食ではなくポチ食を食べることにする。
飲み物も浄水オンリーだ。
「……あっ、トウジさんのコップから、何か産まれてますよ?」
「へ?」
アシュレイに言われて、自分の赤蟻ドリンクを見ると……幼虫が産まれていた。
「ひえっ!?」
魔物食のトラウマが俺を襲う。
ボツボツボツボツっと、腕に全身に鳥肌が立ってきた。
「あちゃ~、ちょっと卵が古かったみたいですね」
どうやら、卵が新鮮じゃないと孵化して幼虫ドリンクに化けるようだった。
古かったで済むかよ。
これもはやインセクトテロじゃん。
インセクトハザードじゃん。
飲んだ瞬間、口の中がプチプチじゃなくてブチュブチュだ。
困ったようにその光景を見ながら、アシュレイが部長に言う。
「部長さん、これはさすがに学食では出せませんねえ……」
「そ、そんな……味は保証できますよ? クリーミーです」
だったらクリーミーテロだ。
丁重にお断りしておこう。
「すいません、俺クリーミーアレルギーなんで、飲むのやめておきます」
「あ、私もクリーミーアレルギーなんで、またの機会でお願いしますね」
アシュレイも俺の真似をして、サッと虫ドリンクを突き返していた。
教師あるまじきだな、生徒が出したものはしっかり飲めよ。
俺は新任だから、情状酌量の余地があるけど。
「うーん、クリーミーアレルギーっていうのが謎ですけど、確かに孵化してしまう危険性がある以上、火を通さずに生食してしまうのはかなり不味いですね。その辺を改良したいんですけど、なかなか生命力が強くって」
強くって、って……。
そんなもんがもし胃の中で孵化したらどうすんだよ。
しかし俺のそんな疑問を知ってか知らずか。
うーんうーんと真剣に悩む料理研究クラブのメンツ。
「アォン!」
そんな中、虫プリンと虫ドリンクを飲み干したポチがテーブルの上に腕を構えて仁王立ちした。
丼物屋印の前掛けに、料理用の手袋を身につけて、料理人としての臨戦態勢。
「ポチ……」
「ォン」
クラーケン料理を振る舞った際の料理長の時のような。
さらにはインサスに見せた時の弟子を思う師匠のような。
そんな表情をしている。
どうやら見学だけのつもりだったようだが、いても立っても居られずになったようだ。
『テーブルの上に仁王立ちする姿も可愛い~!』
『きゃ~! 抱っこしちゃえ~!』
「アォン!?」
俺はなんとも勇ましい立ち姿だろうか、と思ったのだけど。
女子生徒連中には、ただマスコットキャラクターが自己の存在をアピールしただけに過ぎないらしい。
すぐに調理実習室にいた女子生徒の腕の中をたらい回しに抱かれていた。
「アォンアォン! ォン! ゥォォォ!」
必死に板を取り出して意思表示を示すものの伝わらない。
可愛いものに飢えた女子学生の恐ろしさっていうものが、垣間見えた瞬間である。
興奮が冷めて解放される頃には、少しだけしっとりしたポチがテーブルの上でピクピク。
うら若き女子生徒たちに腕の中で、胸の中でもみくちゃにされる。
なんとも男からしたら桃源郷のようかと思っていたが、あながち良いもんじゃないな。
イグニールにふんわり抱かれる方が一番だ……。
「アォン……」
「あの、クラブの皆さん。ポチが伝えたいことがあるので、一旦話を聞いてもらえますか……?」
そろそろ不憫に思ったので、助け舟を出す。
とりあえずおっさん繋がりの場所っぽいし、好きなだけやったらいいさ。
俺は正直ここまで引っ張るのもどうかと思うけど。
早く次のクラブに行きたいんだけどって感じ。
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
間違えられた番様は、消えました。
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ
異世界に召喚されたその日、巻き込まれた青年に俺が得るはずだったスキルを奪われた。
お詫びとしてチートスキルを授かった俺は、第二の人生くらい好きに生きようと旅に出る。
行き着いた先は、寂れた町の場末の酒場だ。
なぜか客は男ばかりだが、日雇い冒険者や恐妻家の肉屋たちとの気楽な毎日は悪くない。
……ただ一人、どう見ても貴族のような美青年がこの地味な酒場へ通ってくる理由だけは、さっぱりわからない。
「お前らツケはやめろ」
そんな穏やかな日々を送っていたはずなのに、ある日、酒場へ厄介な依頼が舞い込んできた――。
他サイトでも掲載しています。
不定期更新です。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。
愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~
女子高生と一緒に異世界へ聖女召喚された、アラサー女子・一ノ瀬玲。
ところが、召喚された二人を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。
聖女として期待される女子高生とは対照的に、玲は年齢を理由に無視され、王城で居場所すら与えられない。
それでも何とか生きようとしていた玲だったが――ある日、食事に毒を盛られる。
「……私、命狙われてる?」
愛犬の柴犬・雷電とチワワのアビーに助けられ、玲は王城から逃げ出すことを決意する。
逃亡先で冒険者となった玲のランクは、まさかのFランク。
そんな玲を助けてくれたのは、辺境へ向かう騎士団長・レオンハルトだった。
そして玲のスマホには、異世界へ来た時から謎の【異世界モード】が存在していた。
【異世界通販】
【異世界銀行】
【アイテム収納】
【マップ】
【翻訳】
【ステータス】
「……これ、もしかしてチートじゃない?」
王家から逃げながら、愛犬たちと辺境を目指す玲。
魔物と戦ったり、旅をしたり、異世界通販で買い物したり。
ちなみに、記念すべき異世界通販の初購入は――犬のウンチ袋。
王城では散々だったけれど、もう戻るつもりはない。
アラサー女子と愛犬たちの、ちょっと騒がしくて、時々ほのぼのな異世界辺境生活が始まります。
初投稿なので誤字脱字
支離滅裂有るかと思います
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!