装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

495 料理研究クラブ・ポチ編中 

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 魔物料理、それは普段は食用にされない生物の料理である。
 この世界ではオークは普通の豚肉扱い。
 つまり、調理実習室にあってもなんら問題ないのだ。
 久しぶりに異世界って感じを実感した。

 まあ屠殺からやるものかね、とも思うのだけど。
 食材は最初から最後まで面倒をみる伝統ならば仕方がない。

 さらには、魔物料理を研究するというクラブの方針。
 これが昔、学院に迷い込んだとある料理人によるものだとか、もはやどうでもよかった。
 どうせおっさんだろ、あのおっさんだろ。
 もうギリスで新店舗出して営業してるおっさんだろ。
 伝説でもなんでもねえよ。

 魔物料理の話に戻る。
 今一度言うが、それは普段食用にされない生物の料理である。
 普段食用にされないものは、つまりゲテモノ。

 いや、食材の希少価値とか、そういったものに準えたら別だぞ。
 しかしな?
 希少価値の高い食材なんぞ、学生は手に入れることができない。
 と、言うことで、自然と手に入る範囲での魔物料理となる。

 近場で誰も食べない魔物、みたいな感覚で行くと。
 それはすなわちゲテモノに成り下がるという方程式だったのだ。

「見てください! サクサク食感と魅惑の甘さが売りの一品!」

 目の前に出されたおやつ。
 名前は、

「各種幼虫のサクサク素揚げプリンです!」

「oh……」

 多種多様な幼虫がカラッと素揚げにされて、それがプリンに刺さっている。
 見た目はとにかくヤベェ、ヤベェ。
 例えるならば、生かしてある釣り餌のゴカイをそのままかき揚げにした奴。
 それをプリンの上に乗っけたり、一匹ずつプリンにぶっ刺したり。
 子供の遊びの延長線上で作られたってプリンなのであった。

「飲み物はこちら! ミニマムレッドアントの卵入りドリンクです!」

「卒業制作の自信作ですよね、部長!」

「ええ、これは部の伝統レシピとして残して行きたい物ですねー!」

 ミニマムレッドアント、その名の通りただの赤蟻である。
 レッドアントと呼ばれるデカイ赤蟻のすごく小さい版。

「い、いや……甘い物苦手だから、アシュレイ先生どうぞ……」

「いやその……今日はいつにも増してとんでもないですね……」

 どうやら、アシュレイ先生も若干引くほどの見た目だったようだ。
 普段は、もう少し美味しそうな普通のものが出てくるのだけど。
 たまたま卒業前に気合を入れて新たな味覚を探求していたらしい。

 クソが!
 蟻の卵入りドリンクをタピオカ感覚で飲めるかよ!

「お気に召しませんか? 栄養抜群のドリンクとしてせっかく考案したのに……」

「いや、そのお気に召さないと言うか、甘いものがちょっと苦手で……」

 料理研究クラブの部長に詰め寄られて焦る。

「トウジ先生の反応を見て、学食のドリンクとして配置して見ようと思ったんですけども」

「えっ、あの自販機に入れておくんですか?」

「はい、学院に申請を出して、気軽に取れる栄養ドリンクとしてですよ?」

 絶対学食の飲み物は飲まないことをここに誓った。
 こいつらの魔の手が及んでいる可能性すらある。
 学食もだ、信用できんぞ。

 俺は今日から昼食は学食ではなくポチ食を食べることにする。
 飲み物も浄水オンリーだ。

「……あっ、トウジさんのコップから、何か産まれてますよ?」

「へ?」

 アシュレイに言われて、自分の赤蟻ドリンクを見ると……幼虫が産まれていた。

「ひえっ!?」

 魔物食のトラウマが俺を襲う。
 ボツボツボツボツっと、腕に全身に鳥肌が立ってきた。

「あちゃ~、ちょっと卵が古かったみたいですね」

 どうやら、卵が新鮮じゃないと孵化して幼虫ドリンクに化けるようだった。
 古かったで済むかよ。
 これもはやインセクトテロじゃん。
 インセクトハザードじゃん。
 飲んだ瞬間、口の中がプチプチじゃなくてブチュブチュだ。
 困ったようにその光景を見ながら、アシュレイが部長に言う。

「部長さん、これはさすがに学食では出せませんねえ……」

「そ、そんな……味は保証できますよ? クリーミーです」

 だったらクリーミーテロだ。
 丁重にお断りしておこう。

「すいません、俺クリーミーアレルギーなんで、飲むのやめておきます」

「あ、私もクリーミーアレルギーなんで、またの機会でお願いしますね」

 アシュレイも俺の真似をして、サッと虫ドリンクを突き返していた。
 教師あるまじきだな、生徒が出したものはしっかり飲めよ。
 俺は新任だから、情状酌量の余地があるけど。

「うーん、クリーミーアレルギーっていうのが謎ですけど、確かに孵化してしまう危険性がある以上、火を通さずに生食してしまうのはかなり不味いですね。その辺を改良したいんですけど、なかなか生命力が強くって」

 強くって、って……。
 そんなもんがもし胃の中で孵化したらどうすんだよ。
 しかし俺のそんな疑問を知ってか知らずか。
 うーんうーんと真剣に悩む料理研究クラブのメンツ。

「アォン!」

 そんな中、虫プリンと虫ドリンクを飲み干したポチがテーブルの上に腕を構えて仁王立ちした。
 丼物屋印の前掛けに、料理用の手袋を身につけて、料理人としての臨戦態勢。

「ポチ……」

「ォン」

 クラーケン料理を振る舞った際の料理長の時のような。
 さらにはインサスに見せた時の弟子を思う師匠のような。
 そんな表情をしている。
 どうやら見学だけのつもりだったようだが、いても立っても居られずになったようだ。

『テーブルの上に仁王立ちする姿も可愛い~!』

『きゃ~! 抱っこしちゃえ~!』

「アォン!?」

 俺はなんとも勇ましい立ち姿だろうか、と思ったのだけど。
 女子生徒連中には、ただマスコットキャラクターが自己の存在をアピールしただけに過ぎないらしい。
 すぐに調理実習室にいた女子生徒の腕の中をたらい回しに抱かれていた。

「アォンアォン! ォン! ゥォォォ!」

 必死に板を取り出して意思表示を示すものの伝わらない。
 可愛いものに飢えた女子学生の恐ろしさっていうものが、垣間見えた瞬間である。
 興奮が冷めて解放される頃には、少しだけしっとりしたポチがテーブルの上でピクピク。

 うら若き女子生徒たちに腕の中で、胸の中でもみくちゃにされる。
 なんとも男からしたら桃源郷のようかと思っていたが、あながち良いもんじゃないな。
 イグニールにふんわり抱かれる方が一番だ……。

「アォン……」

「あの、クラブの皆さん。ポチが伝えたいことがあるので、一旦話を聞いてもらえますか……?」

 そろそろ不憫に思ったので、助け舟を出す。
 とりあえずおっさん繋がりの場所っぽいし、好きなだけやったらいいさ。

 俺は正直ここまで引っ張るのもどうかと思うけど。
 早く次のクラブに行きたいんだけどって感じ。
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