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本編
524 研究者と暗殺者とその他の処遇
しおりを挟む「トウジ、はむはむ、この大量の研究者と暗殺者はどうするし、はむはむ」
ミントパンケーキを食いながらジュノーが聞く。
「研究者に関しては、手荒な真似をせず、できれば懐柔する予定」
そのために、収容所では美味しいご飯などを味わっていただくのだ。
お前たちが嗅ぎ回っているうちの研究所は良いぞ良いぞとね。
ダメだったら家族の元に送り返すが、C.Bファクトリーは必ず潰れるといっておく。
シェアもいずれはオカロもオスローもいて、大資本を抱える俺らが抜くと知らしめる。
大資本の大元として、トガル屈指の大商会アルバート。
そしてデリカシ辺境伯、さらにはストリアのグルメ侯。
この三つの後ろ盾により、決して潰れることはないのだと。
もっとも、お金を出してるのは俺個人だが……。
俺個人の名前を出しても、何のこっちゃわからんだろう。
有名になれば良いのかもしれんが、それはさすがに。
ちなみに、グルメ侯に関しては勝手に名前を使う感じ。
だが、問題ないように今日手紙を出しといた。
クサイヤチーズとチョコレートをワシタカくんに届けさせる旨の。
ワシタカくんに直行して貰えれば片道で済むから楽である。
「暗殺者はどうするし? また海に捨てるし?」
「え、トウジ……そんなことしたの?」
ジュノーの言葉を聞いて、少し驚くイグニール。
ここは正直に伝えておきましょう。
イグニールだって敵には厳しいタイプだからな。
「うん、宿直中に奇襲されたから、しっかりギリスとトガルの間の海に捨ててきて貰った」
「ああ、いきなり周りを嗅ぎ回ってる奴を捕まえ出したのって、それが原因なのね……」
「うん、暗殺者はデプリの連中だから、イグニールはできるだけマイヤーたちと一緒にいて欲しい」
「了解。今まで何とか隠れ過ごせてたけど、ついに見つかったってことね?」
「そういうこと」
「今度は勇者が襲ってきたりするのかしら? 大丈夫? 少し心配なんだけど」
「それはわからん」
直接勇者一行が来た方が、話は早いと思うのだけど。
それをしないデプリには、何か理由があるのかもしれない。
こうやって早急にことを運んだ結果。
もしかしたら、ラスボス勇者が姿を現わすのかもしれない。
蓋を開けて見なきゃ、どうなってしまうのかはわからない。
しかし、意思表示だけはしておこうと思う。
ついに放逐された俺から、向こうに手紙を送り届けるのだ。
このこそこそ嗅ぎ回る暗殺者連中。
教団やデプリの密偵みたいな奴は、全部まとめてデプリに送り返す。
そしてその時に、メッセージを残すのだ。
勝手に追い出した癖に、暗殺者集団を送り込んで来て何事か、と。
何事もなく平和に暮らしているので、関わらないでください、と。
暗殺者が関わった当日に、俺の大切な存在がが殺されました、と。
「え、大切な存在? 誰が殺されたのよ?」
俺の話を聞いて首を傾げるイグニールに伝える。
あの日、殺されてしまった大切な存在、それは。
「マクラス」
「いやそれ枕でしょ」
「そして殺したのはトウジだし!」
「半分ジュノーのせいだぞ……」
さて、こんな冗談は置いといてだな。
「宿直があった日にマクラスが死んだのは本当。そしてその日に暗殺者が来たのも本当。嘘はついてない」
「……屁理屈よね」
「それでも相手の良心に訴えかけ、そういうことがありましたよと声を大にするのが大切なことなんだよ」
お涙頂戴するのが、一番面倒ごとを生まないで済む。
仮にも勇者だったら、俺の正当性を受け入れろ。
受け入れないならば、もう潰し合うしかないんだよなあ……。
どうにか受け入れて欲しいんだけど、俺のメッセージ。
メッセージの伝え方は、もちろんワシタカくんを使います。
デプリまで長距離移動しなきゃいけないからね、基本彼だ。
絶対勇者が目につくところにサッと置いてサッと帰る。
少々危険かもしれないが、それが一番教団も嫌がるだろうよ。
なんたって、隷属させる装備をわざわざつけさせるほどきな臭い連中。
普通に送り届けたところでもみ消されかねないからね!
そんな訳で、地味にもう2度と行くことはないであろうと思っていたデプリに近々向かう。
できれば他の方法を考えたいのだけど、ウィンストどっか行っちゃったしなあ……。
「で、その他はどれにも属さない奴らはどうするし?」
「それなんだよなあ……」
デプリとも、C.Bファクトリーとも違う第三勢力がいる。
いったい何が目的で嗅ぎ回っているのかわからないのだ。
俺、賊に何か恨みを買うようなことってしたかな……?
したかしてないかで言えば、冒険者業の傍で出会った賊はみんな退治している。
大規模な賊は、野山ではなく街中に拠点を構えていると鉄壁の奴は言っていた。
それもあって嗅ぎ回っていると言う可能性もある。
とりあえず暗殺者も賊も、一人一人事情を聞き出すのだ。
処遇の決断はそれからで良い。
暗殺者に対してはお涙頂戴作戦をするから、あまり酷いことはしない。
だが賊なら、逆に身代金要求とかしても良いんじゃない?
トップの人とお話し合いができる状況を作ってから、色々決めようと思う。
「うん、自分の命は自分で購入していただく形にしようか」
「その後の報復が来たらどうするのかしら?」
「来ないようにトップの人と話をつけに行くよ。ロイ様たちを引き連れてね」
「……何も心配いらなそうね」
よくある任侠モノってメンツが大事だったりする。
そのメンツを潰さないように、上手いこと取引だ。
『盟主よ、こいつは暗殺者でも研究者でもない第三勢力だ』
そんなことを話している間に、敵勢力が運び込まれる。
「身元確認は?」
『ギルドに貼られている賞金首の絵と特徴が一致している』
「よし、Eの特別収容所に入れて手厚く持て成してやれ」
『承知した、接待役も引き受ければ良いのか?』
「うーん、それはこっちで準備するから、確保班に回っていいよ」
『承知』
スポーンとダンジョンの入り口に吸い込まれる賞金首の男。
そして作業に戻って行くキングスの一体を俺は見送った。
「あら、都合よく交渉に使えそうな奴が捕まったじゃない?」
「これで話し合い路線も有利に運べそうだ」
イグニールの言葉に頷いておく。
賞金首ならば、それなりに名前のある奴なのかもしれない。
賊の重要なポストについているとしたら、話し合いが捗る。
「トウジ、接待役はどうするし? 楽しそうだからあたしがやるし?」
「いや、ゴレオに任せよう」
事あるごとにメイドゴレオになって、地味に存在をアピールしているゴレオ。
しかしながら、そのタイミングが悪くてなかなか目立てないでいた。
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ま、ゴーレムだけど。
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