装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

532 船旅・1


 学院の馬車に乗り、俺たちは一度ギリスの港町へ。
 そこから旅客船へと乗り換え、海の上を二日かけてダンジョンリゾートに向かう。
 その船の上にて。

「トウジさん、見てください! 海です、潮風がすごいです!」

「潮風すごいっすね」

 麦わら帽子に厚手のカーディガンを身につけたエリナが俺の袖を引っ張りながら海を指差す。
 生まれて初めての旅行、さらに豪華な旅客船ともなればテンション上がりっぱなしのようだ。

「見てください! カモメも飛んでいますよ!」

「カモメ飛んでますね」

 水鳥なんか、ギリス首都にあるデカい川にもいると思うんだけどなあ……。
 俺のサポートとしてついてきたエリナは、仕事も忘れて絶賛カモメに餌やり中。
 まあ、楽しそうだから良いんだけどね。
 向こうのギルドに着くまで、特に仕事らしい仕事もないそうだし。

「トウジさん、ちゃんと担当のグループは監督していますか!?」

 今度は逆サイドの袖が引っ張られた、アシュレイだ。

「してますよ」

 点呼も終わって自由時間。
 生徒たちはみんなおもいおもいの時を過ごしている。
 そんな状況で監督も何も無いと思った。

「ぼーっと海を見てないで、こういう時こそ生徒と思い出作りをする時です!」

「確かにそうっすね」

 この旅行が終われば、晴れて学院での依頼も終わりとなる。
 1ヶ月近く関わった生徒たちと絡んでおくのも必要だと思った。

「それにしても、もう1ヶ月経ったんですね」

「トウジさん、すっかり人気先生になってしまわれて、なんだか寂しいです」

「いやいや、人気ってそんな」

 人気先生か……。
 確かに一人でお話し授業するようになってからは、そこそこ聞きに来る人がいた。
 今までどんな依頼をしたか、どんな大変な目にあったか、どんな魔物と戦ったか。
 俺が異世界に来てから、今までのことを半分話すような、そんな授業でもある。

 なんだろう、何を話したっけな……。
 基本的には、美味い飯があったらどこでだって生きていけるとか。
 そして周りに気を使って、丁寧に対応すれば評価は上がるとか。
 全てのことに通じて、学生生活も同じようなことを言えるとか。

 そんなところだな。
 自由感の強い職業にも思えるが、それは全てが自己責任であるってことだ。
 責任を学校や親がとってくれる立場にある生徒は、まだマシだって豪語した記憶がある。
 俺だって学生の頃に戻れるなら戻りたいし、やり直せるならやり直したいと思う。
 まあ、今だって人生を一度やり直しているようなもんだから、そりゃ贅沢な話か。

「俺みたいなやつの言葉でも、反面教師みたいに心に留めていてもらえればありがたいですね」

「何を言ってるんですか、みんな分かってくれたと思いますよ?

「だったら良いんですけどね」

「次から冒険者のための授業も取り入れられると思いますし、トウジさんのおかげで学科別にある隔たりとか差別意識のようなものが少し薄れるはずです」

 ってことは、ギルドの依頼通りにワンクッション挟むことができたってことだな。
 まあ、2000万分の働きはできたんじゃないですかね、これで。
 明らかに貰いすぎ案件だから、正直もっと仕事を振られても良かったかもしれないけど。

「あー! アッちゃん先生ここにいた!」

 海を眺めながらそんな話をしていると、アシュレイを呼ぶ生徒の声がした。

「もー、トウジ先生がいる時っていっつもアッちゃん先生そばにいるよね!」

「な、ななな! 何を言ってるんですか! そんなことありません!」

「そんなことあるよ、ひょっとしてアッちゃん先生って、トウジ先生のこと狙ってる?」

『キャー!』

 アシュレイを囲みながらきゃーと沸き立つ女子生徒たち。
 この世界でも、女子生徒の話のタネは恋愛話なのだろう。

「も、もう! ほらみんなで遊技場に行きますよー! 楽しくカードゲームでもして遊びましょう!」

「負けた人が好きな人言う罰ゲーム付きね!」

「賭け事とか、罰ゲームとか、そう言うのは禁止です! 禁止!」

 俺は顔を真っ赤にしながら生徒たちを船内に向かうアシュレイを見送った。
 そんな俺たちの様子を見ながらエリナが言う。

「トウジさん、モテモテですね」

「エリナさんほどじゃないですよ、ギフとか」

「うう、私はなぜだかそういう輩からしか声がかからないんですよ……」

「そ、そっすか……」

 そういう星の元なんじゃないかな?
 可能性としては、そういう輩が他のやつを邪魔してるかもしれないけどね。
 取り巻きがやばいと、それだけ近寄りがたくもなるんだし。

「あ、ちなみにトウジさん的には私はどうですか? ありですか? なしですか?」

「職場が一緒なのは個人的に無しで」

 私情を挟んでしまうと、別れた後とかややこしいからね。
 もっとも、そんな経験なんてないんだけど。

「わっ、振られちゃいました?」

「いや、今のは振った振られたの話じゃないでしょ」

 ただの好みとか、どういう相手が理想かの話である。
 俺の理想はどうだろう……。

 うーむ、甘やかしてくれる人がいいな。
 それでいて、ダメな時はしっかり叱ってくれる人とかかな?
 俺がヘタレな分。
 それだけ包容力というか、心の広い人物がいいと思う。

 割と自制っていうのができないタイプだからね。
 好き勝手してることも許してくれる人がいいな。
 束縛されるのが平気だったら社会の底辺で生きてません。

「じゃ、俺はこの辺で生徒たちのところに顔を出して来ます」

「はい。とりあえず向こうについて、時間が空いたら支部にお越しください」

「了解っす」

 ってことで、俺もライデンたちの元へと顔を出すことにしよう。
 甲板から船内へを戻る階段付近で、イグニールたちの姿を見かけた。
 イグニール、ゴレオ、ジュノー、マイヤー。
 うちの女性陣が一同に介し、何やら話し込んでいる。 

「ちょっと、無しらしいわよ」

「それマジ? どうするん?」

「……」

「多分、適当に理由つけてはぐらかしてるだけだし」

「やっぱりそうよね?」

「おもった通りやん」

「……」

「で、どうするし、何するし? あたしはすでにマ──」

「──なに話し込んでんだ?」

『──わっ!?』

 話しかけて輪に入ろうとすると、全員が驚いた顔をして後ずさっていた。

「え? なに? なんで後ずさるの?」

「……」

 近づくとゴレオが通せんぼしてくる。
 な、なんだよ……。

「ガールズトークってやつ?」

「そうだし! だからトウジはあっちいくし!」

「えっ」

 仲間はずれか、ちょっと悲しくなった。

「じゃあいいよ、もう! ジュノー今日は俺一人で寝るからお前イグニールと寝ろよ!」

「それは断るし! って、トウジちょっと待つし! トウジー!」

 ジュノーの口ぶり的に、ポチもたまに仲間に加わっている節がある。
 つーことは、俺だけハブなのだ。
 ポチだってオスだろ、ガールじゃないだろ、ちくしょー。
 念のため、今日はライデンあたりの部屋に行って一緒に寝よう。

 あれ、俺なんか着実に一人じゃ寝れない体にされている……?
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