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本編
538 ダンジョンリゾート・2
しおりを挟む船が港へ着いて、ダンジョンリゾートと呼ばれるオデッセイ島に俺らはなだれ込んだ。
不思議なことに、このオデッセイ島は年中常夏、そして雨が降ることも滅多にないらしい。
島型ダンジョン、極彩諸島のなせる技なのだろうか?
いったいどういう原理なのかはわからない。
別に知ろうとも思わないが、ここのダンジョンコアは敵なのか、味方なのか。
俺が気になるのはそこに尽きる。
そもそも、女海賊の根城となっている島。
敵……では無いのかもしれない。
どちらにせよ。
警戒をしておくことに越したことはないか──……
◆
「──うまうまうまうまうまうま」
「──ォンォンォンォンォンォン」
到着した頃は、そこそこ真面目な気持ちで島へと降り立ったんだが……。
俺の真面目な気持ちはさっそくどこかへ消えた。
それもそのはず。
オデッセイの港に存在する適当な海の幸系の店の食事がすげえ上手かったのだ。
「うまうまうまうま」
「ォンォンォンォン」
俺もポチも止まらないって感じ。
各種刺身盛り合わせとかすごく美味しい。
値段はそれなりに張るけど、どれも一級品の美味しさである。
ちなみにコレクトは一人で宝探しに行った。
習性だから仕方がない。
「しめ鯖!」
「ォン!」
「なめろう!」
「アォーン!」
初手は青物づくし、この他にもいっぱいあるぞ。
イナダの刺身も美味しいよね。
ダンジョンゆえに、これまた季節関係なく年中いろんな魚が獲れるそうだ。
不思議!
でもそんなの関係ないね!
美味けりゃ何でも良いんだ世の中。
ネットも何もない世界で唯一の楽しみは飯だ。
飯と装備製作とポーション製作ともふもふ。
「サーモン!」
「アーォン!」
「カツオ!」
「ォーン!」
カツオに関しては、なんとカツオのたたきだった。
醤油につけても良し、ポン酢でも良し。
あっ、醤油があるんだから、ポン酢もあるよ。
「……す、すごい勢いですね、トウジさん」
次々に注文し、次々にがっついていく俺とポチ。
その様子を見て、ライデンが困惑していた。
「魚っていくらでも食えるよなあ?」
「ォン!」
元気に頷くポチ。
肉と違って胃に来ない気がする。
「先生、さすがに限度があると思いますが?」
「まーね」
ケインの言葉もごもっともだと思っているよ。
食べ過ぎたら口から生臭さが臭って来そうなものだが、まだ大丈夫だ。
肉は一撃で三十路の胃袋を破壊し、次の日トイレに行かすからヤバい。
そもそも俺らの飯の様子なんて、最初から最後までがっつきだぞ。
もし俺たちが飯物ストーリーの主人公だったら、即降板レベル。
「でも刺身は白ご飯の上でワンバンさせて食うのがうめーんだよ!」
「アォーン!」
「いや、そんなの聞いてないし」
ノリの豹変っぷりに、ギャル子エイミィまでツッコミに回る始末だ。
だががっつく姿を見ているとみんなお腹が空いたようで、俺とポチに怪訝な目を向けながらも食が止まらない。
これこそ、妙義なんか美味そうな感じの伝染だな。
他人がなんかやってるのを見ていると、ついつい真似したくなる気持ちってあるよね?
食に関してはそれが著しい感じがする。
「つーか、お前ら海に行かないの? 行って来てもいいよ? 今は自由時間だろ?」
律儀に中年とコボルトの食い道楽に付き合わなくても良いのだ。
学生ならばきゃっきゃうふふと青春してこい。
俺も後で水着姿は拝みにいくんだけどもね!
主にエイミィの。
「いや、それが……僕たち全員水着持って来てないんですよ……」
「え? オデッセイって海が有名なのに、マジでか?」
「はい……」
食べながら理由を聞いてみると。
ライデンは赤いふんどしを水着として持って来ていたのだが、それで泳ぐなと言われたそうだ。
エイミィは、適当に家にあった水着を持って来たのだが、来て見たらサイズが合わなかったらしい。
つまり、溢れるっ!
んで、ケインの方は、学業には水着はいらないと言うことで、そもそも持って来てすらいない。
「お前ら、何しに来たんだよ……?」
「社会見学です!」
「あっはい」
力強くそう言うケインはもう放っておくことにした。
「水着の貸し出しとかしてるだろ、ここ」
「他人が来たやつってなんかばっちいじゃん!」
「えー……じゃあ、ここでずっと飯食ってるわけ?」
「トウジっちのいるところいる。なんかそっちの方が面白そうだし」
「え……」
飯食べたら一旦海にいって女性陣の水着みるんだけど。
つ、着いて来て欲しくない。
ポチと砂浜に座ってぼんやり海を見つめるふりをしたいのに……。
みんなが来ると心のシャッターできないじゃん。
みんなで話してる最中、女の子を目で追うって、それじゃまるで俺が変態みたいじゃん。
「……水着作ってやるから泳いでこい」
「えっ! トウジさんが作ってくれるんですか!?」
「まあね」
こいつらを海で遊ばせるためには、致し方あるまい!
だが、ケインのメガネが怪しく光っていた。
「ハレンチです! 水着を作るって、先生という立場でありながら、女子生徒の体の隅から隅までを調べ上げるということですよね!? そ、そそそ、そんなの認められるわけにはいきません! いきませんから!」
「あたし、別に採寸は平気だけど」
「他人の水着は嫌なくせに何でそれはオッケーなんですか!? ダメです! ダメですから!」
別に、採寸の必要ないんだけどな……。
適当な全身装備に水着をカナトコして見た目を写せばそれでいいのだ。
自動でリサイズされるから、誰が来てもピッタンコになる。
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