装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

550 エルカリノ討伐戦・3 怪物を呼ぶ、叫び声(海賊側視点)


「聞いたか? シーモンクを使って海魔を呼び寄せるんだとよ」

「ああ、よかったぜ、拷問班になんかならなくて……」

 エルカリノの海賊旗をはためかせる大船団のうち一つの甲板にて。
 こびり付いた汚れをブラシで擦りながら下っ端たちは会話をする。

「とんでもねえ声で泣き叫ぶらしいな、シーモンク」

「この世の終わりのような声じゃねーと、海魔が来ねぇしな」

 今回の戦い。
 シーモンクを使い海魔を呼び寄せる、という伝令をすでに受けていた。

「そこまでする必要性があるのかねえ……?」

 そう思う海賊もいれば。

「まあ敵も海魔をめちゃくちゃ連れたヤベェ奴だだから仕方ねえ」

 打って変わって危機感を抱く海賊もいた。
 違いは、一度間近で船が落とされる様子を目の当たりにしたかどうか。

 ロック鳥に、船1隻を叩き潰され。
 スライムキングに、嵐を帳消しにされた。

 その光景を目の当たりにしたかどうかで、今回の反応は綺麗に二分される。

「それにしても、オデッセイの壊滅させたら、俺らのもんになるのか?」

「だろうよ」

「うはっ、ってことは、娼婦とか選り取り見取りで金かかんねえの?」

「そこまではわかんねーけど、いたらひっ捕まえてヤっちまうだろ?」

「まあな! 関係ねえや!」

 デッキブラシでリズムを刻みながら繰り広げられる会話。
 それは半分冗談でもあり、半分本気でもある。
 エルカリノ自身は、破壊行為に対しては特に何も言わない。
 しかし、女子供を襲う際には、しっかり見極めろと言う。

 敵か、そうじゃないか。
 巨大化した組織には関係するものが多数存在する。
 同胞を同胞が殺す、それは正式な場以外は禁じていたのだ。

「にしても……」

 一人の海賊が話す。

「大船長も俺らと同じように危険を背負い込むって、マジか」

「でもそれが良いだろ?」

 俺らの大船長が全部引っ張ってってくれる。
 これほどまでに、大切にされていると実感しないことはない。
 だから、海賊の下っ端たちはエルカリノのことを親父と呼ぶ。

 いつだって、どこだって、必ず困ればケツを拭いてくれる。
 そんな存在が大船長なのだった。

「ただ、どんなシーモンクがどんな海魔を呼び出しちまうか、気になるところだぜ」

 話は再びシーモンクの件に戻る。

「なあ、お前は何か知ってるか?」

「聞いた話だと……シーモンクの絶望具合によって色々変わってくるらしい」

「絶望具合ってことは、叫び声の大きさってことか?」

「そうだ。あいつの声は深海の底に住む怪物を呼び覚まし、求めちまうんだ」

 その時。
 ──ギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 遠くの船からとんでもない悲鳴が響いて来た。
 丁度話題となっていた、シーモンクの叫び声。
 どうやら、拷問がついに開始されたようだった。

「……おっかねえ」

「おう、あんな叫び声……俺は聞いたことねえよ……」

「今回ばかりはマジでヤベェのが来ちまいそうだな……」

 願うことならば、この船が生贄にならないこと。
 それだけだった。

「よし、とりあえず甲板の掃除はこのくらいにして、夕食の準備に取り掛かるか?」

「おう、じゃあちょっと道具を片付けるから貸してくれや」

「おう頼む」

 掃除道具を相方に手渡し、待っている間に空を見る。
 水平線に日が沈みかけ、夜空に眩いほどの星が見え始める頃だった。
 いつもと変わらない光景ではあるが、明日は全軍を率いた決戦。

 残った仕事は、武器庫の整理や次の日の食事の準備など。
 まだまだたくさんある。

「まったく下っ端はやることが多くて辛いぜ……って、おい?」

 空を見上げていた下っ端の一人は、視線を相方に戻した後、首を傾げる。
 さっきまで隣で喋っていた奴が、急に消えてしまっていたからだ。

「あ、あれ? どこ行った? まったくもう行っちまったのか?」

 だが、掃除用具を入れる戸棚は開きっぱなしで、その手前にデッキブラシが転がっている。

「なんだよ、掃除用具もろくに仕舞ってねえし、いったい何が──?」

 ──瞬間、体が急に何かに引っ張られるような感覚に陥った。
 甲板から、体が海に投げ出されるようにして宙を舞う。

「な──」

 声を出そうとしたが、息ができなくなった。
 肺が急に痛み出して、どうすることもできない。

「──ッ」

 目だけを動かして引っ張られる方向を見つめると、黒い何かがいた。
 船の横に張り付いた黒い何かが、蝶を近くで舞わせ、下っ端海賊に手を向けている。

 どうにもその手から。
 抗うことのできない引き寄せられる何かが発せられているようだった。

 それが何か。
 下っ端は理解する前にあっけなく事切れる。

 気がつけば、この船の甲板には誰一人として乗組員の海賊がいなくなっていた。
 それでも、船はまるで幽霊船のように海の上を等速で走っていく。



=====



「よし、ゴーストシップ作戦いっちょあがりっと」

「じゃ、ワルプはそのままバレないように船を動かしてくれ」

「んでもって、ナンシィは俺と別の船に行くぞ」

「え? 船の中にまだ人がいるかもって?」

「いたらいたで騒いでくれたら、混乱に乗じて作戦が楽になるよ」

「まったく、聞けばオデッセイに100隻向かわせてるそうじゃないか」

「敵は俺だっつーのに、とことん人の嫌がることがしたいらしいな?」

「うん、やってやろうぜ」

「あ、そうだ。ビリーは深海の様子を一応見てきてくれないかな?」

「なんか厄介なもん呼び寄せ用としてるらしいからね、頼むよ」
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