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本編

557 vsポセイドン

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『ほう、どういうことだ?』

「あの島には俺の仲間がたくさんいますんで、狙わせる訳には行かないんですよ」

 島に向かって津波を起こすって、それは俺の敵だ。
 見過ごすことはできなかった。

「元オデッセイ海賊団とともにエルカリノ討伐を請け負った冒険者は俺ですしね」

『ほう、黙っておけば良いものを……なかなかに漢だな』

 俺だって本当は黙っていたかったが、それは無理。
 あの島に攻撃をさせるくらいなら、ここで俺が一度死ぬほうがよろし。
 フォルがいれば一度死んだ扱いになるんだからね。

 勝ちを捨てたつもりはないけど、さすがに津波を起こせる相手。
 災害クラスに打ち勝つ、だなんてどうしたらいいのかわからなかった。

 ワルプだって、ビリーだって、キングさんだって。
 気象を変えてしまうくらいの力を持っているのだが……。
 津波は格が違う。

 さらに俺を絶望の淵に叩き落とすような事実があった。
 実は、今もずっとワルプの潮流攻撃が継続しているはずなのである。

 しかし、ポセイドンはスタンにも暗黒にも陥ることなく。
 いたって平然と話している。

 ……どういうことだ?
 少しだけ考えて、ある結論に至った。

 海流を操作することによって、ワルプの海流攻撃が伝わらない。
 そのような状況になっているのではないか?
 身の回りに自分の海流を生み出して、一つの層を作って防御。
 邪竜にも通じるレベルのワルプのハメ技なんだぞ。
 普通にしていれば絶対に食らうはずなんだ。

「俺がせっかく恩返しとして狙われないように進言したのに……何やってんだ冒険者……」

「それはありがたいですけど……島が狙われるのも見過ごせない事情があるんですよ……」

「そっか、なんか逆に悪いことをしたか?」

「いや、止めようとしてくれたのはありがとうございます」

 でも、とお礼を述べながら俺は言葉を続ける。

「止まらない感じなんですよね?」

「……そうだな」

 難しい顔をしたシーモンクの後に、ポセイドンが言う。

『その通り。対価を受ければ、力を貸さなければならないのだ』

「どうしてもですかね?」

 そこを破ると罰が当たるとか、そういう話があるのだろうか。
 尋ねると、ポセイドンはあっけらかんと言った。

『どうしてもではないが……久々に我も暴れ散らかしたいのだ』

「ええ……そんな理由で暴れられても困るんですが……」

 キングさんでももうちょっとまともなんだ。
 強いバトルジャンキーとか、もう目も当てられない。

『それに、単身船へと乗り込んで、そこそこの数を蹴散らせる冒険者……面白い』

「は、はあ……」

『レベルも100越えで、他とは一線を画すようだし……』

 ポセイドンの目つきがどう猛なものに変わる。

『どれ、ガス抜きに付き合ってはもらえんか?』

「ガス抜きって……殺すんですよね?」

『それはお前の頑張り次第ということにしておこう。この海の支配者ポセイドンにどこまで食いつけるか、見ものだな』

 約束を果たす条件が死亡だけだったら、フォルがいてくれたらすごく楽だった。
 あえて負けて死ぬ、それで試合終了。
 だがしかし、それだけではさらに怒らせてしまうような気がした。

 図鑑にいるキングさんだって、俺のことを怒るだろう。
 はあ、面倒臭いけど戦うしかないようだ。

「ちょっと待てポセイドン、一人の冒険者に本気を出すつもりか?」

『出すほどでもない。少しこの男の実力を見るだけだ』

「……嫌な予感がする」

『お前の予感は当たらんからな、とりあえずその辺で黙って見とれ』

 そんな訳で、戦いがスタートする。
 俺はその間にブニーを戻して、スロットに一つの枠も設けておいた。

『初手はお前が来い。それがハンデだ』

「了解です」

 海面に浮かぶワルプの頭に乗った俺は、キングさんを召喚する。
 召喚されたキングさんの顔は、とんでもなく怖かった。

「プルァ……」

 ビキビキビキビキと、キングさんから悍ましい擬音が聞こえてくる。
 どこからなってるんだろうか……?
 流動体ボディだから、ビキビキなんて出ないはずだけど。
 多分俺がキングさんの雰囲気から勝手に想像した幻聴だろうな……。

『スライムキング? もっと強い魔物を出せんのか?』

「プルァ」

『なに? 一撃くれるなら、ありがたくもらっておくぞ?』

 ハハハ、来い来い。と告げるポセイドンに。
 キングさんは巨大化、からの最小化して、ボッと突進した。

「──!?」

 ドンッと高波が起こり海が荒れる。
 そして海に倒れこんだポセイドンの上半身で、その波が何倍にも膨れ上がった。

「おわあああああああ!?」
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