256 / 650
本編
557 vsポセイドン
しおりを挟む『ほう、どういうことだ?』
「あの島には俺の仲間がたくさんいますんで、狙わせる訳には行かないんですよ」
島に向かって津波を起こすって、それは俺の敵だ。
見過ごすことはできなかった。
「元オデッセイ海賊団とともにエルカリノ討伐を請け負った冒険者は俺ですしね」
『ほう、黙っておけば良いものを……なかなかに漢だな』
俺だって本当は黙っていたかったが、それは無理。
あの島に攻撃をさせるくらいなら、ここで俺が一度死ぬほうがよろし。
フォルがいれば一度死んだ扱いになるんだからね。
勝ちを捨てたつもりはないけど、さすがに津波を起こせる相手。
災害クラスに打ち勝つ、だなんてどうしたらいいのかわからなかった。
ワルプだって、ビリーだって、キングさんだって。
気象を変えてしまうくらいの力を持っているのだが……。
津波は格が違う。
さらに俺を絶望の淵に叩き落とすような事実があった。
実は、今もずっとワルプの潮流攻撃が継続しているはずなのである。
しかし、ポセイドンはスタンにも暗黒にも陥ることなく。
いたって平然と話している。
……どういうことだ?
少しだけ考えて、ある結論に至った。
海流を操作することによって、ワルプの海流攻撃が伝わらない。
そのような状況になっているのではないか?
身の回りに自分の海流を生み出して、一つの層を作って防御。
邪竜にも通じるレベルのワルプのハメ技なんだぞ。
普通にしていれば絶対に食らうはずなんだ。
「俺がせっかく恩返しとして狙われないように進言したのに……何やってんだ冒険者……」
「それはありがたいですけど……島が狙われるのも見過ごせない事情があるんですよ……」
「そっか、なんか逆に悪いことをしたか?」
「いや、止めようとしてくれたのはありがとうございます」
でも、とお礼を述べながら俺は言葉を続ける。
「止まらない感じなんですよね?」
「……そうだな」
難しい顔をしたシーモンクの後に、ポセイドンが言う。
『その通り。対価を受ければ、力を貸さなければならないのだ』
「どうしてもですかね?」
そこを破ると罰が当たるとか、そういう話があるのだろうか。
尋ねると、ポセイドンはあっけらかんと言った。
『どうしてもではないが……久々に我も暴れ散らかしたいのだ』
「ええ……そんな理由で暴れられても困るんですが……」
キングさんでももうちょっとまともなんだ。
強いバトルジャンキーとか、もう目も当てられない。
『それに、単身船へと乗り込んで、そこそこの数を蹴散らせる冒険者……面白い』
「は、はあ……」
『レベルも100越えで、他とは一線を画すようだし……』
ポセイドンの目つきがどう猛なものに変わる。
『どれ、ガス抜きに付き合ってはもらえんか?』
「ガス抜きって……殺すんですよね?」
『それはお前の頑張り次第ということにしておこう。この海の支配者ポセイドンにどこまで食いつけるか、見ものだな』
約束を果たす条件が死亡だけだったら、フォルがいてくれたらすごく楽だった。
あえて負けて死ぬ、それで試合終了。
だがしかし、それだけではさらに怒らせてしまうような気がした。
図鑑にいるキングさんだって、俺のことを怒るだろう。
はあ、面倒臭いけど戦うしかないようだ。
「ちょっと待てポセイドン、一人の冒険者に本気を出すつもりか?」
『出すほどでもない。少しこの男の実力を見るだけだ』
「……嫌な予感がする」
『お前の予感は当たらんからな、とりあえずその辺で黙って見とれ』
そんな訳で、戦いがスタートする。
俺はその間にブニーを戻して、スロットに一つの枠も設けておいた。
『初手はお前が来い。それがハンデだ』
「了解です」
海面に浮かぶワルプの頭に乗った俺は、キングさんを召喚する。
召喚されたキングさんの顔は、とんでもなく怖かった。
「プルァ……」
ビキビキビキビキと、キングさんから悍ましい擬音が聞こえてくる。
どこからなってるんだろうか……?
流動体ボディだから、ビキビキなんて出ないはずだけど。
多分俺がキングさんの雰囲気から勝手に想像した幻聴だろうな……。
『スライムキング? もっと強い魔物を出せんのか?』
「プルァ」
『なに? 一撃くれるなら、ありがたくもらっておくぞ?』
ハハハ、来い来い。と告げるポセイドンに。
キングさんは巨大化、からの最小化して、ボッと突進した。
「──!?」
ドンッと高波が起こり海が荒れる。
そして海に倒れこんだポセイドンの上半身で、その波が何倍にも膨れ上がった。
「おわあああああああ!?」
88
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。