文字の大きさ
大
中
小
262 / 650
本編
563 末っ子の不満
「──グォォォォオオオオオオオオオ!!」
と、特大の咆哮を上げて、邪竜が指輪から顕現する。
霊気に関しては、この戦いの最中で勝手にたまった。
要するに巻き込まれた魔物がたくさんいるってこと。
ポセイドン、グレイトキングさん、邪竜イビルテール。
海に佇む巨大な3体の怪物たちよ。
そんな中に、巨大なワルプと17メートルのおっさん。
たった今。
この場は、様々な要素が混み合った魔の海域と化した。
この情報量、見ている奴がいたらわけわからんだろう。
大丈夫、俺もあんまりわかっていない。
「邪竜、力を──うおっ!」
ズバァッ!
尻尾が飛んでくるのを小盾で受け止めた。
くそが、何となくわかってたぞ、来るの。
「ほう、挨拶代わりの一撃を受け止めるようになりましたか」
ビタンビタンと尻尾を海面につけながらそう言う長男。
相変わらず俺へのヘイトは変わらずってところだった。
どうにかこいつらとのわだかまりも消したいんだけど。
中々どうして、対話をするために呼び出すのは危険だ。
「良いから、とにかく今は力を貸せ三兄弟」
そう長男に言葉を返すと、次男が声を荒げた。
「力を貸せだと? この儂らに、力を貸せだと? 殺すぞ?」
「相変わらず血の気が多い奴だな、良いから力を貸せってば」
この高波と津波の嵐を止めるには、こいつらの重力しかなかった。
重力によって強制的に津波を抑え込むのである。
「ほう、自分ではどうにもならないから私たちに頼むのですか?」
長男は続ける。
「ずっと見てきましたけど、貴方って責任感中途半端ですよね?」
「ぐっ」
「女性関係も、自分の中で適当に言い訳してなあなあですよね?」
「それ、関係ないだろ!」
こいつ、他のと違って理路整然と伝えて来るから面倒臭い。
「ま、まあ良いさ……」
図星をつかれて焦った気持ちを何とか保って告げる。
「呼び出した本当の理由は俺がスキル使うためだしな」
顕現させると、斥力と引力のスキルが合わさって重力に変化する。
ぶっちゃけ、それだけで十分だった。
まだ使ったことはないけれど、邪魔さえ入らなければ何とかなる。
そんな気がしていた。
「兄者の力を我が物顔で使用するとは、下衆野郎め」
「何とでも言えば良い。時間が無いから相手は無理」
「くそが! 兄者! 今すぐにこいつを亡き者に!」
儂に権限を寄越してくれ、という次男。
くそ、やっぱりこいつらを出すのは面倒だな。
こんなやり取りをしている間に時間は過ぎる。
駄弁ってる時間とか、真面目に無いんだけど。
「ギャオ、ギャオッ!」
「おや、可愛い末っ子も暴れたいと言ってますね」
「ほら兄者、末っ子も儂も暴れたい、権限を!」
「ふむ、能力をただで使われるのも癪に触りますし──」
邪竜の尻尾がズドンと海面を叩き。
今の権限を持っている長男が俺に鋭い眼光を向けて言った。
「──ひとつ大暴れして、津波の規模を拡大しますか」
くそ、やっぱり邪魔して来るんだよな。
まったく、面倒臭いことこの上ない。
巨大化した今なら、後で相手してやるから黙っててくれよ。
しかし、交渉手段ならまだあるぞ。
「おい末っ子! 暴れる前に飯にしないか?」
「──ッ!」
そう告げると、邪竜の動きが一瞬だけ乱れた。
やはり、前から思っていたが末っ子は割とアホ。
素直だ、と思えば良いのだけど。
言い方を変えれば、わがままっこなのである。
「見てきたはずだ、俺が食ってきた美味い飯の数々!」
「……ギャオ」
「食べたいだろ? なあ、食べたいよなあ?」
最悪クサイヤでも付着させて、脅すつもりだった。
この不快感を消して欲しければ、言うこと聞けと。
だが、その必要はなく、末っ子は迷う。
「くっ、儂らの可愛い末っ子を誑かすとは……!」
「落ち着きなさい末の弟。食べたいならこいつを殺せば良いのです」
「は? 殺したらポチも消えるから、末っ子は一生食べれないぞ?」
「ギャォ……」
首を真ん中の長男首に向けて、どうしたら良いかって顔を向ける末っ子。
これは、いけそうな予感がする。
「言うことを聞いてくれれば、食べさせるぞ!」
そんな末っ子の前で、俺は立ってインベントリから出した牛丼を貪った。
秘薬で巨大化している時、インベントリの中身も俺に合わせて巨大化する。
腹が膨れない、なんてことはないのだ。
ポセイドンの時、なぜこの手法を用いなかったかと聞かれれば。
小人の秘薬ペナルティを使いたくなかったからだ。
あと、高級巨人でも大きさは5倍で30秒しか持たないので無理。
そういう理由ね?
「……ギャオー」
どでかい牛丼を貪る俺を見ながら、末っ子はヨダレを垂らしていた。
もう、ダバーッと口からすごい勢いで漏れ出ている。
「食べたいか?」
「ギャオ」
「末の弟、騙されてはいけません! そんなもの食べたらお腹を壊しますよ!」
「弟よ! 騙されるな! そいつは餌で釣って、強制労働させる悪い奴だぞ!」
邪悪の邪の文字を冠する竜が何を言ってるんだか。
二人の説得を無視して、俺は末っ子にのみ話しかける。
「末っ子よく聞け。血の気が多い次男と、無駄に小賢しい長男には飯はやらん。でも、お前には飯をやる」
「ギャオ……?」
首を捻る末っ子に優しく語りかける。
「それはいつも、指輪から食べたそうな気持ちを感じていたからだ!」
「ギャオ」
ぶっちゃけ、嘘だ。
だが、こいつなら食欲と思っていた。
それだけだ。
嘘でも何で飯やって餌付けできたら何でもええねん。
「この先、ずっと俺の指輪として生きていくんなら、楽しみもあった方がいいだろう?」
「ギャオ」
「食べたいなら働こうな?」
「ギャオ」
頷く末っ子。
なんかもう、あんまり邪悪さを感じない。
「でも、お前の兄貴二人がずっと俺を狙って来るから出せないんだよ。対話もできん」
「ギャオギャオ!」
「なに!? 弟、儂らにそろそろ強がりもやめろだって!? 殺すぞ!!」
「末の弟、騙されてはいけませんよ。言葉巧みに操ろうとしているのです」
「ギャオ!」
「食べたい? だったら人間食べれば良いじゃないですか。ロック鳥も美味しいですよ?」
「そうだ! 高純度の魔力を持った魔物を探して食べようぞ! 赤い髪の女とかをだ!」
「ギャオ!」
「は……? 昔は次男の方が美味しいところを食べて、筋とか羽とか食べさせられてた……?」
「ギャオ!」
「そこまで美味しいと思ったこともないし、今まで苦痛に感じていた? それは本当なのですか?」
「ぐっ、そんなことないぞ!」
「ギャオギャオ!」
「私の首が別のところを向いている時に、よく噛み付かれて遊ばれてた? 弟よ、本当ですか?」
「嘘に決まってる! しかもそれは遊びだったんだ!」
「ギャオ!」
「末っ子は嘘をつきませんから、これに関しては少し後で話をしますよ、次男坊」
「うっ、それは……」
何だか雲行きがあやしいぞ、三つの首が兄弟喧嘩を始めてしまった。
その間に、俺は重力を使って波を抑える。
早く終わってくれないかな?
霊気はいまだにマックスでたまる一方だけど、そろそろきついって。
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
間違えられた番様は、消えました。
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ
異世界に召喚されたその日、巻き込まれた青年に俺が得るはずだったスキルを奪われた。
お詫びとしてチートスキルを授かった俺は、第二の人生くらい好きに生きようと旅に出る。
行き着いた先は、寂れた町の場末の酒場だ。
なぜか客は男ばかりだが、日雇い冒険者や恐妻家の肉屋たちとの気楽な毎日は悪くない。
……ただ一人、どう見ても貴族のような美青年がこの地味な酒場へ通ってくる理由だけは、さっぱりわからない。
「お前らツケはやめろ」
そんな穏やかな日々を送っていたはずなのに、ある日、酒場へ厄介な依頼が舞い込んできた――。
他サイトでも掲載しています。
不定期更新です。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。
愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~
女子高生と一緒に異世界へ聖女召喚された、アラサー女子・一ノ瀬玲。
ところが、召喚された二人を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。
聖女として期待される女子高生とは対照的に、玲は年齢を理由に無視され、王城で居場所すら与えられない。
それでも何とか生きようとしていた玲だったが――ある日、食事に毒を盛られる。
「……私、命狙われてる?」
愛犬の柴犬・雷電とチワワのアビーに助けられ、玲は王城から逃げ出すことを決意する。
逃亡先で冒険者となった玲のランクは、まさかのFランク。
そんな玲を助けてくれたのは、辺境へ向かう騎士団長・レオンハルトだった。
そして玲のスマホには、異世界へ来た時から謎の【異世界モード】が存在していた。
【異世界通販】
【異世界銀行】
【アイテム収納】
【マップ】
【翻訳】
【ステータス】
「……これ、もしかしてチートじゃない?」
王家から逃げながら、愛犬たちと辺境を目指す玲。
魔物と戦ったり、旅をしたり、異世界通販で買い物したり。
ちなみに、記念すべき異世界通販の初購入は――犬のウンチ袋。
王城では散々だったけれど、もう戻るつもりはない。
アラサー女子と愛犬たちの、ちょっと騒がしくて、時々ほのぼのな異世界辺境生活が始まります。
初投稿なので誤字脱字
支離滅裂有るかと思います
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!