装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
270 / 650
本編

571 膝枕

しおりを挟む

 通路を抜けると、まず心地よい風が吹いているのを感じた。
 そして、鼻には緑の匂いというか、なんというか。
 視界に映り込んでくるのは、幻想的な樹木の織りなす世界。
 妖精の楽園よりも、もっと楽園チックなそんな場所だった。

「うお、すげぇ……」

 見とれていると、カリプソが言う。

「彼、無駄にディテールだけはこだわるのよねえ」

「怠惰なのにですか?」

 とてもじゃないが、おサボりマンの作るダンジョンではない。
 それくらい綿密に考えられた素晴らしい作りであった。
 そもそもの話、怠惰のままでダンジョンを作ったらまずいな。
 適当に作ってしまっては、すぐに攻略されて狩られてしまう。

「ふふ、やる時はやる男なのよー」

「やる時はやる男ですか」

「そう、サボるためなら全力を出すって言ってたわねー」

 聞いている限り、効率重視なように思える。
 面倒ごとは先にやってしまう、俺とは大違いだ。
 有能さが表れているような気がする。

 俺みたいな底辺人は、全部が全部後回しなんだから。
 そして後回しにして忘れて、えらい目に合う。
 もしくは忘れるのではなく、あえて放置して目を背けるのだ。

「さ、こっちよー」

「はい」

 案内されるがままにカリプソについていくと、森の中にぽっかり空いた空間があった。
 泉を中心として周りを丸く取り囲む草木のほとりに、二人の影が見える。
 近寄ると、俺と同じ黒髪を持った地味目の格好の男が、女の子に膝枕されていた。
 女の子の方は緑色のショートヘアーをした、華奢な体格である。

「スローフー、連れてきたわよー」

「……んーーー」

 カリプソよりも間延びしたような返事。
 あれが、極彩諸島のダンジョンコア……怠惰のスローフか。
 極彩という名前の割には、なんとも地味なやつだった。

 それにしても……。
 昼間っから美少女の膝枕とは、良いご身分である。
 正直、羨ましい。

「二人はスローフとペイル、このダンジョンの主と最終守護ね」

「どうも初めまして、アキノ・トウジです」

「んーー、どーも」

 そのままの体勢で振り向くこともしないスローフ。
 そしてペイルと呼ばれた女の子は見事なまでのシカトだった。

「もー、二人とも振り向くくらいしたら良いんじゃなーい?」

「あー」

「……」

 …………再びの沈黙。
 風に揺れる草木の音の方しか聞こえないレベルだ。

 どうしようかな、これ。
 帰ろっかな。
 なんかもう良いかな。

 おサボりマンだとは聞いていたけど。
 話すことすら困難なレベルとは思わなかった。

 しかし、色々とダンジョンについての話を聞ければと思っていたのだがね。
 極彩諸島の再奥にしかないものをもらえたりとかできればいいな、とかも。

 それにしても良いな膝枕。
 俺も色々と終わったらポチの腹枕で同じようなことをしようかな?
 ポチの腹って、枕にすると最高に良いんだよな?

「もー、ほら貴方たち、来客だから立ちなさいよ、ほらー!」

 困ったように腰に手を当てるカリプソ。

「んー……あと10分だけ……」

「……スローフが10分って言ってるから、20分は見て欲しい」

「貴方たちの10分20分って、平気で10日、20日の世界よねー?」

「細かいことは気にするなー、ペイルの20分と俺の10分を足して30分待って」

「もー、良いからこっち向きなさいってばー」

「ねえ、やっぱ明日にしてくれないー? なんか今日違うわ、うん」

 つかみどころがない男だな……。
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。