装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

文字の大きさ
293 / 650
本編

594 我、ここに、終わりをもたらす者也

しおりを挟む

「おい骨、勇者はお咎めなしってどう言うことだ」

 とばっちりを何とかしてきた俺にカルマがあって、勇者にはない。
 なんだそれは納得いかない、心の底からそう思った。

「そういう生き物だと思っておいた方が無難ですぞ~」

「……まったく理不尽かよ」

 ろくな装備がなくとも、俺の十倍のステータス。
 さらにそこから魔王の力っぽいのを得て二倍。
 この新しい力はまだ成長段階らしく、さらに伸びていくとのこと。
 せっかく追いつこうと思って頑張ったのに、意味ない。

「そういう貴方こそ、私の目には理不尽な存在に映りますぞ」

「は? どこが? 文字通り節穴には言われたくない」

 俺は理不尽ではなく、単純に世の理から逸れているだけ。
 くそ、考えないようにしていたのに

 どこまで頑張ればいい。
 どこまで思い詰めればいい。
 自由に生きていきたいだけなのに、俺が何をした。

 ………………理不尽だ。
 ああ、理不尽だ。

「……トウジ、様……?」

「あのー、すごい形相をしておりますが、私また何か癪に触りました~?」

「え? いや、別に癪に触った訳じゃない」

 ベルダが不安そうな目で俺を見おり、骨も困った声を上げる。
 勇者のことを考えるのはやめておこうか。

 できるだけ関わらないように配慮してもらえているが、今後はそうもいかないだろう。
 ダンジョン攻略が始まってしまえば、俺は嫌でもあいつらと行動しなきゃいかんのだ。
 そこで一々あーだこーだと不満を告げても、この状況はどうにもならん。

「で、俺のカルマがどうしたんだって?」

 話を骨のに戻す。

「正直言うと、ぱっと見でヤバいですぞ」

「だからそのヤバいの詳細を話して欲しいんだけど……」

 昨今、各家庭を訪問する宗教関係者だってパンフレットを持ち歩く。
 自身の宗教が何なのか、他の宗教とどういう違いがあるのか。
 それを玄関先で長々と説明してくれると言うのに……この骨は。

「彼らがノーカルマな理由は、ひとえに勇者であるからですぞ」

「ふーん、勇者だったら何やっても許されるのか?」

 他人の家のタンスやクロゼットを物色し、壺を割り。
 宝物庫の鍵を勝手に開けてアイテムを根こそぎ奪っていく。
 そんなゲーム的構造でもあると言うのだろうか。

「……いや、人の法を犯すことに対しては、裁くのは人ですぞ?」

 私が言っているのは、と骨は続ける。

「この世界の持つコトワリの中で、彼らの様な存在は保護されているのです」

「……コトワリ? 保護?」

 最近そんな世界レベルでものを語る奴が多いなあ。
 大それたことを言われても、一市民の俺にはわからん。

「私もかつては大きなカルマを背負い、こんな姿になってしまいました!」

「え、なに? もともとは肉ついてたの?」

「それはそれは豊満なモノが二つここについていたのですぞ~!」

 自分の胸を抱えるようにクネクネカクカク動く骨。
 こいつ、もともと女だったのか?
 ……ゴレオと同じような、乙女骸骨みたいな感じか。

「嘆かわしや嘆かわしや! 気づいたら骨になり、そして全てのカルマが見えるようになっていたんですぞ~!」

「あっそう……」

「そうして私は気づいたのです。元の体に戻るためには、全ての人々をカルマから解放する……そうつまりは禊!」

「……いや、別に自分語りは聞いてないんですけど」

 コトワリとか保護とか、そういう勇者関連について話して欲しい。
 なんだか俺にとって、かなり重要なことなんじゃないかと思えた。

「余生、と言って良いのか、骨だからわかりませんが……」

「多分違うと思います、はい」

「とにかく貴方の背負いしその膨大なカルマ! 私とともに解き放ちましょう!」

「まーた話聞いてないな……勇者とカルマの話をしてくれ……」

「それはさっきも言いました通り、彼らは保護されノーカルマなのです」

 故に、と骨は顔をぐいっと俺に近づけて言う。

「同じくして召喚された貴方が、何故ここまで大きなカルマを背負うのか、私気になります」

「──ッ!」

 その言葉を聞いたベルダが俺と骨の間に体を割り込ませた。

「まだ箝口令を敷いていると言うに、何故貴方がそれを!」

「箝口令? そんなもの私の前には何の意味も成しませんぞ?」

 ケラケラ笑う骨に聞く。

「それはカルマでわかるってこと?」

「いえいえ、魂の存在が全く持って勇者と同じ様に異質、この世の物じゃない」

「……なるほど」

 それは当たっている、現に俺はこの世界の人間じゃないからな。

「まあ、正解だよ」

 魂が見える理屈が全くわからんのだが、言い当てられたからには頷かない訳にもいかない。
 否定しても話がこじれると言うか、長くなるだけだろうし。
 事前情報としてその辺を頭に入れておいてもらえると、話は早いだろう。

「でも、箝口令が敷かれてるっぽいから黙っててくれると助かるよ」

 だから、あまり他言しない様に言っておいた。

「それはもちろんですぞ~。私、口は固いのです。骨だけに」

「あーはいはい」

「ああっ! 渾身のギャグを流されてしまいましたぞ~!」

 しかし、この世の物じゃない……か。
 馴染んでも馴染んでも、やはり俺は別の世界の異物。
 なんだか、すごくやるせない気持ちになってきた。

 ──だったらどうしろってんだ。

 ろくなスキルも持たずにこの世界に勝手に呼び出されて。
 勝手に使命とか与えられても、俺には何もできないぞ。
 そう言うのは勝手なクソどもの仕事だろ、クソどもの。
 やはりあの時一思いに殺しておくべ──

「…………ト、トウジ……様?」

「ん? ああ、ごめんごめん、なんだっけ?」



「…………これは重症ですなぁ~」
しおりを挟む
感想 9,839

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。