文字の大きさ
大
中
小
294 / 650
本編
595 髪にも栄養は必要
骨にカルマがやばいと言われてから、さらに3日ほどの時間が経過した。
結局、その後カルマを何とかするためには入信しろと言われたので断る。
信じていない訳ではないが、入信して何かが変わる訳ではないのだ。
信じたものは救われる?
それなら救われたら信じるよな?
神様のくせに、もったいぶって、偉そうにって感じがする。
いや、あいつらは常々偉そうにしているのだ。
……さて、そんなことを考えながら目を開ける。
今日は、確か全員に対して呼び出しがかかっていたはずだ。
アドラーからの呼び出し、ついに役目を全うする時である。
「おはようございます、カルマ様」
顔面すれすれに骨の顔があった。
「……まーたいるのか」
入信を断ってからも、この骨はずーっと俺の部屋に足繁く通っている。
どうやら、俺のカルマを減らすことに並々ならぬ情熱を燃やしていた。
これが女の子だったら良かったのに、骨とはなあ……。
「貴方のカルマを禊ぐことが、白骨カルマ禊会教祖の使命ですぞ!」
「ちなみにどこから入って来たの?」
「赤いスカーフを巻いて貴方の従魔だと言うことを告げたら普通に」
セキュリティどうなってるんだ!
従魔なんて出せないっすよーという体裁でいるのに。
全くもってそれが通用してない、今日この頃。
「全力で弱いアピールしてるんだけどなー……マジで何もスキルとか持ってないし……」
「その代わりにカルマは膨大ですぞ?」
「もう帰れよ……」
ダメだな、まともに付き合ってると頭が逝かれそうだ。
ただでさえ、最近頭が重たいと言うのに……。
ストレス、頭が重たい。
あ~。
この二つのワードはダメですね。
やばいですね。
カルマとかそんなのよりも、毛根の方が大事。
大事なんだ、三十路だぞ、大事だろ!
毛根毛根毛根毛根──
「あれ、なんかカルマ少し薄まりましたぞ……?」
「──!?」
それは聞き捨てならなかった。
毛根が死滅するとともに、カルマも消える?
「どう言うことだ、おい骨!!」
「ちょっと揺らさないでください、鎖骨が」
ガッションガッションガッション。
骨の一部が散らばって部屋に転がる。
「カルマと毛根には何か密接な関係があるのか?」
「いや、関係というか……」
募りに募りすぎたカルマは、毛根とともに自然に還るのか!
自然にというか、世界に! ちくしょー!
「入信でハゲないという確証があるなら、お前の禊遊びにも付き合ってやる」
「え、ハゲは普通に遺伝とか環境に依存する者ですから、私は知りませんぞ」
「……」
環境、遺伝。
遺伝の心配はないと思いたいのだが、環境が問題だ。
「くそー、さっさとこの状況から逃れて美味い飯が食いたい……」
「中々に我欲が突き抜けた方ですな。そりゃカルマも溜まりますぞ」
「別に好きで呼び出されたんじゃないから、自由に生きたって良いだろ」
「その通りですぞ~、その自由を掴むべく、私と一緒に禊を」
「みそぎみそぎと言うが、何をすれば良いんだよ、具体的に」
六大性質をあげる一環で、物を人に渡すことはたまにしている。
慈善事業という訳ではないが、ギリスで浮浪者救済だってした。
これを禊と言わずして、なんと言う。
「まあまあ、焦っても仕方ありませんから、その都度私が言いますぞ」
「なんだよそれ」
戒律クエストみたいな感じだな……。
骨はケラケラ笑いながら部屋に備え付けられたソファに座ると、テーブルの横に置かれたワゴンを見ながら言う。
侍女が運んで来てくれた俺の朝食だな。
「それにしても、3日ほど貴方を見ていましたが、今日もご飯は食べないんですな?」
「ん? ああ、まあ……食欲ないしな……」
城下町の露店で売られていたソーセージを一本買って食べてみたが、やっぱり味はしなかった。
ストレスな状況では味覚も狂ってしまうと言うが、それをまじまじと実感させられる。
「と、言うことは私と同じ骨化の素質があり?」
「アホ抜かせ。ちゃんと皮も肉も内臓もある」
「でも世間一般的には骨野郎って貴方みたいな方を指しますぞ?」
「ぐっ」
こいつは俺を禊に来たのか、それともからかいに来たのか。
どっちなんだ。
「まあ良いよ、しばらく食べなくても生きてけるから」
ステータスが高い分、俺は前に比べてしぶとい人間だ。
装備を外すと途端に死にそうだが、クロイツで外す気は無い。
餓死する寸前で、俺にはやっぱり無理だ、と泣きつく。
非暴力抵抗運動の方法の一つで、断食を行うストライキの一種。
ハンガー・ストライキという手法だ。
「非暴力非服従っていう言葉があるからな、俺の故郷には」
「ほお、身を犠牲にして訴えるとは、まさしく禊ですぞ~」
でも、と骨は言う。
「しっかりとした栄養をとりませんと、髪にも悪かろうですぞ」
「……ぐっ」
「とにかく私は開発した精進骨料理をかじりなさいな」
手渡されたのは、白骨だった。
「な、なんだこれ……料理……?」
「粉末にして料理にかけて食べることによって、回復しますぞ」
「ごめん、こう言うのはNGで。なんの骨かもわからんし」
「私の余った骨ですぞ」
余っちゃダメじゃないの、普通?
つーか、骨を食うとかマジNGで。
それなら自分のポーション飲むよ。
飲み水感覚でな。
「教祖命令!」
「入信してないから、無効」
「イケずですぞ~! 毛根にもよく効くんですぞ~!」
「毛根すらねぇお前に言われても説得力ないだろ……」
くねくね動く骨に呆れた視線を送っていると、ドアが開いた。
「トウジ様、アドラー様がお呼びです。皆さますでに出席しています」
呼び出しである。
ついに、英気を養う期間も終わり、俺たちはダンジョン攻略に乗り出すのだ。
結局、その後カルマを何とかするためには入信しろと言われたので断る。
信じていない訳ではないが、入信して何かが変わる訳ではないのだ。
信じたものは救われる?
それなら救われたら信じるよな?
神様のくせに、もったいぶって、偉そうにって感じがする。
いや、あいつらは常々偉そうにしているのだ。
……さて、そんなことを考えながら目を開ける。
今日は、確か全員に対して呼び出しがかかっていたはずだ。
アドラーからの呼び出し、ついに役目を全うする時である。
「おはようございます、カルマ様」
顔面すれすれに骨の顔があった。
「……まーたいるのか」
入信を断ってからも、この骨はずーっと俺の部屋に足繁く通っている。
どうやら、俺のカルマを減らすことに並々ならぬ情熱を燃やしていた。
これが女の子だったら良かったのに、骨とはなあ……。
「貴方のカルマを禊ぐことが、白骨カルマ禊会教祖の使命ですぞ!」
「ちなみにどこから入って来たの?」
「赤いスカーフを巻いて貴方の従魔だと言うことを告げたら普通に」
セキュリティどうなってるんだ!
従魔なんて出せないっすよーという体裁でいるのに。
全くもってそれが通用してない、今日この頃。
「全力で弱いアピールしてるんだけどなー……マジで何もスキルとか持ってないし……」
「その代わりにカルマは膨大ですぞ?」
「もう帰れよ……」
ダメだな、まともに付き合ってると頭が逝かれそうだ。
ただでさえ、最近頭が重たいと言うのに……。
ストレス、頭が重たい。
あ~。
この二つのワードはダメですね。
やばいですね。
カルマとかそんなのよりも、毛根の方が大事。
大事なんだ、三十路だぞ、大事だろ!
毛根毛根毛根毛根──
「あれ、なんかカルマ少し薄まりましたぞ……?」
「──!?」
それは聞き捨てならなかった。
毛根が死滅するとともに、カルマも消える?
「どう言うことだ、おい骨!!」
「ちょっと揺らさないでください、鎖骨が」
ガッションガッションガッション。
骨の一部が散らばって部屋に転がる。
「カルマと毛根には何か密接な関係があるのか?」
「いや、関係というか……」
募りに募りすぎたカルマは、毛根とともに自然に還るのか!
自然にというか、世界に! ちくしょー!
「入信でハゲないという確証があるなら、お前の禊遊びにも付き合ってやる」
「え、ハゲは普通に遺伝とか環境に依存する者ですから、私は知りませんぞ」
「……」
環境、遺伝。
遺伝の心配はないと思いたいのだが、環境が問題だ。
「くそー、さっさとこの状況から逃れて美味い飯が食いたい……」
「中々に我欲が突き抜けた方ですな。そりゃカルマも溜まりますぞ」
「別に好きで呼び出されたんじゃないから、自由に生きたって良いだろ」
「その通りですぞ~、その自由を掴むべく、私と一緒に禊を」
「みそぎみそぎと言うが、何をすれば良いんだよ、具体的に」
六大性質をあげる一環で、物を人に渡すことはたまにしている。
慈善事業という訳ではないが、ギリスで浮浪者救済だってした。
これを禊と言わずして、なんと言う。
「まあまあ、焦っても仕方ありませんから、その都度私が言いますぞ」
「なんだよそれ」
戒律クエストみたいな感じだな……。
骨はケラケラ笑いながら部屋に備え付けられたソファに座ると、テーブルの横に置かれたワゴンを見ながら言う。
侍女が運んで来てくれた俺の朝食だな。
「それにしても、3日ほど貴方を見ていましたが、今日もご飯は食べないんですな?」
「ん? ああ、まあ……食欲ないしな……」
城下町の露店で売られていたソーセージを一本買って食べてみたが、やっぱり味はしなかった。
ストレスな状況では味覚も狂ってしまうと言うが、それをまじまじと実感させられる。
「と、言うことは私と同じ骨化の素質があり?」
「アホ抜かせ。ちゃんと皮も肉も内臓もある」
「でも世間一般的には骨野郎って貴方みたいな方を指しますぞ?」
「ぐっ」
こいつは俺を禊に来たのか、それともからかいに来たのか。
どっちなんだ。
「まあ良いよ、しばらく食べなくても生きてけるから」
ステータスが高い分、俺は前に比べてしぶとい人間だ。
装備を外すと途端に死にそうだが、クロイツで外す気は無い。
餓死する寸前で、俺にはやっぱり無理だ、と泣きつく。
非暴力抵抗運動の方法の一つで、断食を行うストライキの一種。
ハンガー・ストライキという手法だ。
「非暴力非服従っていう言葉があるからな、俺の故郷には」
「ほお、身を犠牲にして訴えるとは、まさしく禊ですぞ~」
でも、と骨は言う。
「しっかりとした栄養をとりませんと、髪にも悪かろうですぞ」
「……ぐっ」
「とにかく私は開発した精進骨料理をかじりなさいな」
手渡されたのは、白骨だった。
「な、なんだこれ……料理……?」
「粉末にして料理にかけて食べることによって、回復しますぞ」
「ごめん、こう言うのはNGで。なんの骨かもわからんし」
「私の余った骨ですぞ」
余っちゃダメじゃないの、普通?
つーか、骨を食うとかマジNGで。
それなら自分のポーション飲むよ。
飲み水感覚でな。
「教祖命令!」
「入信してないから、無効」
「イケずですぞ~! 毛根にもよく効くんですぞ~!」
「毛根すらねぇお前に言われても説得力ないだろ……」
くねくね動く骨に呆れた視線を送っていると、ドアが開いた。
「トウジ様、アドラー様がお呼びです。皆さますでに出席しています」
呼び出しである。
ついに、英気を養う期間も終わり、俺たちはダンジョン攻略に乗り出すのだ。
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています(旧:いらないと言ったのはあなたの方なのに)
水谷繭※7/30書籍発売予定です!6/29まで公開します。
完結まで一括投稿済。
なろうの方では削除する予定はありませんので、読み途中たけれど読みきれないという場合はそちらでお願いします☺️
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました
◆小説家になろうにも投稿しています
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
処刑されるはずだった没落令嬢ですが、姫様の初夜を身代わりしたら子を授かりました
新 星緒没落伯爵令嬢のエルゼは大恩がある姫様を救うために、初夜の身代わりを引き受ける。
そして姫様や国を守るために誰にも行く先を告げずに国を去った。
三年後。初夜の晩に息子ヴァルターを授かっていたエルゼは、ひっそりと暮らしていた。ところが元婚約者に拉致られて、あわやというところに初夜の相手であるハインツ王子が現れる。
「ようやく見つけた。エルゼ、愛している」
「初夜の相手が君だと最初からわかっていたが?」
――身代わり初夜から始まる、純愛溺愛執着愛のお話!