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本編
595 髪にも栄養は必要
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骨にカルマがやばいと言われてから、さらに3日ほどの時間が経過した。
結局、その後カルマを何とかするためには入信しろと言われたので断る。
信じていない訳ではないが、入信して何かが変わる訳ではないのだ。
信じたものは救われる?
それなら救われたら信じるよな?
神様のくせに、もったいぶって、偉そうにって感じがする。
いや、あいつらは常々偉そうにしているのだ。
……さて、そんなことを考えながら目を開ける。
今日は、確か全員に対して呼び出しがかかっていたはずだ。
アドラーからの呼び出し、ついに役目を全うする時である。
「おはようございます、カルマ様」
顔面すれすれに骨の顔があった。
「……まーたいるのか」
入信を断ってからも、この骨はずーっと俺の部屋に足繁く通っている。
どうやら、俺のカルマを減らすことに並々ならぬ情熱を燃やしていた。
これが女の子だったら良かったのに、骨とはなあ……。
「貴方のカルマを禊ぐことが、白骨カルマ禊会教祖の使命ですぞ!」
「ちなみにどこから入って来たの?」
「赤いスカーフを巻いて貴方の従魔だと言うことを告げたら普通に」
セキュリティどうなってるんだ!
従魔なんて出せないっすよーという体裁でいるのに。
全くもってそれが通用してない、今日この頃。
「全力で弱いアピールしてるんだけどなー……マジで何もスキルとか持ってないし……」
「その代わりにカルマは膨大ですぞ?」
「もう帰れよ……」
ダメだな、まともに付き合ってると頭が逝かれそうだ。
ただでさえ、最近頭が重たいと言うのに……。
ストレス、頭が重たい。
あ~。
この二つのワードはダメですね。
やばいですね。
カルマとかそんなのよりも、毛根の方が大事。
大事なんだ、三十路だぞ、大事だろ!
毛根毛根毛根毛根──
「あれ、なんかカルマ少し薄まりましたぞ……?」
「──!?」
それは聞き捨てならなかった。
毛根が死滅するとともに、カルマも消える?
「どう言うことだ、おい骨!!」
「ちょっと揺らさないでください、鎖骨が」
ガッションガッションガッション。
骨の一部が散らばって部屋に転がる。
「カルマと毛根には何か密接な関係があるのか?」
「いや、関係というか……」
募りに募りすぎたカルマは、毛根とともに自然に還るのか!
自然にというか、世界に! ちくしょー!
「入信でハゲないという確証があるなら、お前の禊遊びにも付き合ってやる」
「え、ハゲは普通に遺伝とか環境に依存する者ですから、私は知りませんぞ」
「……」
環境、遺伝。
遺伝の心配はないと思いたいのだが、環境が問題だ。
「くそー、さっさとこの状況から逃れて美味い飯が食いたい……」
「中々に我欲が突き抜けた方ですな。そりゃカルマも溜まりますぞ」
「別に好きで呼び出されたんじゃないから、自由に生きたって良いだろ」
「その通りですぞ~、その自由を掴むべく、私と一緒に禊を」
「みそぎみそぎと言うが、何をすれば良いんだよ、具体的に」
六大性質をあげる一環で、物を人に渡すことはたまにしている。
慈善事業という訳ではないが、ギリスで浮浪者救済だってした。
これを禊と言わずして、なんと言う。
「まあまあ、焦っても仕方ありませんから、その都度私が言いますぞ」
「なんだよそれ」
戒律クエストみたいな感じだな……。
骨はケラケラ笑いながら部屋に備え付けられたソファに座ると、テーブルの横に置かれたワゴンを見ながら言う。
侍女が運んで来てくれた俺の朝食だな。
「それにしても、3日ほど貴方を見ていましたが、今日もご飯は食べないんですな?」
「ん? ああ、まあ……食欲ないしな……」
城下町の露店で売られていたソーセージを一本買って食べてみたが、やっぱり味はしなかった。
ストレスな状況では味覚も狂ってしまうと言うが、それをまじまじと実感させられる。
「と、言うことは私と同じ骨化の素質があり?」
「アホ抜かせ。ちゃんと皮も肉も内臓もある」
「でも世間一般的には骨野郎って貴方みたいな方を指しますぞ?」
「ぐっ」
こいつは俺を禊に来たのか、それともからかいに来たのか。
どっちなんだ。
「まあ良いよ、しばらく食べなくても生きてけるから」
ステータスが高い分、俺は前に比べてしぶとい人間だ。
装備を外すと途端に死にそうだが、クロイツで外す気は無い。
餓死する寸前で、俺にはやっぱり無理だ、と泣きつく。
非暴力抵抗運動の方法の一つで、断食を行うストライキの一種。
ハンガー・ストライキという手法だ。
「非暴力非服従っていう言葉があるからな、俺の故郷には」
「ほお、身を犠牲にして訴えるとは、まさしく禊ですぞ~」
でも、と骨は言う。
「しっかりとした栄養をとりませんと、髪にも悪かろうですぞ」
「……ぐっ」
「とにかく私は開発した精進骨料理をかじりなさいな」
手渡されたのは、白骨だった。
「な、なんだこれ……料理……?」
「粉末にして料理にかけて食べることによって、回復しますぞ」
「ごめん、こう言うのはNGで。なんの骨かもわからんし」
「私の余った骨ですぞ」
余っちゃダメじゃないの、普通?
つーか、骨を食うとかマジNGで。
それなら自分のポーション飲むよ。
飲み水感覚でな。
「教祖命令!」
「入信してないから、無効」
「イケずですぞ~! 毛根にもよく効くんですぞ~!」
「毛根すらねぇお前に言われても説得力ないだろ……」
くねくね動く骨に呆れた視線を送っていると、ドアが開いた。
「トウジ様、アドラー様がお呼びです。皆さますでに出席しています」
呼び出しである。
ついに、英気を養う期間も終わり、俺たちはダンジョン攻略に乗り出すのだ。
結局、その後カルマを何とかするためには入信しろと言われたので断る。
信じていない訳ではないが、入信して何かが変わる訳ではないのだ。
信じたものは救われる?
それなら救われたら信じるよな?
神様のくせに、もったいぶって、偉そうにって感じがする。
いや、あいつらは常々偉そうにしているのだ。
……さて、そんなことを考えながら目を開ける。
今日は、確か全員に対して呼び出しがかかっていたはずだ。
アドラーからの呼び出し、ついに役目を全うする時である。
「おはようございます、カルマ様」
顔面すれすれに骨の顔があった。
「……まーたいるのか」
入信を断ってからも、この骨はずーっと俺の部屋に足繁く通っている。
どうやら、俺のカルマを減らすことに並々ならぬ情熱を燃やしていた。
これが女の子だったら良かったのに、骨とはなあ……。
「貴方のカルマを禊ぐことが、白骨カルマ禊会教祖の使命ですぞ!」
「ちなみにどこから入って来たの?」
「赤いスカーフを巻いて貴方の従魔だと言うことを告げたら普通に」
セキュリティどうなってるんだ!
従魔なんて出せないっすよーという体裁でいるのに。
全くもってそれが通用してない、今日この頃。
「全力で弱いアピールしてるんだけどなー……マジで何もスキルとか持ってないし……」
「その代わりにカルマは膨大ですぞ?」
「もう帰れよ……」
ダメだな、まともに付き合ってると頭が逝かれそうだ。
ただでさえ、最近頭が重たいと言うのに……。
ストレス、頭が重たい。
あ~。
この二つのワードはダメですね。
やばいですね。
カルマとかそんなのよりも、毛根の方が大事。
大事なんだ、三十路だぞ、大事だろ!
毛根毛根毛根毛根──
「あれ、なんかカルマ少し薄まりましたぞ……?」
「──!?」
それは聞き捨てならなかった。
毛根が死滅するとともに、カルマも消える?
「どう言うことだ、おい骨!!」
「ちょっと揺らさないでください、鎖骨が」
ガッションガッションガッション。
骨の一部が散らばって部屋に転がる。
「カルマと毛根には何か密接な関係があるのか?」
「いや、関係というか……」
募りに募りすぎたカルマは、毛根とともに自然に還るのか!
自然にというか、世界に! ちくしょー!
「入信でハゲないという確証があるなら、お前の禊遊びにも付き合ってやる」
「え、ハゲは普通に遺伝とか環境に依存する者ですから、私は知りませんぞ」
「……」
環境、遺伝。
遺伝の心配はないと思いたいのだが、環境が問題だ。
「くそー、さっさとこの状況から逃れて美味い飯が食いたい……」
「中々に我欲が突き抜けた方ですな。そりゃカルマも溜まりますぞ」
「別に好きで呼び出されたんじゃないから、自由に生きたって良いだろ」
「その通りですぞ~、その自由を掴むべく、私と一緒に禊を」
「みそぎみそぎと言うが、何をすれば良いんだよ、具体的に」
六大性質をあげる一環で、物を人に渡すことはたまにしている。
慈善事業という訳ではないが、ギリスで浮浪者救済だってした。
これを禊と言わずして、なんと言う。
「まあまあ、焦っても仕方ありませんから、その都度私が言いますぞ」
「なんだよそれ」
戒律クエストみたいな感じだな……。
骨はケラケラ笑いながら部屋に備え付けられたソファに座ると、テーブルの横に置かれたワゴンを見ながら言う。
侍女が運んで来てくれた俺の朝食だな。
「それにしても、3日ほど貴方を見ていましたが、今日もご飯は食べないんですな?」
「ん? ああ、まあ……食欲ないしな……」
城下町の露店で売られていたソーセージを一本買って食べてみたが、やっぱり味はしなかった。
ストレスな状況では味覚も狂ってしまうと言うが、それをまじまじと実感させられる。
「と、言うことは私と同じ骨化の素質があり?」
「アホ抜かせ。ちゃんと皮も肉も内臓もある」
「でも世間一般的には骨野郎って貴方みたいな方を指しますぞ?」
「ぐっ」
こいつは俺を禊に来たのか、それともからかいに来たのか。
どっちなんだ。
「まあ良いよ、しばらく食べなくても生きてけるから」
ステータスが高い分、俺は前に比べてしぶとい人間だ。
装備を外すと途端に死にそうだが、クロイツで外す気は無い。
餓死する寸前で、俺にはやっぱり無理だ、と泣きつく。
非暴力抵抗運動の方法の一つで、断食を行うストライキの一種。
ハンガー・ストライキという手法だ。
「非暴力非服従っていう言葉があるからな、俺の故郷には」
「ほお、身を犠牲にして訴えるとは、まさしく禊ですぞ~」
でも、と骨は言う。
「しっかりとした栄養をとりませんと、髪にも悪かろうですぞ」
「……ぐっ」
「とにかく私は開発した精進骨料理をかじりなさいな」
手渡されたのは、白骨だった。
「な、なんだこれ……料理……?」
「粉末にして料理にかけて食べることによって、回復しますぞ」
「ごめん、こう言うのはNGで。なんの骨かもわからんし」
「私の余った骨ですぞ」
余っちゃダメじゃないの、普通?
つーか、骨を食うとかマジNGで。
それなら自分のポーション飲むよ。
飲み水感覚でな。
「教祖命令!」
「入信してないから、無効」
「イケずですぞ~! 毛根にもよく効くんですぞ~!」
「毛根すらねぇお前に言われても説得力ないだろ……」
くねくね動く骨に呆れた視線を送っていると、ドアが開いた。
「トウジ様、アドラー様がお呼びです。皆さますでに出席しています」
呼び出しである。
ついに、英気を養う期間も終わり、俺たちはダンジョン攻略に乗り出すのだ。
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