装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

596 最初に挑戦するダンジョン

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 呼び出された部屋の円卓には、すでに全員が座していた。
 すぐに勇者が立ち上がり、叫ぶ。

「アキノトウジ! 人を待たせるとは、良いご身分だな!」

「……」

 勇者を一瞥した俺は、無視して自分の所定の席に座った。
 ちなみにこの間、ベルダと骨は俺の後ろに待機している。
 勝手についてくるから、放置だ。

「無視するな!」

「まあまあ、それでは全員揃ったことですから、話を始めましょうか」

 憤慨する勇者を宥めたアドラーが、本題を告げる。
 話が早くて大助かりだ。

「では簡潔に述べますが、あなた方の行き先は八大迷宮の魂枯砂漠です」

 魂枯砂漠……確か、魔国よりさらに東の砂漠に存在する大迷宮。
 しかし、よりにもよってそこか……。
 近場の深淵樹海や、魔国に存在する夢幻桜街が先かと思っていた。

 スローフが言っていた、強欲のグリードがいるヤバいダンジョン。
 強欲vs勇者の戦いが幕をあける訳ね。

「王様、何故そこなんですか?」

「勇者様は、魂枯砂漠が不満なんですか?」

「近場があると思います。それに慣れている奈落墓標の方が踏破しやすいはず」

 勇者の質問に、アドラーは返す。

「ああ、それは外交上の都合ですよ」

 デプリとの関係性はあまりよろしく無いから、奈落墓標はNG。
 比較的近場に存在する深淵樹海と魔国領内に存在する夢幻桜街。
 こちらもその恩恵を受ける国からの圧力で、一旦ストップ。

 再召喚外交は、あくまで勇者と魔王の対立阻止が名目である。
 諸々の理由で、どこにも属さず、色々と面倒な場所が槍玉に上がったそうだ。
 それを聞いた勇者が立ち上がって進言する。

「王様、俺もダンジョン踏破は良いことだと思う!」

「そう言っていただけてありがとうございます」

「だからこそ、上の都合で後回しにするより、近場を先に叩くべきです!」

「あまり意見を無視して顰蹙を買うものではありませんよ、勇者様」

 勇者の意見に、アドラーは優しく諭すように言い返す。

「勇者と魔王の二つの力をその身に宿す存在が暴れ回ることの脅威」

「……しかし、手っ取り早いなら……」

「達成した後のことを考えるならば、今は決議された場所へと向かうべきです」

 うーん、話せば話すほどに違和感がすごいな。
 勇者より若い少年の言葉とは、到底思えない。

 このアドラー5世はいったいなのだろうか。
 明らかに見た目から逸脱した存在に感じる。
 骨も会議に参列しているから、後でどう見えたか聞いておこうか。
 カルマの他に、魂も見えるらしいからね、こいつ。

「魂枯砂漠は、東の不毛の地に存在する未踏域。どの国の思惑も関与しない大迷宮」

「……」

 黙って話を聞く俺たちに、アドラーは言う。

「難易度的には一番大変な部類ですから、先にそこを叩きましょう。後が楽ですよ」

 俺たちは彼の言葉に頷いた。
 概ね、彼の意見に納得したと言うことである。

 他の国の思惑が絡まない場所。
 そして一番難易度が高いと言われる場所。
 新生勇者の力を試すには絶好の場所だ。

 なんとも、臭いものを端っこに追いやる。
 そんな思惑が見えないこともないのだが……。
 召喚されてしまってるものは仕方ない。

「王様、この世界のダンジョンは全て俺たち勇者が駆逐して見せます」

「そうですか、期待していますよ」



 それから、具体的な位置と移動経路、補給位置などを教えられた。
 俺たちは一度魔国へと向かい、そしてそこから東方へ。

 今までは、教団関係者が勇者をサポートしていたが今日からは違う。
 勇者御一行単独での冒険だ。

 誰からの思惑も混ざらないように自由にさせる意味を持つ。
 しかし、魔国の一部は未だ勇者に対して良くない感情の人もいるから。
 そう言う人たちへの配慮ということで、基本的には身分を隠すそうだ。

 まあ、戦争後の歴史的な問題は、根深いところは根深いというものよ。
 豚王のおかげで、一時期はそこに燃料が投入されたような形だしな。
 影響を考えると、それはかなり重要なものになる。

 ちなみに、未だ何もできない体裁でいる俺の役目はというと……。

「物資は全てアキノトウジに持ってもらおう、アイテムボックス持ちだから」(勇者)

「そうですね、ろくな戦力もないのならば、そこで役に立って貰いませんと」(聖女)

「あのさ、一人に負担を強いて仲間割れを誘発する様なことはよくないって」(賢者)

「私はこの旅についてこれない軟弱者は必要ないから、そもそも同行拒否だ」(剣聖)

 こんな感じの勇者一行会議で荷物持ちが決定した。
 デプリで荷物持ちをしていたことがバレているから、隠し通せなかった。
 格して、勇者一行の荷物持ちとして、俺も一緒に旅に出ることとなる。

「……散々な言われ様でしたな~」

「骨、お前もアイテムボックス持ちだろ? 代わりに行ってきてくれない?」

「うーん、あの中に一人で混じるのは心が折れそうなのでやめておきますぞ」

「折れるのは骨だけで十分ってこと?」

「その通り! 先に持ちネタを潰してくるとは、なんというボケ殺しぞッ!」

 ……まあ、骨でも話し相手になるのはありがたいと思った。
 カルマがどうとか煩いが、その煩さが心地よいのである。

 ちなみに、今の今もサモンモンスターを召喚しない理由。
 サモンモンスターを召喚すると、さらにこき使われそうだから。
 ギリスの守りを固めるためにも、今はさすがに出せんのだ……。

 コレクトを戻して、ロイ様を側に置くという手も使える。
 しかしながら、コレクトは俺の心を読み取ることができる。
 俺が生きていて安全である、という疎通係となってくれるのだ。

 とりあえず今日も一発、念じておくか!
 ポチ恋しい、ご飯食べたい、骨うざい、勇者死ね。
 みんなに会いたい、イグニール、マイヤー、ジュノー。

「二人で一緒にカルマ減らして生きましょうね~? きゃっ!」

「死ね」

 まったく何がどうしてこんな骨と二人っきりなんだ。
 くそが骨死ね、勇者死ね。

「あっ、まーたカルマ増えてますな。顔が怖いとカルマ増えるってすごい体質ですぞ」

「黙れ」

 そんな体質あってたまるか。
 それと俺は顔が怖いなんて、生まれてこの方言われたことないわ!



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