装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

609 俺、魔王倒しちゃってました?

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 勇者の元へ向かう道すがら、コレクトが地図を発見した。
 施設案内の様なものである。

 俺が施設内をマップ登録できたら良いのにな、と思った矢先。
 やはり、何かを探すという直感において、コレクトは強い。

「出来した」

「クエ」

 さっそく地図を読み取り、マップ機能に登録した。
 ふむふむ、この場所は施設というより軍師の邸宅。
 俺らをバインドした奴の家ということだった。

 アドラーから事前に渡されていた魔国の地図でいうと北の方。
 魔国へ渡るためには、どうしても避けては通れない場所だな。

 俺が閉じ込められていたのは別棟地下にある牢屋。
 勇者たちが表示されている場所は、地上の大きな建物。
 距離はそこまで遠くないから、あっさりと着きそうだ。

「つーか、よくここまでこれたな……」

 マップを見ながら改めてそう思う。

「ウィンストが乗せてきてくれたのか?」

 ギリスからクロイツまでの距離。
 陸路じゃひと月以上は絶対にかかってしまう。
 俺が再召喚されて、約半月くらいか?
 いや、眠っていた期間も含めるともっと経つのか。
 それでも1ヶ月は経過していないぞ。 

「ううん、ウィンストはトガルの守護だから来てないわね」

 イグニールは首を横に振りながらいう。

「ここまでこの早さで来れた理由は、飛空船よ」

「飛空船?」

「トウジが想像してる様な大きなものじゃないけどね」

 どうやら、俺がいなくなってから飛空船の運行実験があったそうだ。
 この間見た様な小型船舶の様なものでの飛行実験。
 それに便乗する形で、イグニールたちはここまで来たらしい。

「よく来れたな……」

「多少トラブルはあったけど、実験はとりあえず成功ね」

 現に彼女たちがここにいるのだから、そりゃそうである。
 オスローの着手していた飛空船は、無事実験を終えたそうだ。

「でも船壊れちゃったし、オスローカンカンに怒ってたし」

「え? オスローも来てるの?」

「うん、オカロも来てるよ。森に隠した船を頑張って直してるところだし!」

 操船できる人ともなれば、あの二人しかいない。
 だからついて来るのも物の通りってやつか。

 想定外の長距離飛行によって、飛空船の推進器がいかれてしまったらしい。
 ヒヒイロカネのコアと竜樹を使った船体は無事だが、他が保たなかったそうだ。

 なるほどねえ……。
 推進器の部分もヒヒイロカネに変えれば良いじゃないかな。
 俺のインベントリとか、ヒヒイロカネも1000個単位あるし。
 帰ったら渡そう。

「つーか、二人残して来て大丈夫なのか?」

「トウジを見つけたらすぐ戻る予定だったから」

「なるほど」

 だったら、勇者の元に大所帯で行くのもあれだ。
 俺は一度ゴレオを戻してロイ様を召喚した。

「ふむ、図鑑の中からだと、かなり久しぶりの顔ぶれだな」

「そうだな。話は聞いてたと思うけど、頼む」

「良かろう。王室諸君全員であの親子を守護しよう」

 召喚していたポチたち以外は、精神世界を共にしていた訳だ。
 それ故のセリフだろう。
 何にせよ、全て分かっているならば話は早いので任す。

「私本体は盟主の元にいても良いか?」

「え? うん、良いけど」

 王室の仲良し連中がいれば、雑魚相手だったら余裕だろうしね。
 数の暴力はえげつないのだ。

「私も少しだけ気がかりなことがあってな、それを確かめる」

「気がかり?」

「盟主は力の源の中で、リソースをほとんど消滅させた」

「あっうん」

 散々荒らし回ったりしたことね。
 それがどうしたのだろうか。

「そして、怨嗟の鎖のモースと同じ様に、瓶の中に隔離した」

「これか」

 懐に入れていた小瓶を取り出すと、ジュノーが言った。

「あっ! パンケーキの元!」

「いや、違うんだが……」

 まあいいか。
 どうせ苦痛のカンカンをジュノーにやらせる訳だし。
 ちなみに幸せ攻撃が効くかはわからないので、他の精神異常系も試す。
 この概念体は、恋、快感、怒り、不快などの感情系異常攻撃の的だ。

「……話の腰を折る様だけど。魔王の力がどうしたのかしら?」

「ああ、俺が再召喚された前提なんだけど……」

 と、いう感じで早歩きしながらみんなに説明した。
 呼ばれた理由、役割。
 魔王の力に洗脳攻撃受けて骨が守っていたこと。
 その後、精神世界に呼ばれて邪竜にボコってもらったこと。

「……に、俄かには信じがたいですが……トウジ様の魂に変なのがいないところを見るに、真実ですぞぉ……」

 イグニールたちは、そんなことやってたんか的な目をするが、骨は大口を開けて驚いていた。
 この反応もなかなかに久しぶりって感じである。

「まっ、力の源。通称ゲンさんはコテンパンにして封じたから俺は安心だ」

「……トウジ、これって魔王倒しちゃったってことじゃないの?」

 イグニールの素朴な疑問。
 た、確かに……。
 ある意味倒したと言っても過言ではないのかもしれない。

 マジか……。
 知らんうちに勇者の役目も奪い去ってしまってたのか?

 いや、そもそも実質これで倒せたのかはわからん。
 単純に俺の目の届くところに置いたって訳なのだ。
 消し去ることはできないが、それは抑止力となる。
 そこを切り取って考えると、倒したと言って良い。

「とにかく、その話は後にして私の話を聞いてくれ盟主」

「うん。なんですかロイ様」

「力の源が封じ込められた。だったら勇者の中にあるものはどうなる?」

「……わからん」

 どうなるんだろう。
 単純に考えて、勇者弱くなるってことで良いのでは?
 魔王の力が弱まれば、それはただの勇者だ。
 良いことじゃん。

「勇者たちを連れ去ったあの女は、勇者の中にある魔王の力を増幅させる気だ」

「どうやって」

「それは知らんが、主が気絶する直前傀儡とかそんなことを言っていたから、何かしらの策があると言える」

「うん……」

「そこで、力の源を大きく削いだということは、勇者たちの中にあるものも自ずと弱まる」

 ロイ様は言う。

「使い物にならないという烙印を押されたら、魔国の敵である勇者はどうなる」

「……そりゃ」

 魔国の保守的な立場の人間だったら、拘束している間に殺す。
 絶対にそうする。
 んで、事故だったという体裁をとって遺体を返せばいい。
 いやむしろそのままどっかで朽ちても、この世界じゃ普通だ。

「不味いな」

「急ぐべきだ。さらに王室諸君と思念会議した結果」

「結果?」

「勇者もただでは殺されないだろうという結論になった」

「うん?」

「魔王と同じ様に、力の源というものが必ず存在するとしたら──ヤバイと」

 仲良し諸君、会議の結論がかなりふわっとしてるぞ。
 でも、あながちその回答は間違いではないのかもしれない。







=====
其の者は黒き衣をまといて、大量の従魔を従え、一撃では絶対に死なず、魔物の力を利用して死んでも帳消しになり、爆速で空を飛び、ダンジョンを持ち、邪竜と共に荒地の野に降り立ったものなり。(トウジ)
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