装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

629 過去の痕跡とおサボり司書職・5

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「──元祖アメリカンドッグ一つくれ!」

「はいよ!」

「俺はバタードッグってやつ!」

「おいさ!」

 寂れた公園に、朝から元気な声が響く。
 俺は、シルビアの屋台をポチと一緒に手伝っていた。

 過去の勇者について骨に聞くのは、一旦後回し。
 ギリスに戻ってからでも良いのだ。
 クロイツにいるのはなんだかんだ今だけだから。

「アォン!」

 オーダーを高速で消化していくポチの声。

「おっさん、できたってさー」

「おう!」

 すぐに湯切りして、シルビアの声に合わせて袋詰め。
 俺から品物を受け取ったらシルビアがお客さんに渡す。
 そんな、アメリカンドッグのリレーが行われていた。

 シルビア料理しないのかって?
 最初は顔を売るようなものだった。

 こだわった料理の味で勝負してる訳ではない。
 シルビアもそれがわかっているので、接客に従事していた。
 そう、あとあと練習すれば良いんだよ、料理は。

 何ならアルバート商会、そしてパインのおっさんとも組ませる。
 美味しい物には目がない二人も参入させて資本は倍増。

 ゆくゆくは、アメリカンドッグではなく。
 普通のファーストフードのチェーンを作ろうじゃないか!
 シルビアキッチン的な?

「トウジ、チーズドッグ2オーダーだ!」

「持ち帰りですか? 食べていかれますか?」

「食べていくってさ!」

「了解です。テーブル準備してきます!」

 場所が公園を使ったゲリラ屋台なのだが、それが功を奏する。
 なんたって、もともと閑散としてて寂れてるからね。
 テーブルとか置いちゃったりしても、文句は言われないのだ。

「こちらへどうぞー」

 インベントリから出して設置していたテーブルに客を案内する。
 何だか今まで殺伐とした冒険ばかりだったから、新鮮だった。
 客商売、こうして短期間だけやってみると中々面白い。

「ベビーアメリカンドッグお土産お持ち帰り!」

「はいはい!」

 えーと、お土産用の包みに入れるんだっけな。
 ベビーアメリカンドッグとは、小さく切ったソーセージをあげた丸くて小さいアメリカンドッグ。
 傍目でケチャップとマスタードがかかった洋風たこ焼きみたいな印象である。

 ……たこ焼き食べたいなー。
 ギリスに戻ったらタコパがしたい。
 隠キャの俺には憧れの、タコパだ。

 うん、やろう。
 まずはたこ焼き機を作るところからだが、すぐ作れるだろ。

「トウジ、元祖10、チーズ10、バター10、ベビー10セットだってさ!」

「合計40!?」

 テーブルに残されたゴミを回収しているとそんな声が響いて着た。
 とんでもねえ数の注文だな、と思ってシルビアの方を見ると。

「どすこい、腹が減って仕方がないでごわごわ」

 土木作業員のような格好をした魔族の男がいた。
 見た感じ、トロールみたいな風貌だが、魔族の男性である。

「アォン!」

 思わずポチからもヘルプの声。
 材料や熱した油の追加とのこと。

 俺は急いで戻ってインベントリから材料を取り出した。
 材料の予備がインベントリに入れてあるから問題ない。

 高カロリーに惹かれてやってきたか、大食い種族め!
 カロリー爆弾のアメリカンドッグ勢を食らいやがれ!

「うおおおおおおお! 追加材料だポチー!」

「アォーーーーーーーン!」

「何だか知らんが気合入ってるな! 俺もだうおおおお!」

 公園で叫び声をあげながら屋台を運営する二人のおっさんと一人のコボルト。
 最初は何事もうまくいかないと思っていたのだけど、意外なことに繁盛した。

 物珍しさから列をなして並ぶクロイツの住民たち。
 魔族を受け入れていた土地だけに、色んな人が朝食の足しとして購入していく。

 果たして。
 同じものばっかり食べてる奴らに、このアメリカンドッグが通用するのかと不安だったけど。
 何となくシルビアの言う通りに、お菓子扱いで売ってみたら割と抵抗なく買って行った。

「は~、昨日今日でこんなに流行るとはな! 宣伝の力ってすげぇ!」

「ははは、どうも」

 冒険者ギルドに依頼して、店の場所流布したのも功を奏したのだろう。
 流行ってる風を装えば、なんだかんだ人間は興味を持って集まってくるのだ。
 人の興味を刺激する、ある意味ダンジョン式グルメ商法。
 朝の通勤ラッシュが終わるまでの間、屋台の客は止まることを知らなかった。

「でも、ここからが勝負どきですよ、シルビアさん」

「わかってるって、一過性のものなんだろ? 流行りってのは」

「そうです、必ず落ち着く時が来ます」

 流行ったら必ず廃る。
 火付け役はしたが、そこから先はシルビアの領分だ。
 専門的な知識が俺には不足しているからである。

 しかし、新しいヒット商品を生み出す。
 もしくは別の販路を求めて規模拡大しかないな。
 何となく、市場を求める商会の本質がわかった気がした。

「……おっ」

 公園の端っこで、こっそりこちらを眺めている女性が目についた。
 図書館の受付嬢である。
 すごく微妙そうな顔で俺たちを見ているようだった。

 あいつらもまさかここまで売れるとは思っていなかったのだろう。
 うむ、このままシルビアのことは諦めてもらえると良いな。
 そのために、わざわざ金積んで人がたくさんいることを演出しているのだ。
 お前らは大人しく読書クラブやってろっての。







=====
ちなみに読めるし重要なことは書いてないから解読とか必要ないですよ。
とトウジが言えば、それだけでみんな職を失います。
それをしない理由は、無駄に恨みを買う様なことをしたくないからでしょう。
まあ、成果がまったくの0になれば、自然とリストラされそうですけどね。
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