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本編
636 ダンジョンコア、狙い目と好条件
しおりを挟むさて、虱潰しにできたばかりのダンジョンを探すことはかなりの運が無いと不可能。
故に、俺とポチがアメリカンドッグ屋に精を出している間、イグニールたちに探してもらっていた。
「この先にダンジョンあるんだよね?」
一緒にグリフィーに跨るイグニールに尋ねると彼女は頷き返答する。
「ええ、情報ではクロイツ首都から東に広がる森の奥に一つあるって聞いた」
「オッケー」
首都から東といっても、それなりに町や村を経由した先だ。
そこから森の中に入って三日ほどの距離にダンジョンは存在する。
ちゃっちゃとワシタカくんで近場まで向かった。
そして森の中からはグリフィーを使う。
久しぶりのグリフィー。
もふもふの毛並みを堪能しながら、俺たちは快速で森を駆け抜けた。
乗ってるメンツは俺、イグニール、ポチ、ジュノー、そして骨。
コレクトは、少し上空を飛んでグリフィーの後をついて来ていた。
「はやいですぞ~」
骨は別に城で待機してても良かったんだが、とりあえず連れてきた。
賑やかしとデコイ要員である。
結局色々とタイミングを逃して、未だ過去の聖女だったかってことは聞いていない。
とりあえずダンジョン攻略しつつ、聞いて見る予定だ。
「うおお? グリフィン!?」
「従魔か! 珍しいな!」
「うおおお、カッケー!」
途中でダンジョンへと向かう冒険者たちを追い抜いていく。
彼らもまた、ダンジョンを攻略するために足を運んでいた。
だが、すまんな。
一足先に俺たちがダンジョンの最奥まで行かせてもらう。
これからいくダンジョンは、いったいどんなんだろうな?
恐らく、八大迷宮に比べたらしょぼいはずだ。
「クエッ! クエックエッ!」
道すがら、コレクトが何かに感づいたように鳴き始める。
「コレクト、どうした?」
「クエーッ!」
興奮したコレクトの声をジュノーが通訳してくれる。
「なんかもう一個それっぽい雰囲気の場所が近くにあるって言ってるし」
「えっ? それマジ?」
「クエーーーーーーーッ!」
俺の目の前をグルングルンとハエみたいに飛び回るコレクト。
どうやらリアルガチのマジっぽい。
ジュノーの通訳でも「リアルガチのマジ」って言ってるそうだ。
「イグニール、ダンジョンが二つあるって情報だった?」
「いや、そんなことはないけど」
ふむ、だったら近場にまだ発見されてないダンジョンがあるってことだ。
発見されていないってことは、まだ小さくて入り口を目立たせていない。
これはなかなか好条件なのではないか?
狙い目のダンジョンへと足を運んだら、好条件ダンジョンを見つけてしまった。
ついてるな、実に良いぞ。
この一週間アメリカンドッグ屋を頑張った甲斐があったというもんだ。
「グリフィー、コレクトの案内に従ってそっちに向かってくれ」
「ガルッ」
冒険者たちが踏みしめて作った道から逸れて、俺たちはコレクトの後に続く。
そんな中、ジュノーが呟いた。
「こんな近場にダンジョンが二つもあるって、不思議だし」
「そうなの?」
「うん、結局地下で拡張したら、近場だとぶつかっちゃうし」
「ああ……」
気になる、地下がいったいどんな状況になっているのか。
ダンジョンってドアだけ異次元チックだけど、本体は違う。
スペースをくり抜いて作られるもんだからだ。
「ジュノー、近場で拡張してダンジョンが被ったらどうすんの?」
「ダンジョンくっついちゃうのかしら?」
イグニールと一緒に尋ねると、ジュノーは頷きながら返す。
「うん、被せ合いに発展するし」
「被せ合いか……」
もともと掘られていた場所でも、そこに部屋を設けることで自分のものにできるそうだ。
そうしたら、相手も同じように被せてくる。
こうなってくると、ダンジョンコアは地中深くでダンジョン上書き合戦を行うとのこと。
リソースが尽きたり、折れたら負け。
「あたしだったら他所行けってガーディアンけしかけるし」
こっそり別所に入り口作って、そこからガーディアン送り込むこともあるらしい。
占領ゲームみたいなことをして争うのか……。
なんかやっぱりダンジョンだけ別ゲーやってる感が拭えない。
「なるほど」
「強いガーディアンを持ってたら、その分有利だし!」
だからあたしが最初にオリハルコンガーディアンを作ったのは正しい判断だ。
と、ジュノーは言う。
やらかしたことに対して、もうからかっちゃいないのに、まだ根に持ってるようだ。
「でも二つダンジョンがあるって珍しいし、普通被せないもん」
「ってことは……」
イグニールが言う。
「被せてでも欲しいものが、地下深くに埋まってるんじゃないかしらね?」
「クエックエッ!」
その言葉にコレクトも反応して、なんだか信憑性が高まった。
確かに、その線はあるかもしれない。
さらに、冒険者に見つかっていないダンジョンだってことは……。
一度ダンジョン同士の争いが行われた後なのかもしれない。
リソースを失って規模縮小。
それでも諦めきれずにまだ近場にダンジョンを構えている。
という事実につながる可能性も存在していた。
「だったらなおさら、好条件さに磨きがかかったな」
「どういうことだし?」
「小さいダンジョンはお困りの様子かもしれないだろ?」
「協力すれば、良い感じに味方に引き入れることも可能ってことですぞ~?」
「その通りだ骨」
そうと決まれば、是非とももう一つのダンジョンへと足を運びましょう。
色々と話を聞いてみて、解決できそうだったらそこで恩を売るのだ。
さらに地下に眠るお宝とやらもなんだか気になる。
「よし、とりあえずいっちょやってみますか」
『おー!』
=====
※とあるメモ
ダンジョンコアは領域を広げることによって力を増す。
故に、争いが巻き起こった際は、陣取り合戦になる。
コアを抑えることによって、管理下におくことが可能。
その後、互いに交渉をすることもあるが、基本はコアの破壊、そして吸収によって終結する。
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