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本編
637 幼女イグニール
しおりを挟むコレクトの感覚を元に、俺たちはもう一つのダンジョンを探して歩き回った。
そして、茂みの中の木の根元に小さな穴を見つけるに至る。
「やっと見つけた……随分と巧妙に隠してあるなあ……」
「しかも、ひと一人ギリギリ入れるか入れないかの大きさね……」
「体を分解すれば私は行けないこともないですぞ~」
あまりの入り口の小ささに困惑する俺とイグニール。
訳のわからないことを言う骨はさておいて、ジュノーが言う。
「これは多分小動物とか虫とか鳥とか入れるためのもんだし」
「なるほど、ってことは他に入り口あるのかな?」
「クエッ」
「直感だけど無いってコレクトが言ってるし」
そっか、無いのか。
ってことは、ここに作られたダンジョンはマジで小さいタイプの様である。
まだ人を入れたく無いという引きこもりの念を感じるぞ。
「トウジ、どうするし?」
「突入するぞ」
相手が入れたくなくても知らん。
引きこもりを相手にする際は、天岩戸方式だとよく言うが……。
宣言しよう、俺は違うと思う。
何をどうやったとしても、出て来ねえんだよこの手の奴らは。
現代日本はカルチャーが発達して個人で楽しめる様になった。
ネットという仮想的な外の世界と繋がってるからな。
そう言う手合いには、無理やり中に入って引き摺り出す。
もしくは家を追い出すくらいして良いんじゃ無いの?
もっとも、本当の引きこもりとダンジョンコアは色々と違うんだけね。
持ち家しっかり持ってるタイプのネオ引きこもりがダンジョンコアだ。
「突入ってどうするんですぞー? 無理やり体を押し込むんですぞー?」
「いや、俺らが小動物サイズになれば万事解決だよ」
「小人の秘薬を使うのかしら?」
「いや、時間制限30秒とかそんなもんだから、巨人ペナルティだな」
「なるほどね」
そんな訳で、俺、イグニール、骨が順に巨人の秘薬を服用することとなった。
「巨人の秘薬、一回試してみたかったのよね」
意気揚々と2回飲んだイグニールがズズズと巨大化する。
下から見る眺めは、なんとも荘厳だった。
「うおー、俺ってこんな感じだったのか」
「ちょっとジロジロ見ないでよ」
女性冒険者は、スカートを履いていたとしても下にレギンスを履いている。
だからパンツが覗けるとか、そんな展開はなかった。
まあ、俺は全種類の色そしてサイズを網羅しているから関係ないけど。
「……体の大きさを変えるポーションが存在するなんて、驚きですぞ~」
驚きの声を上げる骨に告げる。
「俺は勇者じゃないけど、こういうポーションを作れるんだよ」
「サブキャラ的な感じなんですぞ?」
「うーん、ただの巻き込まれだけど、とりあえずこの事実は秘密な?」
「わかってますぞ~」
そんなことを話していると、効果時間が切れてイグニールの体が小さくなっていく。
元の状態を超えて一気に5分の1のサイズにまで、っと思っていたら……。
「あれっ、なんか見た目幼くない?」
「そう? 自分ではよくわからないわね?」
何故か3歳児くらいの大きさに落ち着いてしまっていた。
イグニールの身長で行くと、だいたい33センチ前後になるはずなのだが、どういうことだろう。
これじゃ、ただの子供イグニールじゃないか。
いや、幼女イグニールだ! 可愛い!
「イグニール、ちょっと抱っこして良い?」
思わず彼女の両脇を支えて高い高いしていた。
うおー、小さいイグニールだ!
「は? え? ちょっとやめてよ! 恥ずかしいから!」
真っ赤にさせた顔を両手で覆うイグニール。
巨人の秘薬のペナルティって、コレクトの時はただ小さくなると思ってたんだけど。
実はあの状態は小鳥状態の様なもので、その頃にまで体が小さくなるってことだった様だ。
「トウジ様、次、次は私に抱っこさせてくださいですぞ~」
「わかるか骨、この可愛さが」
「わかりますぞ~、わかりみ、深いですぞ~!」
「ねえちょっと! おろして! すごく恥ずかしいってば!」
俺たちは幼女イグニールをしばらく愛で続けた。
高い高いしたり、頭なでなでしたり。
あの聖母が幼女に、なんかすげー新鮮な気持ちである。
「あたしと同じくらいの大きさになるって思ってたしー」
そんなことを期待していたジュノーは、少し不満そうだった。
「あらポチ、なんだか目線が同じくらいって新鮮ね」
「アォン」
さてと、イグニールとポチが謎のコミュニケーションを取っている間に俺たちも服用。
幼児退行と行こう。
「ワクワクしますぞ~」
「お前は骨だから、あんまり変わんないだろ」
「失礼ですぞ! 私にだって数百年前は子供の時期があったんですぞ! それはそれは可愛いと愛でられたんですぞ!」
「あー、確かハーフだったっけ? そりゃ可愛いよなあ、日本では」
ぽろっとそう告げると、骨は「へっ?」と言いながら俺と一緒に巨人化した。
そしてススススと一緒に幼児の骨になってから、驚きの声を上げる。
「な、なんで私のプライベート情報をご存知!?」
「この間たまたま読んだ賢者が残した書物に載ってた。華子・ベアトリクス・ビスマルコ、過去の聖女だろ?」
「ふおっ!?」
=====
幼児退行ということで、これでトウジとイグニールは形式的には幼少からの幼馴染みたいな感じになりますね。
しばらく幼児状態で話は進みます。
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