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本編
640 詐欺に引っかかる系ダンジョンコア
『こっちだよこっち』
声に案内されて、俺たちはダンジョン最奥へと移動することになった。
最奥まで行けば広いかと思ったのだが、洞窟は相変わらず狭い。
地下に伸びる小さな洞窟を基本として、このダンジョンはできている様だ。
そしてその洞窟の一番奥の石の上に、朧げに光る玉が置かれている。
「あれがダンジョンコア?」
「うん、だいぶ弱ってるけど、あれがあたしらだよ」
ダンジョンが拡大すればするほど、光り輝くものらしい。
となれば、このダンジョンは弱って分隊すら出せないことが見受けられる。
ダンジョンは、コアは最奥の一番守りが堅い場所に置く。
もしくは強くなればなるほど、コアを中心として体を作るからだ。
勝手に壊されるよりかは自衛した方が良いと言う理論である。
「いやー、ダンジョンコア専門の悩み事相談の人がきてくれるってついてるなー」
目の前にある玉から、そんな呑気な声が聞こえた。
「お前はこのダンジョンのコアで良いんだよな?」
「うん、そうだよ。名前はケープ。よろしくね」
「はい、よろしく」
さて、挨拶もそこそに、ケープから状況について詳しく効く。
「一回負けちゃってそっからどうやって元に戻そうか悩んでたんだよー」
やはり、近場のダンジョンと争い、敗北してしまった様だ。
コアを壊される前に、ありったけのリソースを使って逃げたらしい。
それから隣に戻ってきて、ちまちまと力を蓄えていたそうだ。
「何が原因で争ったの?」
原因を尋ねる。
「普通、ダンジョン同士が近場に作るってあまりないんじゃないの?」
「ここの地下に魔力の源があるんだよ。だから争ってた」
「魔力の源?」
また新しいワードが出てきたな。
「それって、浄水の泉とかそんな類のもの?」
「浄水の泉? なにそれ? 地下にそんなのある訳ないでしょ」
やれやれ、と零しながらケープは言う。
「なんかすげぇ魔力を持った骨が埋まってるんだよ」
「……なんかすげぇ魔力を持った骨?」
一同の視線が骨に向く。
「なんですぞ? 私の骨にすごい魔力とかないですぞ?」
「旅の途中落としてきたとかない?」
「ないですぞ! 勝手に戻ってきてくっつくんですぞ!」
「そっか」
それもそれで怖いけど、とりあえず骨の物ではないってことだな。
目の前にいるケープは、その強力な魔力を持つ骨が目当てだったらしい。
たまたま見つけて、順調にダンジョンを下へ下へと伸ばしている。
そんな時、別のダンジョンが現れて介入してきたそうだ。
「あっちは先に見つけて準備を整えてきたとか言ってるけどさ!」
「うん」
「ここにダンジョンを作ったのは僕が先なんだ!」
そうして巻き起こった陣取り合戦の結果。
ケープは敗北してしまった。
「先にダンジョンを作った方に、リソース的な有利がありそうだけど」
「そうとも限らないし」
イグニールのつぶやきにジュノーが答える。
「拡大とともにリソースの絶対値は増えるけど……」
同時に常時使用する分のリソースにも取られる。
階層を維持するのにもリソースが必要となるのだ。
だから人や魔物を呼び込んで魔力を接収する。
勝手に死んだら吸収して自分の魔力に変える。
国が住んでる人から税金を取る様なことと、だいたい一緒なのだ。
「魔素が豊富な山奥や森の奥深くとは違って、ここに立地的な有利はないし」
トガルの山脈はそう言う意味ではかなり良い立地だったそうだ。
もともと魔石の出土も豊富で、近場の水は全て清水という魔素に富んだ地形。
オリハルコンガーディアンを作れたのも、そんな立地的な余裕があったからこそ。
「ケープが負けたのは、単純にそういう立地の悪さが関係するし」
「要するに規模を大きくしても強くなれるとは限らないわけね?」
「うん。いっぱい魔物住ませたり、人を呼べば良いけど……情報があったのも最近の話だし」
それまで情報はなかったのだから、人も多くは来ていなかったと見れる。
珍しく冴えてるなジュノー、あとでパンケーキあげないといけない。
「ジュノーの言う通り、僕はジリ貧で負けちゃったんだよ」
「相手が準備してきたって言うなら、負けても仕方ないかもだし」
「そうそう、急増のくせに思った以上に粘ってきてさあー……なんか一人で大勢を相手にしてる気分だったよ。急増のくせにそんな余力どこにあるんだろうね?」
ケープは言葉を続ける。
「だからだんじょんこんさるたんとってのには運命を感じたね! 助けてお願い! 地中に眠る骨は僕が見つけたんだ!」
「ふーむ」
すげぇ強力な魔力を持った骨って、なんかやばい気配を感じる。
いや、絶対やばい。
この世界の古的な存在って、だいたいやばいのばかりだろ?
「むしろ効率の良いダンジョン拡大について教えるし、リソースいっぱいくれそうな人を紹介するから諦めたら?」
「えっ、一緒にダンジョンと戦ってくれるんじゃないの?」
「ないない。やばそうだし。戦いごとってね、逃げるのも勝利の一つなんだぞ」
「ええ、なんかかっこ悪いじゃん! 一生負けたって心に傷が残るじゃん!」
「違う違う。ダンジョンって相手を殺す殺さないで勝利が決まるもんじゃないっしょ」
「確かに……」
「どれだけデカく拡大したか、してないか、それがダンジョンの全てじゃないのか?」
「まあ……そうだけど……」
「だったら俺の知り合いにダンジョンに興味があって、金も土地も人も全て持ってる奴がいるよ」
「ほうほう!」
「負けたのは仕方ないけどさ、それでダンジョン拡大しちゃえば、君は勝ち組ダンジョンだよね?」
「勝ち組……勝負には負けたけど、それでも勝ったってことになるの?」
「なるなる。何を持ってして勝利か、なんて時と場合によるもんだから、勝ちだと思えば勝ちだよ」
または、負けてないと思えば絶対に負けてない。
敗北とは心が認めた瞬間に発生するものなのだからね。
「でも地下に埋まってる骨ってすごく強力だから、勝てるかなあ……?」
「勝てる。大丈夫、勝てるから。勝てないって思ってるから負けたんだ」
「そ、そう?」
「そうだよ、勝てる。自分でも勝てるってちゃんと叫べよほら」
「か、勝てる」
「もっと!」
「勝てる!」
「もっとだ!」
「勝てる! 勝てる! 勝てる!」
「よし、それで良い。じゃ、あとは契約に移ろうか」
さっとインベントリからペラ紙とペンを取り出した。
かけるかわからんけど、ここは代筆しますよってことにしておく。
今の俺はダンジョンコンサルなので、代筆秘書はイグニール。
秘書姿のイグニール見て見たいな。
「契約?」
「うん、君を助けるけど、必ず守ってほしい約束事がいくつかあるからね」
「だ、大丈夫それ? 変な約束とかされない?」
「大丈夫大丈夫。俺を信じてほしい。絶対に悪い様にはならないから」
「ほんとに?」
「本当本当。俺は弱いダンジョンの味方だからね? じゃないとこんなところに来ないよ」
「そ、そっか! だったら信じるよ! 信じるしか僕にはできないし!」
チョロスギィ。
そんなわけで、ちゃっちゃと悪い人以外は殺さないとか人に迷惑かけないっていう契約を交わして連れて帰ろう。
やばい骨の話も心残りだが、それはケープをアドラーに引き渡してから確認に行くことにする。
「よし、じゃ契約完了──」
──ゴゴゴゴゴゴゴゴ。
地震だ!
唐突に、地震が巻き起こった。
=====
ジュノー「トウジの理論で行くと、あたしは永遠に負け組ダンジョンだし……」
トウジ「いや、お前は勝ち組だよ。パンケーキ毎日食べれてるだろ?」
ジュノー「確かに。やっぱ勝ち組だったし」
トウジ(チョロォッ)
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