373 / 650
本編
674 マジックハンドガン
「それからですね、なんか遠くのものを取る時に使える浮遊結晶を用いた手です」
「うん」
「トウジさん、たまに遠くのものを引き寄せてる時あるじゃないですか?」
「……あるね」
移動がめんどい時に指輪のスキルである引力を用いてるんだが、ただの横着だ。
邪竜三兄弟の魂が入った指輪のスキル、斥力と引力。
相手の行動阻害をする際にかなり有効な一手となるのだが、正直こっちのが便利だ。
割と最近そう言う小間使い的な形で使っていて、次男が聞いたらキレそうである。
「そこから発想を得ました」
「なるほど」
ボタンを押すと風の魔法で空気砲みたいに手の形をした物が発射されるマジックハンド。
手のひらに感圧があり、密着すると指が開閉してつかむことができる。
掴んだ後は、浮遊結晶の効果で浮かせて、手についたワイヤーを引っ張って引き寄せる。
引き寄せた後に手のひらは再び元の開いた形に戻って物を離すと言う仕組みだ。
命名としては、マジックハンドガンという形にしておきましょう。
「お~、うまく出来てるね」
「ォン!」
狙いを定めて撃つものだと言う説明を聞いて、ポチがやって見たいと言う。
「これはすぐに使えるの?」
「構造の通りに作ってるんでしたら、それは使うことができます」
ただ、一回撃ったら浮遊結晶が消滅するから使い捨てとのこと。
コスト的には、全然量産できるからそれなりに配備しておきましょう。
それでも、俺のリソース的には余裕ってだけで。
普通浮遊結晶の製作にはかなりの素材が必要となるのだけどね。
まあ、俺基準で考えればコスパ高いってことで、よろしく。
「はいポチ」
「ォン!」
ポチは俺が片手で持っていたマジックハンドガンを両手で握りしめる。
そして、リビングにある適当なものに撃ち込んだ。
ポシュッ!
空気によって押し出される手。
少しフラフラしながらもキッチンの上のコップに上手く命中した。
命中した瞬間、手がガチッとコップを掴む。
「ポチさん、もう一度ボタンを押すことでワイヤーが戻ります」
「ォン」
言われた通りにボタンを押すと、ワイヤーがシュルシュルと戻り始める。
ワイヤーといっても、蜘蛛の魔物から取れるすごく強靭な糸素材。
科学的に合成された強い糸を魔物が普通に持ってるんだから、異世界ってすごい。
「アォン!」
無事にコップを手元に引き寄せることに成功して感激の声を上げるポチ。
「上手くいきましたね」
「いったな」
設計図だけを描いてきたので、果たして上手くいくとは思っていなかったらしい。
そうだよな、頭の中で考えることと実際に作ってみることって差異がある訳だし。
「手の掴む力が弱すぎないか心配だったんですけど、浮かせちゃえば問題ないみたいですね」
「だな。でも重たすぎる物とかはダメなんだろう?」
「一回限りでしたら浮遊結晶の出力を上げればそれなりに対応はできるはずです」
「なるほど」
継続して浮遊させ続ける、という問題にぶつからなかったら問題ないみたいだな。
一瞬だけ浮かせる、という部分に焦点を当てて考えれば良い使い道はありそうだ。
「アォン! アォン!」
「もう一個? はいはい」
せがむポチに、たくさん作って上げる。
ポチの射撃精度ならば、使いこなすことができるはずだ。
掴んでこっちに引き寄せる、色々と使いどころがある。
たくさん作ってカバンに入れて、もたせておこうか。
ボシュボシュ!
次は両手持ちで遠くにあるものを引っ張ってくるポチ。
楽しそうで何よりである。
なんだか、遊んでいる姿を見ると俺もやりたくなってきた。
「ライデン、俺たちもちょっと使ってみようぜ」
「僕も良いんですか?」
「設計した本人なんだから良いに決まってるよ」
そんな訳で、テストを兼ねてこのマジックハンドガンで遊んで見ることにした。
俺にはスキルがあるから良いんだけど、これもこれで楽しい。
ちなみに、マジックハンドガンは装備製作の銃カテゴリーに登録された。
地味に新しいカテゴリーです。
ライデンくん、本当にありがとうございました。
「よーし、撃ってみるぞ~」
「はい!」
「アォン!」
そんな感じで3人で並んでマジックハンドガンを撃ってみる。
狙いはテーブルにあるコップ。
二つ並べて外した人は罰ゲームとして、スクワット10回。
ボシュボシュボシュ!
3人揃って同時に射出。
「あれっ!」
俺のマジックハンドは、ちゃんと狙ったのにあらぬ方向へ飛んでいった。
罰ゲームは俺か……と、考えていると。
「朝から騒がしいわね何よ」
パジャマ姿のイグニールが目をこすりながらやってくる。
そして──もにゅ。
「あっ」
俺のマジックハンドはイグニールの胸に命中し、掴んだ。
しっかり、がっつり、掴んだ。
「……」
「……」
重量の関係上持ち上がることはないが、気不味い空気が流れる。
「トウジ」
「は、はい」
「どういう状況かしら?」
「えっと……デモンストレーション?」
「人の胸をおかしな魔導機器で掴むのが?」
「いやそれは」
断じて違うのだけど、状況的に言い訳できない。
「説明と説教ね。部屋に来なさい」
「はい……」
罰ゲーム、イグニールからの説教にチェンジだ。
くっ、二度と撃つ系の武器は使わんぞ!
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました