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本編
675 思わぬ一言である。
しおりを挟む「へー、これがライデンくんが設計した魔導機器?」
「はい、そうです」
イグニールからコンコンと説教を受けた俺は、リビングへと戻った。
作られたマジックハンドガンを試しに撃ってみるイグニール。
「おっふ」
マジックハンドガンは俺の股間に命中した。
優しく、いや、やらしく握られる感覚。
思わず体がくの字になってしまった。
そんな俺の姿を見ながらイグニールがしれっと言う。
「あらごめんなさいね、痛かった?」
「い、いえ……」
痛くはないのだけど……なんだかなあ……。
股間はダメだろうに。
でも、先にやっちゃったのは俺なので何も言えない。
「他にも色々とあるわね?」
「そうなんです! 今日はトウジさんに見せたくて!」
バラバラバラバラと設計図を広げるライデン。
俺の隣に座ったイグニールは、設計図を一つ一つ見て行く。
「本当にたくさん作ったのね」
「最近、オスロー先輩のところで実際に学んだ後、こうして設計するのが楽しくて仕方ないんです」
頭の中に、どこからともなくアイデアが湧いてくる様だ。
と、ライデンは語る。
ハマるって、そう言うことだよな。
なんだかすごい衝撃的なものが押し寄せてくるのだ。
それにドッとのめり込んで行き。
次の日も、また次の日もそれが続く。
もうそのことしか考えられなくなってしまう。
ネトゲにハマった時も、そんな衝撃があった。
四六時中、寝る間も忘れて、のめり込んで行く。
嫌なことがあると酒で忘れると言うが。
俺の場合はネトゲの別の世界に入り込むことだった。
「なんかわかるかも。私も魔法スキル覚えた時、そうだったし」
イグニールは続ける。
「覚えたてが一番楽しいって言うけど、危なっかしいことはしちゃダメよ?」
「わかってます!」
「本当? 目が充血してるわよ?」
「それは……ついつい熱中すると朝を迎えてるんですよね……」
「夜更かししながらやっても体に悪いから、睡眠はしっかりとること」
「わかりました!」
「その上で、今自分の中にあるその気持ちを大切にしてね」
「はい!」
イグニールの言葉に元気よく返事をしたライデン。
久しぶりにイグニールの姉御力が発揮されたな。
イライラしてる時は怖いけど。
慈愛に満ちた表情をしたイグニールは、俺からすれば絶世の美女。
やっぱり良いな。
元々の性格って、なんだかんだ仲間思いで優しいタイプだから。
理想だよな。
そんなことを考えながら、ふと気になったことを聞いてみる。
「イグニールの火魔法って、お母さんに習ったの?」
「ええ、そうよ。爆発すると危ないからって言われてたけど、今のライデンくんみたいに、初めての頃は魔法スキルが使えるってことがかなり嬉しくて、しょっちゅう自爆してたわね」
「自爆て……」
「まあ、同時に火耐性も持ってるから、そこまで深刻な事態になることはなかったけれど、その代わり色々と庭の木を燃やしちゃったり、焦がしちゃったり、やらかしちゃったっけ」
自爆して庭を燃やすって、すごいお転婆だ。
でも、なんだかイグニールからそんな話を聞けて新鮮だった。
もっと彼女のことについて知りたいと思ってしまう。
形見の杖だといっている様に、彼女の両親はすでに亡くなっている。
だから踏み込んだ話を聞いてみるのはいささか如何なものかと思っていた。
これ以上聞いて良いものか悩んでいると、ライデンが聞く。
「それにしても、爆発する火属性魔法だなんて、すごく珍しいですよね?」
「そうかしら?」
「僕の雷属性も、結構家系的なものが強いんですよ」
だから、とライデンは続ける。
「イグニールさんも、実は結構良い血筋だったりするんですか?」
「…………そんな大層な家じゃないわよ。お金持ちでもないし」
少しだけ間をおいて、イグニールはそう言った。
「そうなんですね。でもまあ、家柄とかトウジさんには関係なさそうですもんね?」
「なんで俺がそこで出てくるんだよ」
急に話を振られて少し驚く。
すると、ライデンはキョトンとした顔つきで言った。
「え? イグニールさんて、トウジさんの彼女じゃないんですか?」
「「……」」
再び空気が固まる。
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