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本編
676 どうすれば良いのかわからないことはある
「え? イグニールさんて、トウジさんの彼女じゃないんですか?」
ライデンの口から何気なく発された言葉。
空気が固まる。
正直に言えば、彼女でいて欲しい存在。
しかしながら現状決めてもな、とは思う。
色々あるんだよ、色々と。
これ……。
返答次第では、色々としこりが残る問題だぞ。
いっそ、ここで宣言してしまえば良いのか。
いや、まだやることが終わっていない以上。
俺の出す答えは中途半端になるんじゃないか。
と、そう思う。
イグニールの答えがどうなのか、ってこと。
それはもう当たって砕けろ作戦になるんだよな。
砕けたら、それはそれで悲しいけど。
パーティーとしてよろしくやってもらうつもり。
報酬だって出すしこれまで以上に高給取りにする。
そんな保険を考えなければならないほどに。
今の俺は彼女に夢中だってことをひしひしと理解する。
でも、このタイミングは不味い。
そもそもさ、この歳になってからの話である。
どうやってそこまで発展するのか、すでに忘れてしまった。
パーティーメンバーになってもらいたいってのは、まだ良い。
でも好きです付き合ってください、なんて……。
30歳にもなってどういうタイミングで言えば良いのか難しい。
しっかり言うべきものなのか?
バカにされないのか?
だいたいそうだろ?
ネトゲ内の結婚システムを利用して、気軽に結婚しようよとか。
カップル用の課金アイテムを一緒に装備しようよとか。
そういうこととは全く違ってくるだろ、リアルの奴は!
はい次、はい次、なんて回転早くは行けないんだよ。
1発が重たい、かつ撃ったらショートしてしまいかねない大砲。
狙いが外れたら、固くガードされてしまったら。
いや、先に攻撃を仕掛けるのは間違っているのではないか?
そんなことが心の中に渦巻いて、結局何もしないことを選択させる。
「……」
「パーティーメンバーよ」
言葉に詰まっていると、イグニールがコーヒーを飲みながらサラッと言った。
少しだけ、ガッカリする俺が居た。
「あっ、そ、そうなんですね! 僕勘違いしちゃってました!」
ようやく空気を察した様に、ライデンがさっさと納得する。
沈黙を色々と察したのだろうな。
「ふああ……今日は何もないし、もう一眠りしようかしら」
態とらしく欠伸をしたイグニールは、伸びをしながらスタスタと自室に戻っていく。
その背中を見ながら、俺は「ああ、色々としくった」と思った。
気を使った答えが出せない。
かと言って、デートに誘うのもどうすれば良いのかわからない。
ここまでヘタレ気質な自分自身が、少しだけ嫌になった。
色々と他方を考えすぎなのかもしれない。
眠ってしまった現勇者よ。
お前も色々と選び放題だろうことだが、いったいどうしてるんだ。
もっと気軽なものだと、捉えて見ても良いのだろうか?
果たしてそれが、筋を通す上で正解なのだろうか?
仮に、付き合ったとして筋を通せるのか。
相手が何を求めていて、俺は何をしてやれるのか。
考えだすときりがなくなってしまう。
ネトゲ廃人の俺には、すごく難しい問題だ。
「ォン」
考え込んでいるのか顔に出ていたのだろう。
ポチがマジックハンドガンを俺の顔面に命中させた。
ぐわし、と掴まれて無理やり視線を変えられる。
「なんだよ、やめろよ」
「ォン」
「……とりあえず、外に出るか。冒険者ギルドであの依頼の開催地とかも聞かなきゃだしな」
「ォン」
気分を変えるために、一度外に出ることにした。
「すぐ戻るから、ライデンはゆっくりしてて良いよ。そろそろみんな起き出すころだと思うし」
ポチと二人で、少し話したいってこともある。
誰か一人に心を向けると、どこかで歪みが生まれるかもしれない。
それがすごく怖かった。
今の環境ですごく満足している俺は、それが変わるのが怖かった。
色々と状況が変わった今でも、その根の部分は変わらないのである。
◇
「トウジ、もう行っちゃったの? ライデンくんだけ残して?」
「はい。ギルドに行くって言ってました」
「……何時だと思ってるのよ……相当テンパってるわね」
「あ、あの。急に気まずい雰囲気にしてしまってごめんなさい!」
「良いのよ。まあ、ライデンくんには結論だけ述べておくけど──」
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