文字の大きさ
大
中
小
383 / 650
本編
684 今の〈新緑の風〉は、
──エリーサ・ラシカ。
この世界に来て、お世話になった冒険者パーティー、〈新緑の風〉のメンバーである。
久しぶりに再会したエリーサは、装備に身を包んでいた時より大人びていた。
俺が言うのもなんだが、大人の色気というものが漂っているように感じる。
「お久しぶりです。新緑の風もこの未踏挑戦に?」
「あー……」
エリーサは少し苦笑いしながら答えた。
「今ね、私たち解散しちゃったのよ」
「えっ、……解散?」
解散という言葉にあまり良い印象はない。
何かあったのだろうかと心配していると、エリーサは笑う。
「大丈夫大丈夫、別に揉めて解散した訳じゃないから」
「よかった……」
あんなに良いパーティーだったんだ。
離散するような事態に陥っても、自分たちで何とかするはず。
ふと。
怨嗟に取り憑かれたウィンストと戦った時のことを思い出した。
屍人の軍勢に紛れて、新緑の風のメンツがいる幻覚が見えた。
それだけ、俺の中の冒険者像として、彼らが強く残っている。
彼らがいたからこそ、良いもんだな、と前向きになれたのだ。
あの時、脱出も手伝ってもらったし、命の恩人なのである。
「今は色々あって、ギルドの職員やってるんだけど」
エリーサはバインダーに挟まれた紙をペラペラと捲りながら。
「ちょっと今は忙しいから、後で落ちあいましょ?」
「後で?」
「ええ、今日は大量の冒険者の受付のみで、開会式は明日なのよ」
「なるほど」
開会式なんてものがあるんだな、律儀なこった。
各支部のギルドマスターの他。
デプリや各国からのお偉いさん方も集まるらしい。
それだけ、この未踏挑戦は期待されているのだ。
「久しぶりにあなたの姿を見たら、たぶんみんなも会いたいはず」
「みんな……みんないるんですか?」
アレスも、クラソンも、フーリも。
すごく、すごく会いたい。
是非とも会いに行こうと思った。
「うん、デプリの冒険者って国を出なかったら大抵ここに流れ着くから」
「自宅の場所を教えてもらってもいいですか?」
「了解。そういえばトウジ……」
「はい?」
エリーサは、俺と後ろに控えるイグニールを見ながら言う。
「……パーティー、組んだのね」
「そうですね」
「意地でもパーティー組まないつもりっぽかったし、あの時も一人で街を出ちゃったでしょ?」
あの時、マイヤーに嘘をついて一人で街を出た時のことか。
彼女はその時のことを覚えているようだった。
「あの後、野盗が出たなんて騒ぎがあったから、みんなあなたのことを心配したのよ」
「ハハハ……なんとか逃げ延びて、マイヤーに途中で拾ってもらって生き延びました」
「良かった。生きてたらこうしてまた会えるから、お互い長生きしましょうね」
「はい」
死に別れ以外、別れじゃない。
生きてればまたどこかで必ず再会する。
ガレーの手紙に書いていた通りだ。
命を大事に、異世界を生きて行こう。
「こらー! サボってないで早く仕事しろー!」
「はいはーい!」
奥からエリーサに怒鳴り声が響いて来て、焦ったようにエリーサは仕事に戻った。
「まっ、色々と聞きたいこともあるから、後で私のうちに集合ね!」
「了解です」
「うふふ、本当に色々と聴かせてもらうわよ? 後ろのお嬢さんについても!」
イグニールについて?
……なんだか関係性について色々と言われそうな気がする。
今はパーティーメンバーとしか言えないんだけどなあ……。
「トウジ、あの人誰だし?」
エリーサが去った後、俺のフードからジュノーがひょっこり顔を出した。
「昔、お世話になったパーティー〈新緑の風〉のメンバーだよ」
「へー? パーティー組んでたし?」
「いや、ただの荷物持ちとしてついていっただけかな」
でも、と言葉を付け加える。
「エリーサたちは、俺の理想のパーティー像だよ」
おかげで冒険者という職業に、前向きになれた。
いや、この世界というものに対して……かな?
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています(旧:いらないと言ったのはあなたの方なのに)
水谷繭※7/30書籍発売予定です!6/29まで公開します。
完結まで一括投稿済。
なろうの方では削除する予定はありませんので、読み途中たけれど読みきれないという場合はそちらでお願いします☺️
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました
◆小説家になろうにも投稿しています
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
処刑されるはずだった没落令嬢ですが、姫様の初夜を身代わりしたら子を授かりました
新 星緒没落伯爵令嬢のエルゼは大恩がある姫様を救うために、初夜の身代わりを引き受ける。
そして姫様や国を守るために誰にも行く先を告げずに国を去った。
三年後。初夜の晩に息子ヴァルターを授かっていたエルゼは、ひっそりと暮らしていた。ところが元婚約者に拉致られて、あわやというところに初夜の相手であるハインツ王子が現れる。
「ようやく見つけた。エルゼ、愛している」
「初夜の相手が君だと最初からわかっていたが?」
――身代わり初夜から始まる、純愛溺愛執着愛のお話!