装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

694 聖人とは

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「聖人に狙われてる、ねえ……」

 後ろに視線を向けながら、イグニールが呟く。
 次の日、俺たちは日が昇った山の中を歩いていた。
 この場にいるメンバーには事情を説明している。
 昨日の追跡者、そして後ろをついてくるハウザーのこと。

「聖人なんて、聞いたことはあるけど本当に実在するものなのかしら」

「いるっぽいよ、どうやら」

 聖人。
 それは、教団の抱える神官兵団のトップに立つ存在。
 各地で起こった争いなどを平定して回る役目を担う。

 凶悪な魔物の単機討伐。
 神敵と見定められた者の単機討伐。

 いわば、教団が天罰を下すための最終兵器である。
 何とも厄介な奴に目をつけられたものだ。
 ハウザーの情報だと、聖人率いる神官兵団がこの山にいる。
 パーティーに偽装し、虎視眈々と俺を付け狙っているのだ。

「骨、聖人って神官兵士長とは違う立場なのか?」

「あくまで私がいた頃の話になりますぞ?」

「それでも良いよ」

 聖女という、似た様な立場で近しい場所にいた骨に聞く。
 骨が現役だった時代。
 そんな昔から、教団というものは存在していた。
 神託を受け、骨たちをこの世界に呼び寄せたのも彼らだ。

「過去の聖人様は、昔の勇者様には劣りますけど……」

 懐かしむ様に骨は語る。

「強きお方でした。清廉潔白で、悪は許さないと言った形です」

「ふむ、正義の味方みたいな感じなんだな」

「名をアーサー・イノセンス」

「カッコイイ名前だな、まさに正義の味方って感じ」

「当時の教団は、廃れた世の中を勇者とともに救ったのですよ」

「なるほどね」

 当時の、という言葉の通り。
 時代を経て、組織は熟成を経て腐敗していく。
 木から落ちた果実と一緒だ。

 大義を掲げた大樹に広がる葉は、同志。
 大樹は実ってたくさんの果実をつける。
 実った果実は、放置すると落ちて腐りゆく。

 新しく生まれ変わるかと思いきや。
 腐ってもしぶとく残り続けるんだな、これが。
 食品添加物マシマシで。
 もう食えないのに、見た目だけは良いんだ。

「戦火に包まれていた時代のアーサーとまでは言いませんが」

 そこで言葉を区切り、骨は肩をすくめて続ける。

「幾分、聖人の名前を冠する程ですから」

「相応に厄介な敵だってことか」

「その通りですぞ」

「まあ、それでも心配はいらない。前の勇者より弱いなら、太刀打ちできる」

 ロイ様、キングさん。
 うちの最高戦力に加えて、邪竜三兄弟だって味方だ。

「指輪に眠る邪竜とやらを呼び出すのですぞ~?」

「うん」

「それ、本当に神の敵だって言われかねないわね」

「ダンジョンコアと夫婦なんだから、ある意味もう人類の敵だし」

「……夫婦ってところはさておいて」

 ジュノーの言葉をやんわり否定しつつ告げる。

「教団はすでに俺を神敵と見定めたから聖人送りつけて来たんだろ? だったらもうなんだって良いね!」

 逆に邪竜を神とした邪神教的なものをでっち上げて、教団を潰す。
 そしてそのまま勇者に討たれたみたいな感じで適当にでっち上げ、邪神教を取り潰しておしまいだ。
 あとは野となれ山となれ気分だが、純粋に教団信じてる人が残って良いんじゃないの?
 それがこの世界にどんな影響を及ぼすか知らんけど、俺にとっては迷惑なのでしゃーない。

「たまにとんでもないこと言い放つわよね、トウジって」

「あくまで想像の範疇だから、本当にやるわけじゃ無いぞ」

 でも、結果的になるべくしてなってしまった、とかあるかもしれない。
 その時は、俺は絶対に責任を取らないぞ!

「ライバルがいなくなれば、白骨カルマ禊教が一気に覇権を握りますぞ~!」

「絶対にねえよ」

「無いわね」

「無いし」

「アォン」

「クエーッ」

「ぷぴぃ」

「め、珍しく全員が反応するこの流れ、なんですぞ~! なんなんですぞ~っ!!」

 およよよ、と泣き崩れたふりをする骨。
 いや、意外とショックだったっぽくて、凹んでる。
 ピーちゃん含めた満場一致なんだから、さもありなん。

「そもそも、白骨っていう最初の名前が縁起悪い」

「アイデンティティー! 白骨アイデンティティーぞ~!」

「一般大衆は白骨にアイデンティティーなんか持ちません」

 ただただ恐怖しかない。
 骸になる恐怖から逃れるために、宗教にハマるってのにな。

「故に、生きてるうちに白骨とお友達になりましょうってことですぞ!」

「いや、それやばいって……」

 ギャーギャー喚く骨の言葉をみんなでやれやれと聞き逃していると。

「……ォン?」

 急にポチが鼻をヒクヒクと動かしだした。
 何かを感じ取った様だ。

「どうした?」

「アォン……」

 ジュノーが通訳してくれる。

「かすかに、血の匂いがするって言ってるし。人とは違う、血の」

「人とは違う……魔物か……?」

 この先で冒険者に魔物が討伐されたのかと思っていると、ピーちゃんも反応を示した。

「ぷぴぃっ!!」

 ポチほどではないが、ピーちゃんも鼻が利くタイプなのである。

「ピーちゃん?」

「ぴぃーっ!」

「ピーちゃん!」

 急に走り出すピーちゃん。
 慌てて後を追う。

「ジュノー、通訳!」

「……ピーちゃん……同じ、血だって……」

「何!?」

 ってことは、ハイオークの血?
 なんだか、まずい気配がする。
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