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本編
698 神の意志のもと、絶対勝利を約束されている(笑)
引き寄せて、そのまま思いっきり殴りつける。
ただ、その繰り返しだった。
感触が拳に伝わって来て、なんとも言えない感覚になる。
あんまりこういうのには慣れるもんじゃない。
これを快感だと感じると、その瞬間から俺は俺じゃない。
そんな気がしたのだ。
殴って然るべきだと思ってる時点で、俺も目の前のやつと同じ。
やられたからやり返す、それが免罪符の様になってい──
「くたばれカルト野郎! これはハイオークとエルフの分だ!」
「ぐはっ!」
──なかった!
目の前にいる野郎の面を殴ることに、これっぽっちも罪悪感は感じない。
こっちが先に殴られてんだから、神様だって殴り返すことをお許しになる。
いや、なれ。
お許しになれ。
神様がもしこの世界にマジでいるんだったら、こんな悲劇は起こらない。
いないから起こるんだよ、だから神なんているわけないのさ。
「くっ、この!」
ぶん殴られてぶっ飛んで行く聖人。
STR1万越えの本気パンチにも死なない程度の実力はある。
しかし、対1での戦いで、引力というスキルは強すぎたのだ。
「スキルは持たないという情報──ゴフッ!!」
「スキル持ってないけど後天的に持つ可能性あるだろ、アホか」
たとえ、引き寄せ中に体制を立て直したとしてもである。
クイックによる行動速度の上昇にて、タイミングを合わせるのは容易。
狙い目は顔面だ。
その綺麗な顔立ちを、見るも無残にボコボコにしてやる。
「お前なんぞ、右腕だけで十分だ」
「ぶはっ!」
「1回でも斬りつけて来たら、10倍にして返すぞ」
「ぐはっ!」
「ただし、俺が10回殴っても、お前のターンは無い」
「ッッッ!!」
顔立ちがなかなか良い感じに厚ぼったく腫れ上がって来た。
元の顔なんて想像できないくらいのところで、聖人が動いた。
「ぐぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
地面を掴んで、俺の引力に必死に抗い出す。
「ふぐあああああああああああああ!!」
「必死の形相だな。ほれほれ、抗ってみろよ」
「っつあああああああああああああ!!」
もうとっくに酷い顔が、さらに酷くなっていた。
引力に対抗するために、地面に指をめり込ませる。
俺のステータスに相応するもんだから、かなりの力がいるぞ。
今の聖人ってのも、なかなかやるもんだな……だが。
「聞いてた話より、案外大したことないもんだな」
いや、俺の装備が強くなっているのだろうか?
なんにせよ、あんまり戦う機会なんてなかったのだ。
他の連中がとんでもない大立ち回りするので気がつかなかった。
この様子じゃ、イグニールの本気には一瞬で蒸発しそう。
「大したことない、だと!? ぐぬあああああああ!」
力みながら、聖人は叫ぶ。
「ふざけるなぁああああああ!」
「ふざけてないぞ。これが見たまんまの結果だ」
「私は! 神の意志のもと! ふぐぁっ!」
なんか今にも漏らしそうな感じの形相だ。
……漏らさないよな? 大丈夫だよな?
直接攻撃しか手段ないから、それは嫌なんだけど。
「ぜ、ぜぜぜ、絶対勝利を約束されているんだ!!」
「え? なんて?」
「神の意志のもと、絶対勝利を約束されているぅ!」
……ぷっ。
神の意志のもと、絶対勝利を約束されているとか。
「だったら、証明してみろよ!」
「ごのぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」
だが、四つん這いで力む以外に何もできない。
無様だな。
お前が神の意志のもととか、そんなことを言うなら。
こっちはキングさんの意志のもとだ。
絶対無敵、約束された勝利。
神様とキングさん、果たしてどっちが効力強いかな?
決まってるだろ、キングさんだ!
「ほらもっと頑張れよ! 神の意志とやら、頑張れよ!」
「ぐぅ、くっ、ぐおおおおおおおおおおお!」
ぶりゅりゅりゅ。
……えっ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ちょ!」
聖人から、変な音が響いてきた。
それでも構わず、必死の形相で力む聖人。
やばい、このままだと“身”ごと引き寄せてしまう。
「こ、こないで! 証明もういらないから!」
「ぐあっ!?」
とっさに斥力が発動し、聖人は逆の力を受けて吹っ飛んだ。
きりもみ回転しながら激しくぶっ飛んでいき、木々にぶつかる。
「──ッッ!?」
「あ」
なんということだ……。
ぶっ飛ばされた拍子に、握りが半端になっていた大剣が体を貫いていた。
「プルァァ……」
締まらないな、と言わんばかりのため息が後ろのキングさんから聞こえてくる。
いや、締まってないのは聖人ケツなんだけど……。
まあ良いや、あのままだと汚かったし、これでオッケー。
「結局、これが神の意志ってやつかもな」
異端とか、そんなものは存在しない。
崇める人だけを見てるお天道様なんて、いないんだ。
「平等なんだよ、全部」
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