文字の大きさ
大
中
小
398 / 650
本編
698 神の意志のもと、絶対勝利を約束されている(笑)
引き寄せて、そのまま思いっきり殴りつける。
ただ、その繰り返しだった。
感触が拳に伝わって来て、なんとも言えない感覚になる。
あんまりこういうのには慣れるもんじゃない。
これを快感だと感じると、その瞬間から俺は俺じゃない。
そんな気がしたのだ。
殴って然るべきだと思ってる時点で、俺も目の前のやつと同じ。
やられたからやり返す、それが免罪符の様になってい──
「くたばれカルト野郎! これはハイオークとエルフの分だ!」
「ぐはっ!」
──なかった!
目の前にいる野郎の面を殴ることに、これっぽっちも罪悪感は感じない。
こっちが先に殴られてんだから、神様だって殴り返すことをお許しになる。
いや、なれ。
お許しになれ。
神様がもしこの世界にマジでいるんだったら、こんな悲劇は起こらない。
いないから起こるんだよ、だから神なんているわけないのさ。
「くっ、この!」
ぶん殴られてぶっ飛んで行く聖人。
STR1万越えの本気パンチにも死なない程度の実力はある。
しかし、対1での戦いで、引力というスキルは強すぎたのだ。
「スキルは持たないという情報──ゴフッ!!」
「スキル持ってないけど後天的に持つ可能性あるだろ、アホか」
たとえ、引き寄せ中に体制を立て直したとしてもである。
クイックによる行動速度の上昇にて、タイミングを合わせるのは容易。
狙い目は顔面だ。
その綺麗な顔立ちを、見るも無残にボコボコにしてやる。
「お前なんぞ、右腕だけで十分だ」
「ぶはっ!」
「1回でも斬りつけて来たら、10倍にして返すぞ」
「ぐはっ!」
「ただし、俺が10回殴っても、お前のターンは無い」
「ッッッ!!」
顔立ちがなかなか良い感じに厚ぼったく腫れ上がって来た。
元の顔なんて想像できないくらいのところで、聖人が動いた。
「ぐぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
地面を掴んで、俺の引力に必死に抗い出す。
「ふぐあああああああああああああ!!」
「必死の形相だな。ほれほれ、抗ってみろよ」
「っつあああああああああああああ!!」
もうとっくに酷い顔が、さらに酷くなっていた。
引力に対抗するために、地面に指をめり込ませる。
俺のステータスに相応するもんだから、かなりの力がいるぞ。
今の聖人ってのも、なかなかやるもんだな……だが。
「聞いてた話より、案外大したことないもんだな」
いや、俺の装備が強くなっているのだろうか?
なんにせよ、あんまり戦う機会なんてなかったのだ。
他の連中がとんでもない大立ち回りするので気がつかなかった。
この様子じゃ、イグニールの本気には一瞬で蒸発しそう。
「大したことない、だと!? ぐぬあああああああ!」
力みながら、聖人は叫ぶ。
「ふざけるなぁああああああ!」
「ふざけてないぞ。これが見たまんまの結果だ」
「私は! 神の意志のもと! ふぐぁっ!」
なんか今にも漏らしそうな感じの形相だ。
……漏らさないよな? 大丈夫だよな?
直接攻撃しか手段ないから、それは嫌なんだけど。
「ぜ、ぜぜぜ、絶対勝利を約束されているんだ!!」
「え? なんて?」
「神の意志のもと、絶対勝利を約束されているぅ!」
……ぷっ。
神の意志のもと、絶対勝利を約束されているとか。
「だったら、証明してみろよ!」
「ごのぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」
だが、四つん這いで力む以外に何もできない。
無様だな。
お前が神の意志のもととか、そんなことを言うなら。
こっちはキングさんの意志のもとだ。
絶対無敵、約束された勝利。
神様とキングさん、果たしてどっちが効力強いかな?
決まってるだろ、キングさんだ!
「ほらもっと頑張れよ! 神の意志とやら、頑張れよ!」
「ぐぅ、くっ、ぐおおおおおおおおおおお!」
ぶりゅりゅりゅ。
……えっ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「ちょ!」
聖人から、変な音が響いてきた。
それでも構わず、必死の形相で力む聖人。
やばい、このままだと“身”ごと引き寄せてしまう。
「こ、こないで! 証明もういらないから!」
「ぐあっ!?」
とっさに斥力が発動し、聖人は逆の力を受けて吹っ飛んだ。
きりもみ回転しながら激しくぶっ飛んでいき、木々にぶつかる。
「──ッッ!?」
「あ」
なんということだ……。
ぶっ飛ばされた拍子に、握りが半端になっていた大剣が体を貫いていた。
「プルァァ……」
締まらないな、と言わんばかりのため息が後ろのキングさんから聞こえてくる。
いや、締まってないのは聖人ケツなんだけど……。
まあ良いや、あのままだと汚かったし、これでオッケー。
「結局、これが神の意志ってやつかもな」
異端とか、そんなものは存在しない。
崇める人だけを見てるお天道様なんて、いないんだ。
「平等なんだよ、全部」
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
間違えられた番様は、消えました。
※小説家になろう様でも投稿を始めました!お好きなサイトでお読みください※
竜王の治める国ソフームには、運命の番という存在がある。
運命の番――前世で深く愛しあい、来世も恋人になろうと誓い合った相手のことをさす。特に竜王にとっての「運命の番」は特別で、国に繁栄を与える存在でもある。
「ロイゼ、君は私の運命の番じゃない。だから、選べない」
ずっと慕っていた竜王にそう告げられた、ロイゼ・イーデン。しかし、ロイゼは、知っていた。
ロイゼこそが、竜王の『運命の番』だと。
「エルマ、私の愛しい番」
けれどそれを知らない竜王は、今日もロイゼの親友に愛を囁く。
いつの間にか、ロイゼの呼び名は、ロイゼから番の親友、そして最後は嘘つきに変わっていた。
名前を失くしたロイゼは、消えることにした。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スキルを奪われてお詫びチートをもらったので余生を楽しく……過ごさせてくれ
異世界に召喚されたその日、巻き込まれた青年に俺が得るはずだったスキルを奪われた。
お詫びとしてチートスキルを授かった俺は、第二の人生くらい好きに生きようと旅に出る。
行き着いた先は、寂れた町の場末の酒場だ。
なぜか客は男ばかりだが、日雇い冒険者や恐妻家の肉屋たちとの気楽な毎日は悪くない。
……ただ一人、どう見ても貴族のような美青年がこの地味な酒場へ通ってくる理由だけは、さっぱりわからない。
「お前らツケはやめろ」
そんな穏やかな日々を送っていたはずなのに、ある日、酒場へ厄介な依頼が舞い込んできた――。
他サイトでも掲載しています。
不定期更新です。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
『お前が運命の番だなんて最悪だ』と言われたので、魔女に愛を消してもらいました
竜族の王子フェリクスの成人の儀で、侯爵令嬢クロエに現れたのは運命の番紋。けれど彼が放ったのは「お前が番だなんて最悪だ」という残酷な言葉だった。
異母妹ばかりを愛する王子、家族に疎まれる日々に耐えきれなくなったクロエは、半地下に住む魔女へ願う。「この愛を消してください」と。
恋も嫉妬も失い、辺境で静かに生き直そうとした彼女のもとに、三年後、王宮から使者が現れる。異母妹の魅了が暴かれ、王子は今さら真実の愛を誓うが、クロエの心にはもう何も響かない。愛されなかった令嬢と、愛を取り戻したい竜王子。番たちの行く末は――。
愛犬たちと異世界辺境スローライフ~王家から逃げたアラサー女子、スマホ通販で快適生活~
女子高生と一緒に異世界へ聖女召喚された、アラサー女子・一ノ瀬玲。
ところが、召喚された二人を待っていたのは、あまりにも残酷な現実だった。
聖女として期待される女子高生とは対照的に、玲は年齢を理由に無視され、王城で居場所すら与えられない。
それでも何とか生きようとしていた玲だったが――ある日、食事に毒を盛られる。
「……私、命狙われてる?」
愛犬の柴犬・雷電とチワワのアビーに助けられ、玲は王城から逃げ出すことを決意する。
逃亡先で冒険者となった玲のランクは、まさかのFランク。
そんな玲を助けてくれたのは、辺境へ向かう騎士団長・レオンハルトだった。
そして玲のスマホには、異世界へ来た時から謎の【異世界モード】が存在していた。
【異世界通販】
【異世界銀行】
【アイテム収納】
【マップ】
【翻訳】
【ステータス】
「……これ、もしかしてチートじゃない?」
王家から逃げながら、愛犬たちと辺境を目指す玲。
魔物と戦ったり、旅をしたり、異世界通販で買い物したり。
ちなみに、記念すべき異世界通販の初購入は――犬のウンチ袋。
王城では散々だったけれど、もう戻るつもりはない。
アラサー女子と愛犬たちの、ちょっと騒がしくて、時々ほのぼのな異世界辺境生活が始まります。
初投稿なので誤字脱字
支離滅裂有るかと思います
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!