文字の大きさ
大
中
小
405 / 650
本編
705 我が息子
「え、何? 下でそんなことになってんの?」
グリフィーに乗って飛空船に戻ると、寝ぼけたジュニアがいた。
どうやら、騒ぎで起きてきたらしい。
「すっとぼけんな!」
「痛っ」
クソガキの小さな頭をゲンコツしながらさっさと船を動かせる。
ダンジョン化してるから、船の操作も思いのままなのだ。
「それにしても、いきなり動き出してびっくりしたぜ」
「俺だってそうだよ」
船の外を並走する物体について考える。
ジュニアがしれっと取ってきた一機。
まあ、普通にTAFの名前が彫られてある。
鋼鉄製で、内部まではわからないが魔力収束砲の小型版。
漏斗型で上部に四つの小型浮遊結晶を用いた装置がある。
【戦略魔導兵器:フェアリー】
ドラグーン内に格納され、展開。
船体防衛支援、攻撃支援を行う。
「フェアリー……」
触って確認してみた名前が、それだ。
妖精か……。
とんでもなくヤバい妖精もいたもんだ。
さらにドラグーンって物騒な名前もある。
何だよ、ドラグーンって。
「んーーー……俺も調べた感じ、動力源に細工されてるっぽいな」
「落ちたりしないのか?」
「俺がお前のリソース使って供給してるから、エネルギー切れは絶対にない」
「それもそうか」
MPの回復量とか、秘薬を飲めばあっちゅうまに全快だ。
圧倒的な秘薬の数を前にして。
ラストエリクサー現象なんて、俺には全く関係のない話。
「で、これからイグニールのところ? それとも教団?」
「教団。そして向こうにイグニールたちもいる」
奴さんは、何らかの高速手段でタブーに戻った後、すでにデプリ王都だ。
転移用のとんでもない魔法とかあるんだろうな?
じゃないとマップのデプリ王都に、イグニールたちのマークがあるはずない。
そんなものがあったら国宝クラスだと思うけど。
相手が公爵家とかだったら、ありえなくもない話だった。
「──奪還殲滅戦だ。何だかわからんがすげぇ兵器もあることだしな」
ワシタカくんに引かせ、デプリに高速で向かう飛空戦の中。
俺の言葉にジュニアが言い返す。
「お前さあ……一応言っておくけど、外交問題にならないの?」
「……なる」
問題にならないかと聞かれれば、そんな訳がないだろう。
国を相手にするとはそう言うことだ。
教団の本部自体は、王都の目立つ場所に存在する。
そんな場所に上から一気に攻撃を仕掛けるのは……まずい。
俺は、デプリは好きじゃないが良き心を持つ人もいる。
もしかしたら、無関係な人を犠牲にしてしまい兼ねないのだ。
「……それでも潰す」
こいつらをいつまでも放置していたら厄介だ。
信者は各国に存在する。
その全てを相手することは、さすがにしたくない。
だが、本部を潰せばしばらく黙るだろう。
「それで良いのか? お前の求める本来の平和はそれで来るのか?」
「うっさいな、なんだよ、げんこつするぞ」
「冷静になれって言ってんだよ。俺の主は、一応お前なんだぜ?」
「……」
黙っていると、ジュニアはさらに言葉を続けた。
「俺たちは、お前の幸せを一番に思ってんだぜ? ……一応な、一応」
「ジュニア……」
「だからそんな物騒な目をしてんなよ。早くイグニールを娶れやダボ」
「……確かに、ジュニアの言う通りだ」
この先、ここで手段を間違えれば、確実に平和は来なさそう。
マジで、宗教相手ってとんでもない状況だよな……。
今は教団内部だけで俺が敵だとされているが、ここで踏み込むと大いに目立ってしまう。
そうすると、非常に難儀な話だ。
つながりがあるってだけで恨みを持たれて周りに迷惑がかかるだろう。
「すまんな、心配かけて」
止めてくれたジュニアが、なんだか可愛いクソガキに見えてきた。
お前は立派なジュノーと俺の息子で良いぞ、もう。
「や、やめろお! 何で抱きしめんだよ!」
「いや、ジュノーが息子だって大事にしてたから」
「息子じゃねーよ!」
「まあ怒るなよ。よしよししてやるぞ。なんなら膝に座るか?」
「くそったれ! だったら俺にもっと金をよこせ! 贅沢させろ!」
はいはい、ゲームは1日12時間までな。
俺は休日はだいたい18時間くらいだったから、厳しめで行く。
「さて、気持ちも引き締まったところで」
「くそ! 早く離せよ! くそ、装備のせいで力強いな!」
俺は腕の中で暴れるジュニアを抱っこしつつ、言った。
「何となく思いついた作戦で教団殲滅と行こうか」
英雄になるよりも、卑怯者と呼ばれるくらいがちょうど良い。
だって俺は主人公じゃないんだからな。
誰にもバレないように、ちゃっちゃと終わらせてイグニールの元へ。
って奴だな!
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています(旧:いらないと言ったのはあなたの方なのに)
水谷繭※7/30書籍発売予定です!6/29まで公開します。
完結まで一括投稿済。
なろうの方では削除する予定はありませんので、読み途中たけれど読みきれないという場合はそちらでお願いします☺️
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました
◆小説家になろうにも投稿しています
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
処刑されるはずだった没落令嬢ですが、姫様の初夜を身代わりしたら子を授かりました
新 星緒没落伯爵令嬢のエルゼは大恩がある姫様を救うために、初夜の身代わりを引き受ける。
そして姫様や国を守るために誰にも行く先を告げずに国を去った。
三年後。初夜の晩に息子ヴァルターを授かっていたエルゼは、ひっそりと暮らしていた。ところが元婚約者に拉致られて、あわやというところに初夜の相手であるハインツ王子が現れる。
「ようやく見つけた。エルゼ、愛している」
「初夜の相手が君だと最初からわかっていたが?」
――身代わり初夜から始まる、純愛溺愛執着愛のお話!